女性主人公

こまどりの死を、機に #1-15 (だれがこまどり ころしたの?)

こまどりの死を、機に #1-15 (だれがこまどり ころしたの?)

【火曜日】殊能 愛未(3)        同日  15時25分  発行部数が右肩あがりで活気づく週刊躍進編集部のある、第九吉岡ビル前。早足で歩いていたわたしの視界へ、見覚えのある男性ふたりが入りこんできたと思いきや、道を塞ぐように両手を広げられた。 「駄目だよ、殊能さんッ。いま行っちゃ絶対に駄目だから」 「はいっ? な、なんですか、Bさん?」  険しい表情でかぶりを振る矢部Bは、週刊躍進編集部の編集者である。本名は矢部ユウダイというらしいのだが、周囲の人たちが揃って『矢部

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ピラニア

ピラニア

豪雨のジャングルアマゾンの熱帯雨林は世界有数の大自然を有する熱帯地域である。ギリシャ神話のアマゾネスに語源を持つこのジャングルには多種多様な動植物が生息している。まさに野生の王国である。熱帯雨林特有の豪雨によりアマゾンは濁流地獄と化していた。凄まじい雷が閃光と轟音を放ち、深い霧が緑を曇らせている。灰色と緑が入り交じった魔境だ。埋めつくほど育った植物が豊富な酸素を作り出している。異世界のような空間のこのジャングルに一人の女がいた。あまりにもこのジャングルには不釣り合いな女だった

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にしのとりかえばや(第三話)

にしのとりかえばや(第三話)

二、  夜明けの鼓《こ》が、ホーロンに鳴り渡る。かん高い、軽快なその響きが三百に達すると、夜間、閉ざされていた城市《まち》の門扉《もんぴ》が開かれ、城内を訪れる隊商や、どこかへ旅立つ人びとの波が生まれる。城市《まち》はたちまち活気づく。  各里坊でも、触れ役のよく通る声に、煮炊きする音や、動き出した家々の物音が混じり、朝が始まるのだった。  まだ爽やかな涼しい時刻のはずだのに、目覚めたときのサラの気分は、最悪だった。まるで自分の上にだけ、厚い雲が垂れ込めているように思える。

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『漫才童子』第5話(全6回)

『漫才童子』第5話(全6回)

モチーフ:女性主人公、恋愛、青春、三角関係、ストーカー、芸人 原 作:Cryrock.e  所属事務所には沢山のファンレターが届く。殿居くんには若い子のファンが多く、彼への想いを綴った過激な内容の手紙もあるらしい。 『あなたと結婚して住む家を買ったので、一緒にローンを返しましょう』  そんなホラー映画のような文面もあるみたいだけど「でも気持ちは嬉しいですよ」と当人はあまり気にしていない様子。それよりも女子高生にモテていることにご満悦のようだ。  というのが相方香椎か

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『漫才童子』第3話(全6回)

『漫才童子』第3話(全6回)

モチーフ:女性主人公、恋愛、青春、三角関係、少し不思議、芸人、平成 原 作:Cryrock.e  ヒロキは気まぐれに姿を現す。  でも出てくる場所はリビングだけと相場が決まっている。お風呂やトイレには出没しない。そして着替えている時も。どうやらお互いのプライベートはきちんと守るタイプのようだ。  さらに私が落ち込んだり話し相手が欲しい時は、いつでも現れて相手をしてくれた。つまり私にとってはとても都合のいい存在。すごくリアルだけど、やはり彼は私が生み出したキャラクターな

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世界の終わり #5-9 グール

世界の終わり #5-9 グール

 違う。  こんなんじゃない。  こんなはずじゃない。  こんなはずじゃなかった。  わたしは、話をしにきたの。  話しあいにきたの。  涼と話をするためにここにきたの。  涼は涼のままでいるはずだった。  涼は涼のままでなきゃいけなかった。  わたしたちは向きあい、話しあって、  じっくり時間をかけて結論をだすはずだったのに。  涼であった——ついさっきまで涼の顔をしていたモノは、さらなる血の飛沫(しぶき)を周囲に撒(ま)き散らしながら、通路の上へとくずおれた。  赤

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世界の終わり #5-6 グール

世界の終わり #5-6 グール

「――?」プレハブ小屋の中は血なまぐさくて、嫌な腐臭が満ちていた。「ど、どういうこと? どうなってるの、これ……」  血飛沫だった。室内の壁は血に塗れていた。床の上にも血だまりができていて、それに、なに? なんなのこれ。机の上に置かれているこれって本物? 「おい、これって」 「い――」嫌だ。「痛い、放してッ」 「これって本物なのか? なァ、どうなんだ、どうしてこんなものがあるんだ!」 「は、放してよ。痛いッ」  なんでわたし? 「きみだ。きみじゃないか、きみがこの場所に連れて

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世界の終わり #5-5 グール

世界の終わり #5-5 グール

「待て——妙だ。なにかおかしいぞ」  視界にとらえたフォレストホテル。  だけど丹田さんは車のスピードを落として、正門よりも手前で停車した。 「どうしたの? 妙って、なにが?」  手にもった棒状のスタンガンを握り直して訊いてみたけど、質問に返してきたのは白石くんだった。「板野さん、このホテル、無人じゃありませんよね? なんの用があってこんなところまできたんです?」  警戒した声。 「誰かいるな」 「誰かいますね」 「近づいても大丈夫なのか?」丹田さんが問う。「門の前に車がとま

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世界の終わり #5-1 グール

世界の終わり #5-1 グール

 あとには退けなくなったからとか、たしかめなくちゃ気がすまないからとか、とことんこだわる性格だからとか、そんな言葉が口をついてでてくるよりも早く、至ってシンプルに――わたしは怒っていた。  怒りは長時間持続している。  わたし自身びっくりしちゃうくらい、怒りが身体を動かしている。  だけどやっぱり怖い。  怖いけれども足は前へ進む。  これほどまでに積極的なわたしを、別のわたしが冷静な目で見ているのもなんだか不思議な感じ。  もしかするとわたし、夢でも見ているんじゃないか

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非・世界への誘い:消失者、大越美墨②

非・世界への誘い:消失者、大越美墨②

 戦いとは、生存戦略だ。それは生き残るための手段であり、誰にでも平等に与えられた権利であり、大したコストもかからない、使って当たり前の道具だ。  にもかかわらず、それを放棄する人間がいた。そいつはそうすることが正しいと信じて”戦うこと”を捨てたのだ。けれど結果はひどいものだった。そいつはもう二度と戦えない身体にされ、その正しささえも失い、さまよえる生きた屍となった。  自分はそうなるまい。そう決めて、俺は武器を取ることにした。  大学3年の春、この世からその存在が消え去った

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