葉っぱの坑夫

2000年4月からウェブ上で、翻訳作品を中心にさまざまなコンテンツを公開してきました。内容としては移民文学、野生動物観察、音楽家インタビュー、外国語で書かれたハイクなどです。コンテンツの中から紙の本や電子書籍も作っています。 https://www.happano.org

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    マガジン

    • [ エストニアの小説 ] 白夜(全15回)

      エストニアを代表する作家アウグス・ガイリ(1891 - 1960)の小説から、短編連作小説の第4話「白夜」を紹介します。短編連作形式で全7話。トーマス・ニペルナーティという風来坊が各話に登場し、立ち寄った村々で騒動を巻き起こします。毎週火金更新。12月13日(火)スタート! 'White Nights' from "Toomas Nipernaadi" by August Gailit / Japanese translation © Kazue Daikoku Title painting "Landscape with the Sun by Estonian artist, Konrad Mägi(1878-1925)

    • 葉っぱの坑夫 Updates-J

      2000年4月スタートの非営利ウェブパブリッシャー&翻訳プロジェクト、葉っぱの坑夫の更新情報を掲載します。ほぼ月に1回、更新しています。

    • モーリス・ラヴェルの生涯

      1937年、ラヴェルの死後まもなく、著者マデリーン・ゴス(1892 - 1960)は英語による最初の評伝を書きました。ゴスは当時パリに滞在しており、ラヴェルの弟エドワールやリカルド・ビニェスなど子ども時代からの友人や身近な人々に直接会って話を聞いています。

    • 最近思ったこと、考えたこと

      ブログサイトで書いてきたジャーナルを、2020年6月からnoteで発表することにしました。テーマはその時々関心をもったこと、もう何年も続けています。葉っぱの坑夫の出版活動と直接的には繋がっていないけれど、ここで考え調べながら書いたことが、あとで役に立って、企画が生まれることもあります。トップの画像:Graham Knott(CC BY-NC 2.0)

    • [ エストニアの小説 ] 真珠採り(全10回)

      エストニアを代表する作家アウグス・ガイリ(1891 - 1960)の小説から、短編連作小説の第3話「真珠採り」を紹介します。短編連作形式で全7話。トーマス・ニペルナーティという風来坊が各話に登場し、立ち寄った村々で騒動を巻き起こします。毎週火金更新。10月18日(火)スタート! 'Toomas Nipernaadi' from "Toomas Nipernaadi" by August Gailit / Japanese translation © Kazue Daikoku

    最近の記事

    [エストニアの小説] 第4話 #12 火薬筒(全15回・火金更新)

     「なんであんたはマリ・アンを家に住まわせてるんだい?」 ニペルナーティが訊いた。「自分の女みたいに森に連れていったり、嬉しそうに干し草畑を見に行ったりしたんだ? なんであの魔女をずっと前に追い出さなかった?」  そこでクープは二ぺルナーティを訳ありな目で見た。  「ヤイラスと俺は約束したんだ」 クープはつっけんどんに言った。「ヤイラスが捕まったときには、マリ・アンの世話を頼むとな。だからあの子がすべて悪いってわけじゃない。ヤイラスは釈放されて家に戻るまでの間、俺に、あの子の

      • [エストニアの小説] 第4話 #11 100万クローン(全15回・火金更新)

         二人が去っていったとき、ニペルナーティは川向こうからの車の警笛を聞いた。ニペルナーティが川を渡るともう一つ聞こえ、その後さらにもう一つ聞こえた。ジプシーのインダスは、そのとき駆け足で道を進んでいたが、車を見ると、足を蹴り上げ、いなないて、風に吹き飛ばされたみたいに道から外れた。そこはクープのライ麦畑で、インダスは足を踏み鳴らし、あたりをグルグルと回りはじめた。インダスは首にベルをつけ、ボロ布の切れ端をからだに掛けていた。白髪混じりの髪はもじゃもじゃで、あごひげは胸まで垂れて

        • H a p p a n o U p d a t e s - No.246

          白夜(全15回) アウグス・ガイリ著 だいこくかずえ訳 アウグス・ガイリ(1891 - 1960) エストニアを代表する後期ロマン主義の作家。美しさと醜さという相反する存在に焦点を置いて作品を書いた。19歳で作家デビュー。 Title painting by Estonian artist, Konrad Mägi(1878-1925) 日本でほとんど翻訳されることないエストニアの小説を連載しています。 『トーマス・ニペルナーティ』と主人公の名前を冠した連作短編小説の第4

          • XV. 『子どもと魔法』

            ・大戦後、ラヴェル落ち込む ・音楽的変化 ・『ラ・ヴァルス』  ・ヨーロッパ、イギリスの旅 ・『バイオリンとチェロのためのソナタ』 ・『ツィガーヌ』 ・『子どもと魔法』  「どうしようもなく悲しい」 1919年の半ばすぎ、ラヴェルはこのように書いている。この2年間というもの、ラヴェルは作曲できない状態にあった。自分は結核に感染したのではと恐れ、仕事がもうできなくなると落ち込んでいた。戦争中に不眠症に陥り、それが悪化していった。この苦しみは去ることがなかった。眠れぬ夜のことを

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          • 絵本制作日誌2020 --- 2022
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            [エストニアの小説] 第4話 #10 ヤイラス(全15回・火金更新)

             次の朝、まだ日がのぼる前に、アン・マリは小舟をこいで川を渡っていき、ヨーナの小屋の窓を叩いた。  アン・マリはレースとリボンで着飾り、絹のスカーフを頭にかぶり、その白い縁飾りが肩から背中へと垂れていた。ベルトにはお気に入りのバラの布飾りをつけていた。一歩一歩、歩くたびにそれに目をやり、花の向きを変えたりしていた。しかし足は裸足で、靴ひもを肩からひっかけ、手には荷物を携えていた。  「ヨーナ、まだ寝てるの?」 アン・マリが声をかけた。   曇った窓ガラスに顔を押しつけ、さらに

            ここは迷路か地の果てか? Unlimited洋書探しの旅

            Kindle Unlimitedの「2ヶ月間99円キャンペーン」を始めて2ヶ月目に入りました。感想は、、、というとそれなりに使える、が、読みたい本探しが大変、というところでしょうか。 *タイトル画像:ヒリガイノン語の絵本(左)、1950年のチャーリー・ブラウン第1巻(詳細は本文で) Unlimitedで自分の好みに合う本、ぜひとも読みたいと思わせられる本、ヘェーこんな本が世の中にあるんだという本と、どうやったら出会えるのか。探し方がまだいまいちわかってない。いろいろやってみ

            [エストニアの小説] 第4話 #9 一人語り(全15回・火金更新)

             それは夜のことだった。ニペルナーティはしばらくじっと立って、額の汗をぬぐい、考えはじめた。そして渡し舟で川を渡った。居酒屋のまわりを長いこと歩きまわり、裏のドアをあけて足を踏み入れた。  「アン・マリ」 ニペルナーティは小さな声でささやいた。盗っ人じゃないよ、わたしだ。そこで静かに眠っていて。わたしはきみを傷つけようなんて思ってない。ちょっと来ただけだ。足の裏が燃えるようで、どこにいても心を沈められないんだ。きみが片方の耳で聞いてくれるだけでいい、あとは眠ってていいから。き

            [エストニアの小説] 第4話 #8 カタツムリ(全15回・火金更新)

             ニペルナーティはといえば、たくさんやることがあり、1日中、忙しそうに沼を計測したり、滝を調査したり、渡し舟を引いたりしていた。こういったことの中で一番問題なのは、言うことをきかないヨーナだった。ヨーナは町に行こうとしない。ニペルナーティの言い分を聞き、耳を貸し、でも行こうとしない。どうして、ニペルナーティは自分でドリルと火薬筒を買いに、町まで行こうとしない。この男にはすることがいっぱいあるからだ。アン・マリに朝、おはようを言う時間もずっとなかった。クープでさえそう、遠くから

            [エストニアの小説] 第4話 #7 沼さらい(全15回・火金更新)

             「アン・マリか、あの子はここにはいない」 クープが唐突に言う。「居酒屋の中で、馬のそばで寝ている。もう起きてくるだろう。あの子を呼ぼうか?」  「いや、けっこう」とニペルナーティ。  「いや、けっこう?」 クープが返す。「だが、あんたはあの子に何か聞きたかったんじゃないのか?」  「あー、もうそれは済んだ」 ニペルナーティが言う。  「もう済んだ? もう? 今はそういう気分じゃないと」  昔の言いまわしがある、男たちの気分は風みたいに向きが変わる。ちょっと前にはこの男は足を

            かる〜い読書:Unlimited 99円体験(精読、通読しない、パラパラ読み...も可)

            この正月休みの間、Kindle Unlimitedで本を何冊か読みました。初めての利用です。アマゾンでアンリミテッドに登録すれば、指定されている本は0円で読めるという仕組みです。これまで利用したことがなかったのは、読みたい本はたいていUnlimitedになっていないので、使う意味がなかったから。 今回利用のきっかけなになったのは、たまたま島田雅彦の『楽しいナショナリズム』という本に出会ったら、それがUnlimitedで、へぇ、こういう本もあるんだ、と試してみる気になったので

            [エストニアの小説] 第4話 #6 クープ(全15回・火金更新)

             「いったいどこのどいつが一晩中騒いでいるんだ」 クープは手をかざし、指の隙間からお日様をすかし見て、声をあげた。「どこぞの見本市か結婚式の客か? そうであれば居酒屋のドアをノックするだろうよ、看板があるからな」  クープは左手にパイプを挟んで、長いこと咳き込んでいた。咳き込みながらからだを屈めた。  「アン・マリはこの納屋にいないのかい?」とニペルナーティ。  「アン・マリがこの納屋に、いないのか?」 クープがその言葉をなぞった。「いや、いない。空のビール瓶があるだけだ」

            [エストニアの小説] 第4話 #5 ダイナマイト(全15回・火金更新)

             「こんな話、君は嫌いかな、アン・マリ」 ニペルナーティは言う。「わかるよ。じゃあ、違う話しをしようか。わたしが君を愛してることを君がまだ信じないのはがっかりだ」  「すぐにわかるよ、わたしがあのライオン頭のヨーナみたいに、君を急流で仕留めることがね。仕留める、そういうことだ。その手のことはわたしにとっては何でもないことなんだ。ここでそれをやってのけることに何の問題もない。川があって、滝があって、渡し舟がある。あとは斧を借りるだけだ、ロープを切るためにね。だけどそんな目的の

            [エストニアの小説] 第4話 #4 マハラジャの娘(全15回・火金更新)

             ニペルナーティは上着を脱ぐと、広げて乾かした。  太陽はさんさんと輝いていた。雲の切れ端が二つ三つ、仲間の群れを追う子羊のように流れていった。鳥たちが眠りから目覚めたように鳴きはじめ、木々や藪の中は熱く激しい歌声に満たされた。互いにピーピー、チュンチュン、フーフーと声を掛け合い、全身で喜びに震え、胸をときめかせていた。大きな雨粒が真珠のように、あらゆる葉っぱ、花の上で一つまた一つと輝いている。芝はぐっしょりと濡れ、瑞々しく、青々として、一陣の風が吹けば、犬が水から上がってき

            H a p p a n o U p d a t e s - No.245

            白夜(全15回) アウグス・ガイリ著 だいこくかずえ訳 アウグス・ガイリ(1891 - 1960) エストニアを代表する後期ロマン主義の作家。美しさと醜さという相反する存在に焦点を置いて作品を書いた。19歳で作家デビュー。 Title painting by Estonian artist, Konrad Mägi(1878-1925) 日本でほとんど翻訳されることないエストニアの小説を連載しています。 地理的に北極圏付近に位置するエストニアは、夏至前後に夜になっても完全

            XIV. ラヴェル参戦

            ・バスク海岸にて ・『ピアノ三重奏曲』 ・ラヴェル、大戦へ ・前線からの手紙 ・母の死 ・『クープランの墓』  1914年の夏のはじめ、ラヴェルはバスク海岸を訪れ、ビアリッツのすぐ南にあるサン=ジャン=ド=リュズに滞在した。海に面した広大な空間、すぐ目の前のピレネー山脈のパノラマを見ることで、ラヴェルは生気を取り戻し、インスピレーションをおおいに沸かせた。サン=ジャン=ド=リュズはラヴェルの生地という以上の意味があった。揺るぎなくそびえる山々、海、そして岩がちなごつごつした

            アラブの国々の大応援でベスト4! モロッコ躍進の理由はどこに?(W杯雑感2)

            約1ヶ月にわたるW杯カタール大会が終わりました。決勝戦は内容、経過、結果すべてがすばらしく、手に汗握る試合になりました。そんな中、今回のW杯でいちばんのサプライズといえば、やはりモロッコ代表の活躍でしょうか。ベスト4? 普通に考えたらあり得ない結果です。大会前にこれを予測した人は(モロッコ国内でさえ)いないのでは。 「W杯雑感1」でも書きましたが、モロッコは前大会はグループステージ最下位(勝ち点1)、それ以前の4大会は出場すらしていません。アフリカ予選で敗退しています。 T