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『農民芸術概論綱要』

農民芸術の興隆

……何故われらの芸術がいま起らねばならないか……

曾つてわれらの師父たちは乏しいながら可成楽しく生きてゐた
そこには芸術も宗教もあった
いまわれらにはただ労働が 生存があるばかりである(本文より)


賢治の生前には発表されず、その一部が人前で講演されたのみであり、原稿は昭和の戦災で消失して現存していません。童話に比べたら広く知られているわけではないけれども、宮沢賢治にアプローチしようと思う時、この作品を素通りすることはできないのではと思います。レッスンでは序論から結論までの十の項目のうち、ほんの一部しかお伝えできませんが、かしこまった文章の中に心に引っかかる言葉があれば、ぜひ声に出して読んでいただけたらと思います。

長らく年譜等でその存在を知られていただけでしたが、花巻農学校内に開設された「岩手国民高等学校」の受講生が書き残した文章で、当時の様子が明らかになりました。

「賢治先生の担当科目は、農民芸術概論でした。あの詩の形式で書かれた序論から結論までの十章を、先生は熱意をこめて講義して下さったものです。羅須地人協会の時代にも概論の講義をお聞きしましたが国民高等学校での終始一貫した十章の講義は、その時以来おききすることのできなかったもので、私共の大いなる幸福の一つであったと思っております。」
(宮沢賢治全集10/ちくま文庫)

十章通して硬い文体(生徒にはなかなか難解だったようですが)を、受ける側に「熱意を」感じさせられるように読むとは、どんな読み方だったのだろう、と大変気になりました。推敲も重ね、字句も4回ほど訂正されたそうです。

1月は、賢治コースでは『注文の多い料理店』を扱い、ブンガクコースでは『農民芸術概論綱要』と、2024年は早々に賢治月間になっています。これからも時々賢治の童話以外の文章もご紹介していけたらと思いますが、思いがけずそこに共通する概念が見つけられたら・・とも考えています。

1月のオンラインレッスンスケジュール

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