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摂食障害の長い長いトンネルを抜けて~元摂食障害当事者からのメッセージ~430


私は私。誰でもない私。だけど、私は一人ではない。先生や由希、陽子と繋がることで、たくさんの言葉のおかげで、頑なな考え方や価値観に変化が訪れた。私は、変わることが出来る。時間はかかるかもしれないけれど、ほんの少しずつかもしれないけれど、なりたい自分に向かうことが出来る。

「ただいま」

誰もいない部屋に向かって挨拶をしてみる。明かりも灯さずに進むと、窓から月の光が差し込んでいた。

私は、太陽にはなれないかもしれない。自ら光とエネルギーを放つだけの気力と体力が回復した、とはまだまだ言うことは出来なかった。

けれど、もしかしたら月にはなれるかもしれない。先生や由希、陽子からたくさんの光とエネルギー、勇気と言葉を受け取って、その大きな力で何とか光を放つことなら出来るかもしれない。

「先生、私、いつか必ず摂食障害を克服します。諦めないで、今出来ることを一つ一つ積み重ねていきます。『痩せること』や『食べること』は、決して命を懸けてまで追い求めることではないと思います。かといって、全てを手放す必要もないと思います。これからは、無理をしないで、自分の出来る範囲で、ゆるやかに『痩せること』や『食べること』と付き合っていければそれでいいのです」

『痩せること』や『食べること』で、先生の娘さんのような悲劇が起こってはいけないし、起こるべきではない。


私は私。誰にもなれなかったけれど、私は私のまま、ありのままの私を受け止めて、私と向き合って生きていく。もう一度私自身を見つめ直して、私と共に生きていく。摂食障害の長い長いトンネルをくぐり抜けてきた私が今言えることは、ただそれだけ。それだけだし、それしかないし、それが全て。


窓辺から、眩しいくらいの光を放つ月を見上げた。

(了)


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kei
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