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詩まとめ

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詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
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#創作

【詩】朗読者の詩

つまらない、僕の言うことがつまらないとか、そんなことを言うのなら、きみは、ずっと映画館にでも居座っていればいいんだ。きみは、きみが思っている以上に物語を求めている。冬の空気が、ほんの少し濁って、温くなる、僕の言葉が、それくらいの役割しか持っていないこと、特に意味も持たず、ただ空気中の粒子そのものみたいに、ちりぢりに分散してゆくだけのものであること、そしてそれはきみも大して変わらないこと。
原風景に

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【詩】異星人

世界の真理を語るすべてのひとに「いや、あんた誰?」と言わずにはいられないぼくはきっと異星人、けれどもその言葉で、空気中は酸素や二酸化炭素に紛れて、たくさんのあんた誰?で溢れて返っていて、そのままみんなみんな窒息してしまえばいいと思った、教祖にでもなったつもりかよ、神様にでもなったつもりかよ、そう毒を吐いた瞬間に、きみたちが一斉に消えてしまえばいいと思った、正しさなんて所詮ただの権力だからさっさと死

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【詩】碧落

わたしは他でもないわたし自身の言葉であなたを殺したかったよ、なんてとてつもなく大袈裟に、そんな馬鹿みたいなことを願っていたのに、わたしは未だに古びた赤ペンを握りしめていて、印がいっぱいついた辞書を抱えていて、それでも結局誰も殺せない、誰もわたしを愛してくれない。わたしだけの言葉なんてどこにもないし、それらのすべては、もともと、あなたたちの言葉なんだって知っていたけれど、だからこそ、わたしは愛を伝え

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【詩】校庭

あさ、あさひがまぶしくて
ひる、こうていをはしりまわって
よる、くらいから、はやくあさになれ

朝、朝日がまぶしくて
昼、校ていを教室からながめて
夜、こわいから、うまくねむれない

朝、朝日が眩しくて
昼、校庭は何処にも見えなくて
夜、短いから、朝が死ねばいいと思った

朝、朝日が眩しくて
昼、太陽が眩しくて
夜、月が眩しかった

朝、玄関で死んで
昼、部屋で腐って
夜、月明り

【詩】ペットボトルの中では死ねない

ひとりでは生きていけないと誰かが言ったとき、生きるためには誰かと手を繋いでいなければいけないんだと思った。ペットボトルの中でひとり、ぼくは沈んでゆきたかった、放置されたティーバッグの茶渋みたいな夢を見ながら。でもぼくは確かにひとりじゃなくて、どうしようもなく広く見える世界のぜんぶが本当は壁だったらよかったのにと思いながら、きみの手を握る、きみの手を握ると、きみもぼくの手を強く握り返してきて、それで

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【詩】ユートピア

「この世界に比べたらどこだってユートピアだよ」
そんな風に言うきみが、誰にも裏切られなければいいなとぼくは思っていて、ぼくも、きみと同じように、死んだ後の世界くらいは幻想的であってほしいと思っている。まあただ、別に、きみのことが好きなわけではないけれど。きみ含めみんなみんな、ぼくは好きではないけれど。
だから、誰のことも認めなくてよくて、それぞれが許される世界が、ぼくにとってはどこまでも理想郷で、

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【詩】星

血を出すように怒るしかないのです、世界がひとつだと。何も定義したくないのに、何も裁きたくないのに、怒りはひとりでに湧いてきて、けれどもその怒りはどこにも昇華されないから、だから血は赤色じゃないみたいで、それで、血は出ているはずなのに血じゃないみたいで、誰かが、すべてのものは綺麗だと言ったとき、溢れた血液も傷口も名残ひとつなく消えている、それは癒えるのとは違って、ただただ消えたのです。血液が赤色じゃ

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【詩】祈跡

ぼくは出来るだけ誠実でいたかったから、きみが今まで辿ってきた道を知りたいと思った。きみが何を考えて、きみが何に苦しんでいるのか、きみが今何を思って、ぼくのことを見ているのか、そのすべてを余すことなく知りたいと思って、けれどもそれらすべてはアスファルトで舗装された道路みたいなものに過ぎないのだときみが言った。きみが見せてくるこれまでの軌跡を綺麗だとぼくが思っても、きみもそう思ってからぼくにそれを伝え

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【詩】砂嵐

苦しんでいるぼくだけをぼくは好きだったなんて、そんなことは言いたくないけれど、苦しんでいるとき、世界中の苦しみがぼくの心臓に一斉に集約していくような気がするから、どこが痛いのかも分からないくらい痛くて仕方なくても、ただ呼吸することすら苦しくて仕方なくても、ぼくはぼくの人生を確かに生きているんだってそう思えて、一生このまま痛覚が死ななければいいと思った、なんて砂埃はそんなこと知らないから、不意に砂塵

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【詩】無神論者

人間が生きる姿は美しくて、尊いのだとか、そんな神様みたいなこと言わないで。

ぼくは、きみたちのことを真っ正面から否定する。ぼくの言葉できみたちのことを串刺しにしたいと思っている。きみたちからどうしようもなく血が溢れて、それが致命傷になればいいのにと思っている。なのに、なのに、どうしてこんなぼくにさえも優しい言葉をかけてくるのですか?

きみたちが歴史の教科書を読むように人を語るあいだ、きみたちは

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【詩】憧憬

好きな本のページを捲るのを躊躇うみたいに、眩く輝く一等星を愛おしく思うみたいに、あなたが好き。好き、好き、好き、好き。けれども、どんなに言葉を尽くしても、あなたは一介の芸術品でしかなくて、わたしはあなたの表面しか愛すことができないから。あなたの思想、価値観、優しささえもぜんぶがあなたを飾り立てる一片の要素でしかなくて、それはとっても表面的で、じゃあわたしはあなたの中身を一生愛することなんてできない

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【詩】茜

朝日が昇る
夕日が沈む
また朝日が昇る
わたしはずっとそんな景色に目を奪われてばかりいる

つまりは、意味があるって、こういうものの対極を指して言うのでしょう?

発せられる言葉すべてが理解されるためにあって、結論を出すための言葉しか許されないのだとしたら、理解は感性を破壊する凶器で、注釈は暴力で、だって綺麗なものが綺麗な理由なんてどうして必要なんですか?

空が赤く焼ける。空が血を出したみたいに

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【詩】鏡

好き、好きだったんだよ、その記憶のなかだけで生きてゆけたなら、わたし、鏡なんて気にも留めずに済んだのに。わたしの世界にわたしなんて必要なくて、あなただけがわたしの目の前に佇んでいればそれでよくて、そうしてわたし自身があなたの鏡になる。姿形は違うけれど、あなたの仕草、表情、それから感情をどこまでも反映する。あなたが喜ぶとき、わたしも喜ぶこと。あなたが悲しむとき、わたしも悲しむこと。模倣して、模倣して

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【詩】神様になれ

今日も誰かが惚けたように世界が綺麗だと言うから、嗚咽が止まらないのになにも吐くことができないぼくは、その誰かに倣うように世界が綺麗だと言う。けれどもそれはきっと嘘ではなくて、ぼくたち、吐きたくても吐くことができないのだから、そのぶんだけ世界は本当に綺麗になっていて、かき氷もサイダーもラムネ瓶も、太陽が反射するための余白を作ることができる。だから、世界のぜんぶ、吐瀉物で埋め尽くされていたなら、きっと

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