【詩】憧憬

好きな本のページを捲るのを躊躇うみたいに、眩く輝く一等星を愛おしく思うみたいに、あなたが好き。好き、好き、好き、好き。けれども、どんなに言葉を尽くしても、あなたは一介の芸術品でしかなくて、わたしはあなたの表面しか愛すことができないから。あなたの思想、価値観、優しささえもぜんぶがあなたを飾り立てる一片の要素でしかなくて、それはとっても表面的で、じゃあわたしはあなたの中身を一生愛することなんてできないの?誰かを好きになるなんて、絵画を好きになることといったいなにが違うのですか?と聞かれたらわたしはきっと何も答えられない。だから誰も好きな人のすべてを愛すことはできないのだ。けれどもそんなのは悔し過ぎるから、だから、いっそのこと、心からあなたを愛せるように、あなたは燦然と輝くような星になって。わたしの好きな本になって。そして、わたしの好きな絵になって。
けれどもあなたはわたしの好きなあなたのまま。迷わずあなたを愛すことができたならと願いながら、夢の中でだけ、あなたが芸術ではない憧憬になった。



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