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何度でも読み返したいnote2

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何度でも読み返したいnoteの備忘録です。こちらの2も記事が100本集まったので、3を作りました。
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2022年4月の記事一覧

私が夫を泣かせた日

2022年4月10日 私は夫を泣かせてしまった。 夫の涙は一生見ることがないのだろう… そう思っていた。 実際、彼は、小学校低学年の柔道の大会で敗退して以来、泣いたことがないらしい。義理の父と母からも、「その大会以降、彼の涙する姿を見たことがない」と聞いていた。 妻となった私から見ても、夫はわりと社会の中では一匹狼的存在に映っているし、体も大きくてちょっと見た目も怖いので、そして異常なほどのタフさを兼ね揃えているように見えるため、この人が泣くことは今後もないだろうなと思

成功者は毎日靴下をとりかえない

noteでは3月末から4月にかけてコンテストがいくつか始まった。 私はコンテストに入賞したいと思っているので、ここ10日くらいでコンテスト用の文章をいくつか書いた。 あっさり「コンテストに入賞したい」という己の欲望をありのままに書いて羞恥心はないのかと思われるだろうが、もうこの歳になると恥ずかしいことが少なくなる。 「おいコイツそんなこと書いて大きくでたな」とか「たいした文章でもないのにコンテスト取ろうなんて150万年早い」と思われることもよく分かっているが歳をとるとわりと

ご長寿ジョークの最適解。

このご長寿ジョーク。 そこそこ生きてりゃ、誰しもいつかどこかで遭遇した事があるんじゃないだろうか。 え。何それ分かりにくいって。 じゃあ、もう一つ踏み込んだ表現でお伝えしようと思う。 ご長寿ジョークとは、お年寄りによる主に死を匂わす洒落にならないブラックジョークの事だ。 私がこのジョークに触れたのは小学生の頃。 私には何よりも敬愛する祖母がいた。 その祖母が70代半ばに台湾旅行に行く事になり、パスポートを取得。 明治生まれの祖母がそれに書いた日本語とローマ字の名前。そし

CRままならない休日

寮の近くのスーパーで夕飯の買い出しをしていたら同僚に見つかった。 内心、ゲッと思い隠れようとしたが、ときすでに遅し。 「あれ? 吉村~ひとり~?」と声が掛かってしまった。 「はぁ」と見ると、先輩の男と同期の男の二人が、やはり夕飯の買い出しに来ていた。 「え、ほんとにひとりなの?」 先輩がまわりをキョロキョロして改めて聞いてきた。寮に住んでいる社員は連れ立って歩くことが多いからだろう。現にいま彼らも一緒に買い出しに来ている。 「そうですよ」 そう言って一人分の食材が

美人とは別のなにか

 遠縁の親戚に、昔とても美人だった女性がいる。母によると「東北の田舎町に1人だけ並外れてきれいな子がいるもんだから「掃き溜めにツル」って言われてた」。  この女性にはいろいろエピソードがある。  「職安で座っていたら『君うちにおいでよ』って声をかけられて就職が決まった」とか「呑みに行こうって言われて行ったら、飲み屋でバニーガールの恰好をさせられた」とか「地方コンサートに来ていた郷ひろみが振り返った」とか。  母いわく「一緒にご飯行くとね、『いま男呼んで奢らせるからちょっと待っ

「結婚」はしないと思ってた。

「結婚」なんてしないだろうと思っていた。 だから、まだ付き合ってもいない彼から唐突に 「なんか……結婚したいですね」 と言われたときは、なんて気の合わない人なんだろうかと首を傾げたものだった。 「結婚は……、どうでしょう」 わたしは答える。 もちろん、そういう幸せのかたちがあることは知っているし、大切な誰かが誰かと結婚するとき、わたしは心の底から「おめでとう」と言うことができた。 けれど自分のこととなると、どうだろう。なんだか途端に妙な気持ちになるのだ。 きっと、「自分

雨上がりの夜に教えてもらった、優雅な朝

挽き立ての豆で淹れたコーヒーと、焼き立てのパン、じっくり煮込んだスープに、サニーサイドアップとこんがり焼けたウィンナー。 そんな優雅な朝食をとる休日の朝、思い出す夜がある。 数年前のある夜のこと、私は雨上がりの街中で、Yさんを待っていた。 待ち合わせ時間を少し過ぎた頃、通りの向こうからYさんが、白いロングスカートを靡かせながら歩いてくる。Yさんは、私を視界に認めると、急ぎ足になった。 「雨上がり」というこの夜の天気を私が覚えているのは、濡れた地面がYさんの白いスカート

店員さんに声かけられるのは基本的に苦手だけど「スープ割りいりますか?」だけはまじで聞いてほしい

店員さんに声をかけかれるのが苦手だ。 アパレルショップでも、電気屋さんでも、コーヒーショップでも。 どれだけ優しく声をかけられても、こちらのタイミングじゃないと少しだけ煙たく感じてしまう。人と話すのは苦手じゃないはずなんだけど。 でも唯一、店員さんに声をかけてほしい瞬間がある。今日はそんなはなし。 *** 入口に置かれたスタンド看板のメニューを眺めて迷う。さて、なににしよっかな。醤油ベースもいいなぁ。でも今日の気分は鶏白湯かなぁ。 近所にできたラーメン屋さん。最近

わたしの理想は、わたしが決める

先日、家族で朝ごはんを食べながらふと思った。 「あぁわたし、いま理想の暮らしのなかにいる」と。 蒸篭で蒸したパンと目玉焼き、野菜たっぷりのスープ、ヨーグルトと手作りのグラノーラ、フルーツ。パンにはバターと作ったばかりのいちごジャム。挽きたてのコーヒー。 こんな朝ごはんを家族で囲むことは、わたしの理想のひとつだった。でも、何年も前からこんなふうに過ごしていた気もする。なのに、いまさらどうして。 目玉焼きの黄身はカチカチだし、盛り付けもひどいものだ。コーヒーを淹れるのはあい

「そのままでいいよ」と彼は言ってくれたけど

自分に自信がなかった。 見た目も、中身も、本当に自信がなかった。 自信がないまま、28年生きてきた。 いつから自信がない自分になってしまったのだろう。 幼い頃は、祖母が「可愛い、可愛い」と言ってくれ、孫の中でもなぜか私を一番に可愛がってくれたおかげで、私は自分が可愛いと思っていたし、特別な存在だと思っていた。 小学校に入り、学年が上がり、中学生になる頃には、自分は特別でも何でもないことはわかりきっていたような気がする。 私よりも可愛い子はたくさんいて、私よりも頭がいい子も

60歳で生まれて初めてのピアスを開けた、私の母。

年齢の話ではなく、私の母は若い。気持ちも若けりゃ見た目も若い。 今も飲食関係の店で若者と一緒に働いているし、ちゃきちゃきしていて、歩くスピードなんかも私よりも速い。もう随分前から年齢を教えてくれず、はっきりした年はよくわからなくなっているのだが、60歳を迎えてから数年は経っている。 そんな母が人生初のピアスを開けたのは、60代になってからだった。 「ピアスってどこで開けたん?」 母がある日、突然そう聞いてきた。私は確か大学に入学した頃、ピアスを開けた記憶。市販のピアッ

アラサー、泣きっ面に顔面パイを喰らう

消えたボーナス 思い起こせば数か月前、冬の賞与を頂いた。 貯金ができないアラサーは、億万長者になれた実感があった。 貯金だ貯金。 ひとまず、支払いが必要なものを優先し、ほかは貯金。 意気込んだのも束の間。 もう何回繰り返したかわからない蛮行「ボーナス入ったしいいかキャンペーン」を実施。 下記、令和3年度冬季賞与「ボーナス入ったしいいかキャンペーン」実績 ・なんか綺麗な色のセミオーダースーツ ・ノートPC ・年末おつかれさま旅行 ・愛車のタイヤ 上記は思い起こせるレベ

ちょっとだけ涙が流れた夜

「もう歯を磨いて寝なよ」 土曜日の22時半。和室にタブレットを持ち込んでYouTubeを観ていた三男に声を掛けると、背を向けたまま「これが終わったら寝る」と言った。 私はため息を吐きながらドアを閉めると、水筒を洗っていないことを思い出して、パジャマの袖をまくりキッチンに立った。蓋を開けてパッキンを外し、蛇口から水を出す。これだけなら冷水でもいいかなと思いながらも、少し迷って温水に切り替える。スポンジにオレンジの香りがする洗剤を数滴垂らし、まだ冷たい水を含ませて泡立てている

悲しくなったときは海をみにゆく

本題名は、寺山修司の詩の一節である。 みなさんは、悲しくなった時、心を落ち着かせるためにしている事はあるだろうか。 ところで私は、本日、取引先の、怒らせてはいけないランキング第1位の人を、とうとう怒らせてしまった。 女性というのは難しい。何故か、難しい男性を怒らせた時より、女性を怒らせた時の方が、精神的ダメージがでかい。 「女人は我々男子にとって正に人生そのものである。 即ち諸悪の根源である」と、芥川も言っているではないか。私は女ではあるけれど。 とにかく、気を付けねばな