見出し画像

小説 本好きゆめの冒険譚 第七十三頁

 ゆめは中学二年生になっていた。

 中二の頃、皆がかかるであろう?恐怖の伝染病・・・。
もちろん、ゆめも病魔に蝕まれていた。

 そう、「厨二病」―。恐ろしい病気である。
 一般的には「中二病」と書くが「厨二病」。これが、本来の正しい書き方である。

「我は選ばれし勇者なり!」と言うのは、可愛い方である。腕に包帯をしてくる者、眼帯をしてきては、「この眼帯を取れば、私の膨大な魔力で、この地球はほろびさるだろう」とか言う者もいる。

 わかりやすく言うと、「このすば」の「めぐみん」がいっぱいいると思ってもらえれば想像しやすいと思う。

 ゆめも、「いでよ!破壊神ガルバン!」と変なポーズをキメたりしている・・・。

 ゆめの「厨二病」は「現実世界」・・・だけでは収まらず、「何もない空間」。でも発症する。「父上、母上、我は魔王討伐の命を受け、今より旅立ちます!」と言ったが、ゆめが本気で言うと、また「惑星」が増えるので、猛烈に反対された。

「読書」も続けての趣味の一つ。
特に「異世界物」が大好きで(理由はゲームの影響)「剣と魔法」の世界に憧れを抱いた。

「最強の軍隊を作り、世界の頂点に私は君臨するのだ!」と言っては、本の中、ゲームの中の勇者、悪魔、魔王と次々と眷属にしていった。

それに、中二ともなれば「性」にも、興味津々なお年頃・・・。

ゆめは、「BL本」、「百合本」「薄い本」に、興味があった。恋愛も良いのだけど、ゆめの中では小学生の頃の恋が尾を引いているのか、普通の恋には興味がなく、「アブナイ」方向へ向かってしまった。

何と言っても、ゆめは「本の中に入れる」のである。本の内容に影響のないように覗き見る。「キャー♡」「腐腐腐腐♪」と言いながら、事の顛末を楽しんでいるのだ・・・友達からは「腐女子」と言われているが・・・。

「ヲタク」でもある・・・。
「オタク」ではなく「ヲタク」。が正しい表記である。

とは言え、外見「だけ」は、学校で一、二を争う位の美人になり、「女神バージョン」に近づいているので、毎日のように「告白」もされている。でも、中身は「厨二病の腐女子」。

「いでよ!ゼウス!」「いでよ!空の支配者、アイギス!」。前は恥ずかしくて言えなかった台詞も、今では気に入っている。

「私の攻撃にも名前とポーズが必要かしら?」と、いらない事を考える始末・・・

――――――――――――――――――――ーーーーーー

「のう、ヘーラー。」

「なんですの?」

「最近のゆめ、変じゃないか?」

「確かに、変よね…あんな子じゃなかったのに…。」

「お父さんとお母さんは週に何回するの?とか、女神同士で愛し合ったりするの?とか、恥ずかしい事を聞いてくるし…。」

「儂なんか、ヘラクレスみたいな、男らしい体の持ち主が好みなんでしょ♡って言われたし、実際にヘラクレスを呼んで、ほぼ裸で抱き合わさせられたんじゃ!気持ち悪い事この上なしじゃ!」

「あら、ヘラクレスの方は、まんざらでもなかったようですわよ。」

「何を言おうか!ヘラクレスは、お前の乳しか興味なかろうが!」

「はいはい。確かにあなたは男には興味ないけど、女とみれば所構わず種をまき散らすドスケベですわよ!」

「な、何を言う!あれは魔が差しただけじゃ!」

「そんな事言って、今も目を付けてる女がいるんじゃないでしょうね?」

「・・・・・」

「いるんだ。」

「いない・・・」

「本当の事を言いなさい。怒らないから」

「実はの、気になっている人間の娘が・・・」

ゼウスは、渾身の一撃を顔面にくらった・・・。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?