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リビング・イン・ニア・トーキョー

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2020年4月から、東京近郊に引っ越して生きていく日々の記録です。
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#コラム

リビング・イン・ニア・トーキョー #26

リビング・イン・ニア・トーキョー #26

 外の匂いが変わった。

 ちょっと前までの冬の感じは、あっという間にどこかへ消えてしまった。気がつけば、僕は昨年と全く同じように、花粉に苦しめられている。ある日の夜、職場から自転車で総武線の高架沿いを通って帰る途中。冬物のコートしか持っていない僕は、この時期の夜に適切な装いができず、マフラーと手袋でごまかしながら、自転車のペダルをこいでいる。

 春物のコートが欲しいな、と思ってすぐ、今まで生き

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リビング・イン・ニア・トーキョー #24

リビング・イン・ニア・トーキョー #24

 唐突に本を読んだ話をしたくなったので、本を読んだ話をする。
 読んだのは、東浩紀さんの「ゲンロン戦記」。とても面白かった。

 ぼくは、一部の文系学問界にいる人たちは、すごく無菌室的というか、浮世離れしたものというか、理想主義的というか、そういった人たちなのだろうと捉えている。ああいう人たちは最悪、研究室と名付けられた自分の書斎で、誰とも関わらずに一生を過ごせれば満足な人たちなのだろうなと思って

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リビング・イン・ニア・トーキョー #23

リビング・イン・ニア・トーキョー #23

 「伝えたいことなど とっくのとうにない」
 「錯覚起こしてる ただそれだけなんだよ」

 書きたいことが全然まとまらないとき、いつも、きのこ帝国の「海と花束」の歌い出しが頭をよぎります。そうなのかもしれないなと、思うこともあります。お前は、別に必要もないし、求められているわけでもないのに、何かを無理して作り上げようとしてるだけなんだよと、頭の中にいる佐藤に言われる。
 このnoteを書き始めた意

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リビング・イン・ニア・トーキョー #21

リビング・イン・ニア・トーキョー #21

 4連休だった。
 今の職場は、祝日は働きに出て、どこかでその代休を取るという仕組みになっていて、今回は月・火の祝日を木・金で消費するということになった。

 木曜はレンタカーを借りて、海ほたる経由で木更津へ行った。
 通勤のために持っていた車はニア・トーキョーに引っ越してくるときに売っ払ってしまったので、ドライブはすっかり非日常になってしまった。年5〜6回はどこかしらにこすったりぶつけたりしてい

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リビング・イン・ニア・トーキョー #20

リビング・イン・ニア・トーキョー #20

 ニア・トーキョー行きが決定したのは、昨年12月だった。あれよあれよという間に面接を終えて、クリスマスの日に内定通知をもらった。あの辺りから、自分の中で「東京」への期待はふくらむばかりだった。家はどこに借りよう。家具はどんな色で揃えよう。から始まって、引っ越したら最初はどこへ行こう、サッカーも野球も見放題だろうなあ、あ、街コン行こう、などなど。

 こういう言い方をするとアレなんだけど、大学デビュ

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リビング・イン・ニア・トーキョー #14

リビング・イン・ニア・トーキョー #14

 本業が楽しい。
 ...楽しい!?こんなことがあるんだろうか、と、毎日毎日異次元空間に来たような気持ちで仕事をしている。仕事なんて基本楽しいものではなく、まあせいぜい、楽しい日と楽しくない日が交互に来るのが関の山のはずだったんだけど。毎日楽しい。

 なぜこんなに楽しいのだろうか。それはひとえに、自分のアイデアを評価してくれる、認めてくれる環境があるからということに尽きるのだと思う。
 以前「I

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リビング・イン・ニア・トーキョー #13

リビング・イン・ニア・トーキョー #13

 木曜日の午後。東京駅の前では、駅舎の写真を撮っている人たちがいる。

 仕事の関係で、木曜日が休みになった。
 例のウイルスのせいでずいぶんと落ち着かない数ヶ月を過ごしているけれど、以前の主体性も何もない日々のことを思えば、いまはずいぶん居心地がいい。木曜日が休みになったのは、土曜日に出勤する必要があったからである。振替休日ということだ。こうやって「ちゃんと」休みが取れるというのも、以前では考え

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リビング・イン・ニア・トーキョー #12

リビング・イン・ニア・トーキョー #12

 目が覚める。時計の短針は6を指している。またか。またですか。ここ1週間、どうにも目覚めたくない時間に目が覚める。早起きすぎるのである。トイレに行って、スポーツドリンクを少し飲む。

 疲労なのか、慣れなのか。教員をやっていた頃の生活リズムが徐々に顔を出しつつある。午前1時30分に寝て、午前6時に起きるスタイル。そういえば、食べる量も明らかに増えつつある。

 ぼくは知っている。この生活リズムが疲

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リビング・イン・ニア・トーキョー #11

リビング・イン・ニア・トーキョー #11

 雨が降っている。
 窓を開けると、ささやかな「しとしと」音。しかし、ささやかに聞こえるくらいの降り方のときが、いちばん濡れることを僕は知っている。

 心は、停滞感を覚えていた。
 とってもわかりやすく言い換えると、「だるい」。そわそわ感があって、何かをしたいのだけれど、何をしたいのかがいまいち浮かばない。あれもこれも、なんだか気乗りしない。とにかく、時間が過ぎてほしい。月曜日になれば、仕事に没

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リビング・イン・ニア・トーキョー #10

リビング・イン・ニア・トーキョー #10

 ニア・トーキョー暮らしも、だんだんと板についてきたことを感じる。今日、10時30分に目覚めてから、12時までほとんど何もしなかったのが何よりの証拠である。唯一したことと言えば、寝床から少し離れたところにあるスマホを取りに行ったことぐらい。そしてまた寝床に戻って、ぼくは12時を迎える。よっこいせと布団を出て、畳み、顔を洗って、掃除機をかけ、洗濯を回す。そうしているうちに、あっという間に13時になっ

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リビング・イン・ニア・トーキョー #9

リビング・イン・ニア・トーキョー #9

音楽を聴きながらお楽しみください。

 チベタンダンス。曲名の割に、なぜだか都会のど真ん中で聴いてみてもしっくりくる。きっとヒマラヤの奥でもしっくりくるのだろう。

 以前に比べて、街の中、駅前には格段に人が増えていることを感じる。これでも本当の賑わいは戻ってきていないというのだから、この街の底知れなさを感じさせられる。それでも、ちょっとした小道に入ると、人の気配はすっかり無くなってしまった。

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リビング・イン・ニア・トーキョー #8

リビング・イン・ニア・トーキョー #8

音楽を聴きながらお楽しみください。

 久しぶりの晴れ間に、僕の心はなんとなく明るくなっていた。「低気圧だと調子が悪い」なんていうのは、「あぁ〜水素の音〜」みたいなのと同様の疑似科学の類いでしかないと思っていたのだけど、現にこうやって日光を見て前向きになっている自分の心を省みると、そんなこともないのだろうかという気持ちになってくる。洗濯物を外に干すと、やっぱりいい気分だ。

 ぼちぼち、この街に来

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リビング・イン・ニア・トーキョー #7

リビング・イン・ニア・トーキョー #7

音楽を聴きながらお楽しみください。

 「人の心は、良い事よりも、悪い事に対してより早く、強く、そして持続的に反応する」という言葉が本に載っていた。それは性格とか、そういった類のものではなく、目や耳から入力された悪い情報は、本来の道ではなく扁桃体という近道を通じて脳幹に届けられる。それが意志に関係なくオートマティズムで行われるようになっているという、言ってみれば「世界の常識」のようなことらしい。

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リビング・イン・ニア・トーキョー #6

リビング・イン・ニア・トーキョー #6

音楽を聴きながらお楽しみください。

 午前5時に、変な地響きのようなものを感じて目が覚めた。ここ最近の地震もあって、このあたりに妙に敏感になっている自分がいる。昨晩どうしても眠くて、10時頃に寝てしまったというのもあるのかもしれない。ネットで調べても、地震の起こった形跡はない。外は曇り空。

 相変わらず、自宅周りの日々が続く...と書くと、「自粛疲れ」を感じている自分がいるような気がしてしまっ

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