股関節伸展筋の機能
前回は股関節完全伸展について紹介いたしました。
股関節伸展筋の萎縮や筋力低下は、さまざまな機能障害や疼痛を引き起こします。
臨床上においても股関節伸展筋へのアプローチは重要になってきます。
今回は股関節伸展筋の機能について解説いたします!
股関節伸展筋
股関節伸展筋の主動作筋は、大臀筋、ハムストリングス(大腿二頭筋長頭、半腱様筋、半膜様筋)、大内転筋の後頭です。
補助筋は、中臀筋の中部線維、後部線維、大内転筋の前頭部です。
また、股関節屈曲70°を越えると、ほとんどの内転筋が股関節伸展を補助します。
骨盤後傾を生成する股関節伸展
上部体幹が固定されている時、股関節伸展筋と腹筋はフォースカップルとして骨盤を後傾するように作用します。骨盤後傾は股関節をわずかに伸展させ腰椎の前彎を減少させます。
骨盤の傾斜は、股関節と体幹の筋がフォースカップルを形成し、大腿骨頭上で相対的に短い円弧を描くように骨盤を回転させます。
立位時に、股関節の関節包靭帯と股関節屈筋の緊張が骨盤後傾の最終域を決定しますが、腰椎が最終域を制限する骨盤前傾とは明らかに対照的です。
体幹前傾を制御する股関節伸展筋
立位時に体幹を前傾することは日常活動でよくあります。体幹前傾位の静的姿勢を支えるのは主にハムストリングスの役割です。
わずかな前傾では、体重は股関節の左右軸のちょうど前方に位置します。このわずかな屈曲姿勢は、大臀筋やハムストリングスの少しの活動によって静止されます。
大きく前傾すると、体重は股関節のさらに前方に位置することになります。この屈曲姿勢を維持するためには、より大きなハムストリングスの筋活動が求められます。
触診や筋電図では、大殿筋はこの姿勢で相対的に不活性状態になり、ハムストリングスの役割は増大します。前傾はハムストリングスの伸展モーメントを増大させ、大殿筋の伸展モーメントを減少させます。
深い前傾は、股関節と膝関節の両方にまたがるハムストリングスの伸張を生みます。伸張による二関節筋の受動的張力の増大は、結果的に股関節屈曲位をある程度保持することに役立ちます。
このように、ハムストリングスは前傾中の股関節を保持するために独自に備わっているようにみえます。
骨盤に対する大腿骨の伸展
股関節伸展筋は、身体を前方および上方への運動を素早く加速させるために、骨盤に対する大腿骨の大きくて力強い伸展トルクが常に求められます。
険しい山道を登る際、登山者は股関節屈曲位で、同関節に大きな屈曲の外的トルクを負荷させます。屈曲位であることは、股関節伸展筋がより大きな伸展トルクを発揮するのに有利に働きます。
より深い屈曲位では、いくつかの内転筋が伸展トルクを発生できることで、さらに股関節伸展を補助します。
また、下部背筋の活動は屈曲した体幹を支え、さらに骨盤を安定させることで股関節伸展筋に安定した近位付着部を提供します。
大臀筋の強化
全身運動で求められる多関節運動では大殿筋への要求は大きくなります。
大きな筋断面積を有する筋は、一般的に力強さが求められる課題に適しています。そのような筋の筋力低下は、原因を問わず、下肢全体の運動の質や力強さを著しく損ないます。
筋力低下または反応性が不足している大殿筋を強化・促通する運動療法は、座位からの立ち上がり、脳性麻痺者で観察されるかがみ歩行、膝蓋大腿関節痛症候群といった病態運動学的な問題に対しても推奨されます。
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筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版
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今回の記事は以上になります。
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