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島暮らし。

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島暮らし、「うちの猫」

島暮らし、「うちの猫」

 昔、島に住んだ。

 2年契約の仕事が決まり、私たちは喜び勇んでフェリーに乗った。

 上陸した日は上天気だった。港に着いたフェリーから、家財道具を積んだ車に二人、矢印に従って道路へ出た。
 引っ越し荷物(島なので混載便)の本体はまだ届かない。先に家を観たかったし。何かあったらと心配性が顔を出して、明後日を指定した<混載便だったので大事な茶碗も額も壊れちゃったけど、それは後の話>。車に鍋釜と薄い

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小説>「万座毛スケッチ」

小説>「万座毛スケッチ」

 万座毛の崖の上は芝が天空へ続くだけの牧歌的な場所だった。
 サスペンスドラマの迫力は、海からもしくは地上からまたは空から崖とその高さを撮るからで、崖の上からはただ、美しい空だけがあった。際まで行けば、そして下を見下ろせば尻の穴がピュと緊張するが、一歩退(し)されば、それも見えない。

 人生のようだ、と思った。
 案内人は若い女性で、女同士の気安さで沖縄の旅を誘ってくれた。
「飛行機に乗ればすぐ

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島暮らし。バナナ

島暮らし。バナナ

 島バナナを食べてみてください、売っているバナナの半分くらいの大きさだけど、甘い、あまい。

「ちっちゃいんだけど、食べてみる?」
 島にいたころ、お店で声をかけてくれた。こちらが引っ越したばかりで、なンにも知らないって気づいてくれた。
「うちの子が大好きでね、送ってやるのよ」
 だからここにあるのだろう。喜んでご相伴に与った。美味しかった。

 あとで気付いたことだけど。うちの庭のバナナも花が咲

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南の島に魅せられて 第1話

南の島に魅せられて 第1話

<あらすじ>

島の民宿

 民宿に着いたときは、9時を過ぎていた。
 バックパック1つとカメラ。
 家出ではない。すでに実家からは独立して正社員として就職、有給休暇の旅である。でも。気分は家出少女、ある朝、高校のある駅で降りないで海まで行ってしまった、あの時に気分が似ている。
 でも。イイコの私は引き返して元のさやに納まったきり。今度は冒険できるだろうか。いやいや、有給を消化するんだ。

 夕日

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プラントハンターを調べてみた。

プラントハンターを調べてみた。

プラントハンターとは(ウィキペディア) プラントハンターの定義を調べてみた。ここはWindowsさまから。

 代表的なプラントハンター(私としては大航海時代のイメージですが、検索の結果、今に続く職業のようです)として、ヒエロニムス・ボックなどがいます。ただ。話が大きくなりそうなので、それはまたの話ということで撤収(スゴスゴ)。

プラントハンターで検索 プラントハンターを検索したら、西畑清順さん

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島暮らし。月下美人

島暮らし。月下美人

 タイトル画像、ギャラリーからお借りしました。島、というより海です、美しい・・・行きたくなります。

 島でもらった月下美人、半分あきらめていた月下美人が復活したので、うれしくてここに載せることにしました。
 札幌では大きく育っていたのですが、それは札幌の友人にお輿入れ。
 葉を何枚か、挿し木にして養生していましたが、その中の一葉が元気に復活してくれました。とはいえ、いつか咲くかなぁ。。。レベルで

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猫の話。島で。

猫の話。島で。

 猫(みーや)に会う前の話。『猫の話。』の背景。

 「おかあちゃん」は南の島にいたことがある。その前は北国に住んでいた。

 北の国では冬、鳥たちの食糧難を憂いて、バードテーブルを置く。小さな粟、稗から、ひまわりの種まで入った袋を売っている。突然の引っ越し、南の島に住み替えた。6月のこと。
 余った餌は引っ越し荷物に紛れて島に届いた。
 もう、冬鳥はいない。で。庭の畑に蒔くことにした。ホントは防

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島で会った猫の話2

島で会った猫の話2

 島で会った猫の話2
 みゃみゃみゃみゃみゃと緊張しきってなくうちの猫は、相変わらずガリガリに痩せていた。いや、痩せて見えていただけかもしれない。次の夏、お腹が大きくなっていて、数日後に子猫と一緒に姿を現した。子猫を見せてくれたのはその1回だけだったが、こちらの見る目が180度かわったのはたしか。
 猫餌の量も、質も変わる。やわらかい贅沢フードもテンコ盛りしたが、他の猫が喜んだだけだった。他の猫た

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猫の話。島=『島暮らし、「うちの猫」』原案です。

猫の話。島=『島暮らし、「うちの猫」』原案です。

 島に住んでいたことがある。
 おとうちゃんは転勤族と呼ばれる職種で、各地を渡り歩いた。おかあちゃんはついて歩いた。島に転勤が決まったときも一も二もなく二人は一緒にやってきた。

 あてがわれた住宅は、一軒家だった。
 廊下の縁側から庭のバナナが見えてその背景は海だった。その景色に二人とも満足して、存分に楽しんだ。海の端っこに港が見えた。フェリーが入港すると波が湧いた。
 おとうちゃんは釣りが趣味

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遥か彼方に

遥か彼方に

 何だか、遠くにいいことがあるような気がした。
 故郷に帰るという彼と一緒に行くって決めた。
 家族は反対したけど、結婚式には来てくれた。

 そして、海に近い丘の上に住むことになった。
 親戚のおばさんが紹介してくれた住宅は、団地の一角、5階建ての建物が三棟、ずれながらも平行に並んでその一番北側だった。一番上の端の部屋。おばさんは笑いながら
「風はひどいと思うけど、日当たりは満点よ」
と言った。

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