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最近思ったこと、考えたこと

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ブログサイトで書いてきたジャーナルを、2020年6月からnoteで発表することにしました。テーマはその時々関心をもったこと、もう何年も続けています。葉っぱの坑夫の出版活動と直接的… もっと読む
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記事一覧

4月の出版物:その2『作曲する女たち』 (日英のタイトルをめぐってドタバタ)

4月の出版物:その2『作曲する女たち』 (日英のタイトルをめぐってドタバタ)

葉っぱの坑夫が4月に出版するもう一つの本を紹介します。これも前回紹介した『トーマス・ニペルナーティ 7つの旅』と同じように、noteサイトで連載していた作品です。連載時は「作曲する女たち」でしたが、パッケージ化するにあたって、『20世紀を駆け抜けた・作曲する女たち』とすることに。

内容としては19世紀生まれの作曲家5人の小評伝、20世紀生まれの作曲家5人のインタビューです。前者はマデリーン・ゴス

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発売開始! 2冊目のエストニアの小説、トーマス・ニペルナーティ(訳者あとがき公開)

発売開始! 2冊目のエストニアの小説、トーマス・ニペルナーティ(訳者あとがき公開)

2022年6月の『蝶男:エストニア短編小説集』(メヒス・ヘインサー著)につづいて、『トーマス・ニペルナーティ 7つの旅』が発売になりました。
ペーパーバック:¥2,640(税込) Kindle版 ¥550(税込)
127 × 203mm、520頁
*タイトル写真の左(校正本のため「再販禁止」の帯が入っていますが)

なぜ、エストニアの小説?

これまで日本で知られていない世界各国の作家の小説を翻訳

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4月の出版物二つ:その1(編集時に起きる様々な出来事)

4月の出版物二つ:その1(編集時に起きる様々な出来事)

今月2冊の本を出す予定で、いま準備しています。どちらもnoteで連載したコンテンツで、ペーパーバックの紙の本とKindle本にします。KDPのシステムをつかって準備中で、おそらくそのままKDPから発行することになると思います。(2023年3月の『小さなラヴェルの小さな物語』以降、代理店通しではなくKDPから出しています)

1冊目が、エストニアの小説『トーマス・ニペルナーティ 7つの旅』(原題 "

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新世代作家たちが描く、リアル or 空想的(スペキュレイティブ*)なアフリカの小説

新世代作家たちが描く、リアル or 空想的(スペキュレイティブ*)なアフリカの小説

*スペキュレイティブ・フィクション(Speculative Fiction)とは、さまざまな点で現実世界と異なった世界を推測、追求して執筆された小説などの作品を指す語。フィクションの複数のジャンルにまたがって使用される。
(ウィキペディア日本語版)

5月にスタート予定で準備している新プロジェクト「アフリカ新世代作家・作品コレクション」について、発想のもとになったこと、プランの意図や経緯について書

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4月の新譜 * フレッド・ハーシュ * ECM からピアノ・ソロ(ジャズというより......)

4月の新譜 * フレッド・ハーシュ * ECM からピアノ・ソロ(ジャズというより......)

縁あって、ときどき発売前のアルバムを聴く機会に恵まれて、普段あまり聴かないタイプの音楽をじっくり楽しむことがあります。今回はECMレコードから4月19日にリリースされる、アメリカのジャズピアニスト、フレッド・ハーシュ(Fred Hersch)の『Silent, Listening』、ピアノ・ソロのアルバムです。
Title photo: Roberto Cifarelli

実のところフレッド・ハ

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生成AIと創作

生成AIと創作

ChatGPTを使って書いたという小説が芥川賞をとって、話題になりました。九段理江さんの『東京都同情塔』です。NHK WEBのインタビューの中で、どのようにAIを使ったか、作家本人による説明がありました。

その中で九段さんがChatGPTに、「『刑務所』という名称を現代的な価値観に基づいてリニューアルしたいです。どのような案が考えられますか?」という質問をしているのに興味を惹かれました。面白い質

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20世紀の名作『銀河鉄道の夜』 と細野晴臣の音楽世界+ナウシカ騒動ふり返り

20世紀の名作『銀河鉄道の夜』 と細野晴臣の音楽世界+ナウシカ騒動ふり返り

20世紀を代表するかもしれないアニメの名作『銀河鉄道の夜』(1985年7月13日公開)、『風の谷のナウシカ』(1984年3月11日公開)。この二つの映画に深く関わった細野晴臣の音楽世界について、書きたいと思います。

2月某日
何がきっかけだったか、アニメ『銀河鉄道の夜』のサウンドトラック全編を聴いた。あまりによくて、はぁーっとなり、映画の全編も再視聴する。

いや、きっかけを思い出しました。久石

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湿地文学としての 『ザリガニの鳴くところ』 <湿地は、沼地とは違う>のか?

湿地文学としての 『ザリガニの鳴くところ』 <湿地は、沼地とは違う>のか?

湿地文学というものがあるのか(多分ない)わからないけれど。。。。
この小説を手に取ったのは、文庫版発売直後の去年の12月末。タイトルは知っていたが内容は知らなかった。なんとなく新潮クレストブックスあたりの海外文学かなー、みたいなイメージでした。

本を手に取り(といってもKindleですが)ページを繰ると、小説の舞台になっている場所(ノースカロライナ州のとある村)の地図がまずあり、次に登場人物がず

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国家承認の条件とは? パレスチナが国家かどうか調べてみた

国家承認の条件とは? パレスチナが国家かどうか調べてみた

NHKニュース(ネット/テキスト)を見ていたら、「1からわかる」シリーズで次のような問いと答えがありました。

質問者は大学生(白賀エチエンヌ氏)、回答者はNHK国際部の鴨志田デスク。質問者は二人いてもう一人、同じく大学生の堤啓太氏も聞いています。

パレスチナは一般的には日本語で「パレスチナ自治区」とされることが多く、名前からして独立国家には見えません。ただ英語では「State of Pale

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パウル・クレー 【手人形と詩】 の世界

パウル・クレー 【手人形と詩】 の世界

パウル・クレー(1879年〜1940年)、スイス出身(ドイツ国籍)の画家。
日本でもよく知られ、人気も高いアーティストです。わたしもTaschenから出ている画集を一つもっています。

そのクレーが手人形(hand puppet)をたくさん作っていたことは知りませんでした。わたしの画集にも載っていません。それは息子のフェリックスのために1916年から1925年にかけて作られたもので、全50体のうち

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 【眠れる森の美女】はこうして出来た:チャイコフスキーの残した記録から

【眠れる森の美女】はこうして出来た:チャイコフスキーの残した記録から

バレエ作品というのは、どのようにして作られるものなのか。他の芸術では絵画であれ、文学であれ、音楽であれ、画家がいて、作家がいて、となんとなく想像はつきますが、総合舞台芸術であるバレエの場合、人がどのように、どんな順番でかかわり、どう進行して完成まで行き着くのか、もう一つわからないところがあります。

バレエを構成する要素として(特に物語のある大きな作品の場合)、まず台本があり、それに沿った音楽があ

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【ナイキ発】 肌の露出の少ないスイムウェア& パリ五輪のゆくえ ヴェール考察<2>

【ナイキ発】 肌の露出の少ないスイムウェア& パリ五輪のゆくえ ヴェール考察<2>

イスラム教徒のヒジャブは宗教的な装身具であり、ファッション・アイテムではありません。とはいえ、女性が身につけるものであり、服装でもあるという意味で、ファッションと無関係とも言えません。
Title photo:Nike debuted its modest swimwear collection in 2020

前回のヴェール考察<1>で、国境なき医師団の手術室看護師の白川優子さんが、自分用のア

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【ロンドン発】ヒジャブでサッカー。スポーツの楽しさも、宗教への忠誠も! ヴェール考察<1>

【ロンドン発】ヒジャブでサッカー。スポーツの楽しさも、宗教への忠誠も! ヴェール考察<1>

イスラム・ジェンダー研究者の調査で、1990年代以降、世界各地でヴェールを被るムスリム女性が増えてきた、という実態が報告されています。

地球上のイスラム教徒は数の上ではキリト教徒とほぼ同じくらい(約20億人)、しかし西欧優位社会の中では、ある意味マイノリティです。さまざまな理由から偏見にさらされ、誤解や無理解もあって苦痛を強いられてきた歴史があります。

そんな中、いまを生きるイスラム教徒の女性

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「性別」にまつわる諸問題<2>:第3、第4、第5の性とは? (男女二元論を超えて)

「性別」にまつわる諸問題<2>:第3、第4、第5の性とは? (男女二元論を超えて)

前回『「性別」にまつわる諸問題:呼称とかセルフ IDとかパス度とか』を書いた後で、いくつか気になることがあって、さらにこの問題について考えてみようと思いました。

その一つは「トランスジェンダー」についてのところで、以下のように書いたこと。そして「これについては想像の範囲で書いています。間違っているかもしれません」と結んでいます。

間違ったことを書いたかもしれない、とすれば正しいことは何か、その

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