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最近思ったこと、考えたこと

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ブログサイトで書いてきたジャーナルを、2020年6月からnoteで発表することにしました。テーマはその時々関心をもったこと、もう何年も続けています。葉っぱの坑夫の出版活動と直接的… もっと読む
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#翻訳

AI翻訳を検証してみた:フィッツジェラルド、カズオ・イシグロ、金原ひとみ、太宰治

AI翻訳を検証してみた:フィッツジェラルド、カズオ・イシグロ、金原ひとみ、太宰治

黒鳥社がやっているYouTubeの「blkswn jukebox」を見ていたら、トークの中で若林恵と小熊俊哉がDeepL翻訳すごい、という話で盛り上がっていました。DeepL翻訳(ドイツ発の高精度AI翻訳ツール:ディープラーニングを応用したニューラル機械翻訳:Wiki)はすでに使用していたし、Google翻訳やChatGPTの翻訳と比べたりもしていた。が、そんなにすごいのなら、どんだけすごいのか改

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「表現の乏しさ」が、言葉の世界を豊かにする?

「表現の乏しさ」が、言葉の世界を豊かにする?

先日、noteで踏み跡さんの記事を読んで以来、もやもやとした疑問にとりつかれています。そこで引用されていたのは『悪童日記』についての野崎歓さんの文章でした。

表現の貧しさによってこそもたらされる「翻訳の可能性」の拡張、増大とは? 小説の原文、その表現が貧しいとは、この場合、アゴタ・クリストフという作家が母語ではないフランス語で書くこと、不自由な言語でどうしても書きたいことをなんとか書く(簡潔に書

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crazyをどう訳す? これは差別語?

crazyをどう訳す? これは差別語?

英日の翻訳をしていて、日本語にするのに困ることは結構あります。一つはその英語の言葉にあたる日本語(考え方、ものの見方)が存在しない場合。たとえばトランスジェンダー(英語圏では1965年ごろに造語された)とか。まあこれはもう、カタカナ表記で広まっているから、訳す必要はないとして。
title image : Insane graffiti, East London by duncan c(CC BY

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演奏と翻訳は似てる?......再創造とは

「再創造」って英語だとなんて言うのかな、と。recreation?でもこれだとリクレーション=気晴らし、娯楽、保養と同じになってしまう。でも二つ目の意味として、再構築、再現、作り直しの意味もあるようです。(英辞郎)

Oxfordの辞書で確認してみたら、こちらでも二つの意味があって、ほぼ同じ。
1. [名詞] Activity done for enjoyment when one is not

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重訳論ふたたび。周縁国、小国の文芸翻訳。

重訳論ふたたび。周縁国、小国の文芸翻訳。

いまアウグス・ガイリというエストニアの作家の『トーマス・ニペルナーティ』という長編小説を読んでいます。Googleで作家の名前(カタカナで)を検索しても何も出てこないので、ほとんど(というか全く)日本では知られていない人だと思います。(August Gailit: 1891年〜1960年)
写真: ガイリ(女性の右隣)とエストニアの文学グループSiuruのメンバー

この本の原著はエストニア語で書

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重訳?? プアな行為ではなかった!

重訳?? プアな行為ではなかった!

重訳とは間接翻訳、つまりオリジナルテキストから直接目的の言葉に訳すのではなく、一度別の言語に訳されたものを通して、目的とする言語に翻訳すること指します。通常の直接翻訳でさえ、原著より劣るとか、忠実度を疑われがちな日本では、重訳の地位はこれまでとても低かったのではないかと思われます。

最近ベトナムの研究者の論文を読む機会があり、重訳に対して新たな視点を得ました。神戸大学大学院博士課程のグェン・タン

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