マガジンのカバー画像

播磨陰陽道

581
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

播磨陰陽師の独り言・第二百五十八話「モーニングセット」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十八話「モーニングセット」

 事件屋をしていた頃、朝と言えば喫茶店でモーニングセットを食べていました。色々な喫茶店へ行きました。中でもオジキのお気に入りは、パンとコーヒーと、なぜか味噌汁のセット。ここで味噌汁を飲むのは仕事の前の儀式のようなものでした。
 パンやコーヒーの味は普通でした。しかし、味噌汁は美味かったなぁ。奥まったところにある小さな喫茶店でしたが、毎日、常連客ばかり。しかも繁盛していました。
 モーニングと言えば

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百五十七話「メダカ釣り」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十七話「メダカ釣り」

 最近、メダカを飼おうかと思っています。以前から壺池でメダカは飼っていましたが、今度は、室内の水槽で飼おうと思ったのです。その理由は、メダカを眺めたいからです。
 以前から使っていたプラスチックの水槽がひとつ空いています。おもちゃのような水槽の割には大きなものです。これに水を張って、水草とヌマエビとタニシとメダカを入れれば、完成です。日の当たる部屋に置いておけば、増えるかも知れません。メダカは一日

もっとみる
御伽怪談短編集・第八話「失われた日々」

御伽怪談短編集・第八話「失われた日々」

 第八話「失われた日々」

 近江八幡は、滋賀でも華やかな町であった。宝暦(1750)の頃、この町に松前屋市兵衛と言う徳のある商人が住んでいた。
 妻を迎えてしばらく経ったある日のこと、どこへ行ったものであろうか? 突然、市兵衛の行方が分からなくなった。家中の者が嘆き悲しんで、金を惜しまず方々を探し歩いたが、その行方は杳として知れなかった。他に商売を継ぐ者もなかった。かの妻も、元々一族から迎えた者

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百五十五話「もぬけのから」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十五話「もぬけのから」

 ゲーム会社にいた頃、何度か社員が来なかったことがありました。
「スタッフ、来いへんけど、今日、休みかなぁ?」
 と誰かが言うと、
「さぁ、聞いてないけど……もしかして、無断欠勤やったりして」
「忙しいのに、そんなぁ……ただの体調不良やろう。誰かお見舞い、行って来て」
 何人かお見舞いと称した様子見に行って、やがて電話が掛かって来ました。
「もしもし、大家さんに部屋を開けてもらったら、もぬけのから

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百五十四話「霊的食物連鎖」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十四話「霊的食物連鎖」

 人間は霊長類です。霊的な存在の中の長であると言う意味です。ただし、肉体を持って霊を宿しているものに限られています。
 肉体を持たないものまで含めると、人間の立場は低くなります。霊的な食物連鎖があるとすれぼ、その底辺に属するのが人間なのです。人は、霊的なものに狩られる立場でしかありません。
 人間を狩る連中には様々な種類があります。やつらは基本的には、人間に限らず、霊的なものなら何でも狩る存在です

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百五十三話「馬に乗りたくなったなぁ」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十三話「馬に乗りたくなったなぁ」

 最近、オンデマンドで『群青のファンファーレ』と言うアニメがはじまりました。元アイドルが競馬学校に入るお話です。
 馬は好きです。以前、足が折れる前は、博多の乗馬クラブに通っていました。自前の鞍も持っています。今では筋力が落ちたので、鞍を馬の背には乗せられませんが、また、馬に乗りたくなりました。
 私は目が悪いので、車やバイクを運転すると事故死する確率が上がります。しかし、何かに乗りたい訳です。馬

もっとみる
御伽怪談短編集・第七話「疫病神を退散」

御伽怪談短編集・第七話「疫病神を退散」

 第七話「疫病神を退散」

 天保八年(1839年)二月下旬のことであった。その日、予・宮川政運の次女の乳母をしている者が、俄かに高熱が出て、夜具を引きかぶって寝てしまった。病に苦しんでいる様子であった。家の者も心配してあれやこれや手を尽くしたが、回復する兆しはみられなかった。乳母は名を〈お伝〉と申し、まだ若かったが、子供の頃から当家に仕えていた。

 翌朝、少し持ち直して乳母のお伝が、
「さても

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百五十二話「座敷牢」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十二話「座敷牢」

 ウサギのケージを見ていると、もう、忘れてしまっていたことを思い出しました。子供の頃、祖母の実家に座敷牢がありました。祖母の実家なので、曽祖父の家です。古い日本式の家屋で、大きな土間がありました。毎年、餅つきの頃になると、親戚身内が集まって、餅を作りました。そんな中で、遊びに行った時、時々、座敷牢を見ていたのです。
 私はまだ幼かったので、
——大きな家には座敷牢はあるものだ。
 と、当然のように

もっとみる
御伽怪談短編集・第六話「幽霊なきとも」

御伽怪談短編集・第六話「幽霊なきとも」

 第六話「幽霊なきとも」

 予、根岸鎮衛の元を時々訪れる友人に、栗原幸十郎と申す浪人がおった。彼は小日向に住んでいた。時々、予の屋敷を訪れては、様々なことを話してくれた。
 だが、そんな時も、
「お奉行様は、よく幽霊などのことを書かれておられるようでござりまするが、それがしは信じてござらん」
 と、笑っていた。
 幸十郎は浪人の身分ではあったが、近隣の旗本の屋敷へ出入りし、
「中でも、ひときわ懇

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百五十一話「ハイビジョン」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十一話「ハイビジョン」

 ハイビジョンを見慣れたせいか、昔のテレビの画像を見ると、その荒さに驚きます。もう、ハイビジョンが普通の世の中になって、巷では4Kとか、8Kまである時代。YouTubeですら4Kの配信があります。画面がとっても綺麗ですが、昔は昔で、綺麗な画面を見ていたような気がします。その昔の画面と同じ画質の番組をYouTubeなどで見ると、時々、ビックリします。
——こんなに画質が悪かったなんて、記憶と違うなぁ

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百五十話「墓場に住む人」

播磨陰陽師の独り言・第二百五十話「墓場に住む人」

 これも事件屋の時のことです。
 知人のA氏は墓場の真ん中にある一軒家に住んでいました。彼が墓場に住んでいたのには理由があります。世の中には墓場の近くを好んで住む人もいます。しかし、A氏は、墓場が好きだから住んでいた訳ではありません。ずっと普通の住宅街で暮らしていたら、いつの間にか周囲の家が売りに出されて取り壊され、跡地に墓場が出来はじめたそうです。
 A氏は、
「ある日を境に、墓場の方が引っ越し

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百四十九話「憧れのサンフランシスコ」

播磨陰陽師の独り言・第二百四十九話「憧れのサンフランシスコ」

 はじめて海外旅行したのはサンフランシスコ。ゲームの開発をしていた頃に出張で行きました。憧れのサンフランシスコでした。子供の頃から外国ドラマばかりを見ていたので、サンフランシスコに行きたかったのです。あの街へ行ったのは、もうずいぶんと前のことになります。
 ゴールデンゲートブリッジへ辿りついて、素敵な景色を眺めていたら、耳に聞こえるのは関西弁ばかり。やれやれと思うやら苦笑するやら。
——どこに行っ

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百四十八話「パラレルワールド」

播磨陰陽師の独り言・第二百四十八話「パラレルワールド」

 世の中にはパラレルワールドがあると言う人々がいます。パラレルワールドとは〈並行宇宙〉と訳されています。並行宇宙なので、今、われわれがいるのとは別な世界で、しかも、ソックリですが微妙に違う世界らしいです。大きな違いは、文字の読み方や、言葉が違うそうです。景色も微妙に違うそうです。
 YouTubeなどでは、たくさん関連動画があります。しかし、私はパラレルワールドについては懐疑的です。なぜかと申しま

もっとみる
播磨陰陽師の独り言・第二百四十七話「坊主刈りのこと」

播磨陰陽師の独り言・第二百四十七話「坊主刈りのこと」

 謝罪をする時、頭を丸め、坊主刈りにして気持ちを表すことがあります。心から謝る時、頭を丸めることで、なんとなく誰もが納得することでしょう。
 では、なぜ、坊主刈りにして謝罪するのでしょうか?
 これには諸説あります。
 昔は死んだ人々は坊主刈りにされて埋葬されていました。死んだ人は仏になるから、仏は坊主頭と言うのが理由でした。死人の頭を丸める風習は明治の頃に廃れたようです。まだやっている地方もある

もっとみる