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最近の記事

春を憎む

丘の上の古ぼけた病院から放たれると「一日二本まで」という主治医との約束などはな忘れ、実家のベランダで春の突風に吹かれながら、大事に喫んだ三本目の吸い殻を携帯灰皿で折り畳むように念入りに押しつぶした。 かねてからやめろ、やめろと再三言われ続け、まるで喫んでいないかのように振る舞っていた手前、私も喫煙をねだるのをためらっていたが、呂律の回らない舌で獣のように心を熱り立たせながら家族にねだった喫煙だ。フィルターのギリギリ手前まで吸う。はらはらと涙をこぼすような桜のようにもう少し美し

    • 日記

      客観視したとしてもそれは他人の目ではないんでほんとうの自分のことはわからない。逐一具体例を羅列するのも疲れてしまうのだけれども私にはどこかずれているところがあるらしく、それが原因だろう、時々いない人のように扱われてしまうことがある。ずれているくせにそういうところには気がつくしとても傷ついてしまうのである。コンビニの弁当。開かない自動ドア。薄い壁、顔も知らない隣の住人が立てる生活音。誰とも話さず終わる一日。延々と流れ続ける深夜の通販番組。生きている心地がしない。ずっと自分のこと

      • おしゃれ通信❤︎着物篇

        こんにちは。暮らしです。 よく行くスーパーで「くらし〜良好〜」という曲がよく流れています。暮らし良好のために私は手間や金は惜しまず注ぎます。私の暮らしとはすなわち遊びであり、いつも阿呆のような顔をしてヘラヘラしておりますが、遊びと暮らしをいかに充実させるかということをいつも真剣に考えております。私の暮らしのなかでは衣食住のなかで衣、に全振りなわけですが、休日に思いっきりおめかしをするのが好きです。おめかしなりサウナなり旅行なり何でもいいのですがまあ大人ですから自分の機嫌は自分

        • 三十路ですがネイリストになりました

          お久しぶりのnoteです。駆け足で書いているのでお見苦しい部分もありますがよろしければ読んでくださいませ。 突然ですが私はネイリストになりました。 小さな頃から私は将来何をしたいか、何になりたいかという夢がありませんでした。 高校を出た後は親に勧められるがまま大学に進学しました。ぼんやりとした大学に進学しぼんやりとした青春の真似事をしているふりをしながら、精神の落ち込み、異性絡みの面倒ごと、ただ目の前の厄介事を片付けるのに精一杯でした。大学は半年で行かなくなりフリーターや

        春を憎む

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          お洒落通信♥︎星座編

          今夜も愉快なホロスコープのお話です。 星座に見るお洒落についてをつらつらと。 ホロスコープの中で、アセンダントは生まれた時の地平線にあたります。つまり、生まれた時に決定したルックス、遺伝により受け継いだ肉体を現しています。 対して愛と美を司る金星。この天体は好み、心ときめくもの、という解釈です。 わかりやすくお伝えするために(恥ずかしながら)私のホロスコープを例に挙げてみましょう。 ホロスコープ左端がアセンダント。 それから私の金星はちょうどホロスコープ真下あたりにありま

          お洒落通信♥︎星座編

          タルホとジュペリ

          小説家兼飛行機乗りといえばサン=テグジュペリである。彼は海へ墜落するまで、飛行機に乗り続けた。 一方、飛行機乗りに憧れたもののその夢に破れたのは稲垣足穂である。 対極の存在とも言える二人。 サン=テグジュペリは蟹座。 彼のホロスコープは星の王子さまが渡り鳥に乗ってやってきた絵を連想させるような、おおきなパラシュートのような形をしている。操縦席に乗ってるかのような気分にさせられる、ロマン溢れる夜間飛行。そして射手座に天体を持つ彼は、よだかの星のよだかと、射手座のケイローンを連

          タルホとジュペリ

          ぼくらが旅に出る理由(射手座考)

          射手座というサインについて考察する時に、どうしても参考にしたかったのがスピッツの草野マサムネさん。それから「惑星のかけら」アルバムとジャケットについて、です。 スピッツのアルバムはどれをとてもとっても、美しく切なく楽しく、私はとても好きです。 とりわけ「惑星のかけら」がピークのように個人的に感じているわけがあります。 先にこんなツイートをしました。 草野さんのホロスコープについてです。 スピッツは「死と性がテーマ」と言っていた通り草野マサムネさんのホロスコープは12ハウ

          ぼくらが旅に出る理由(射手座考)

          山羊の歌

          山羊座はよく真面目と言われる。果たしてこれは正しいだろうか。 牡牛座、乙女座、山羊座。これら土星座には3区分を無視した、真面目、という狭義的な印象が浸透してしまっているように思う。 山羊座の知人や有名人を思い出せば、真面目という言葉は巷の星占いに散見されるように、山羊座という寓意のステレオタイプな印象という感じである。そして真面目の一言で山羊座というサインを表すにはとても言葉足らずである。 土台、という言葉は土星座を語る上で大切なキーワードであろう。これは音楽に例えるなら

          山羊の歌

          文学という大河(作家と占星術)

          私たちが思っている以上に、感じている以上に 季節の移ろいや月の満ち欠け そして星の流れ。 見えない世界の流れには、私たちへ大きな影響を及ぼしています。 私は10年ほど占星術の勉強をしてきました。 ○○座、とよく言われるけれども、 なんとなくで普及しているように思います。 そこで星座に関して、占星術に関して 普段の研究から思うことや考察など色々な角度から少しずつ取り扱ってみようと思います。 作家と占星術についての関連について見ていきたいと思います。 たまたまですが、安

          文学という大河(作家と占星術)

          田園記

          中央線長野方面の鈍行電車に乗り、電波の届かない、不便で、暗くて長いトンネルを抜ける。ああ開けてきた、と思う頃には、景色ががらりと変わって、あたり一面田んぼだらけ。そうして、だいたい特急の待ち合わせが15分というお決まりのルートで今回も帰省した。開け放しになっているドアを出ると、目の前に広がる果樹園の懐かしい匂いがした。冬来た時は冬の匂いだった。田舎は夏の青々とした草木の匂いに変わっていたのだ。私は嬉しくなり、胸いっぱい田園の空気を取り込んだ。気づくと発車時刻になっている。慌て

          海に忘れたゴーグル

          29歳を目前にしてやっと生きるのが楽しくなりそうな予感がしてきた。大学を中退する頃は毎日死にたくてたまらなかった。しょっちゅう貧血を起こして保健室に行っていたし、学食を一人で食べながら、ぼんやりと海に置き忘れたゴーグルのこと、拾えずに帰った後悔ばかりを反芻しては罪悪感に苛まれていた。 小さな頃はなんとなく絵を描くと褒められて、なんとなくあんたは美大に行くんだよね、と決められていた。ビダイ、がなんなのかわからないが母が自慢げにそう言っていたし、親戚に絵の賞状を自慢するのに車に

          海に忘れたゴーグル

          祈り

          指先は絵の具やクレパスで汚れている。いくら綺麗にネイルを塗っても、指先はいつも汚れている。生きることは手を汚すことでもある。私は神様でもあるまいし、肉を喰らい、手を汚して、祈りを込めながら絵を描く。芸術は祈り、と考えている。美しいものを守ること。戦争が起きている。静かな夜に耳をつんざくような爆撃の気配を感じ取る。私は旅に出る。旅先で拾った石ころに、浜辺の貝殻、通り過ぎてしまいそうなちいさなときめきに神聖を見出すこともある。お地蔵さんに手を合わせる。土地の神々に頭を下げる。そう

          アタイのおしゃれ顛末記

          幼い頃のアルバムを開くと、分厚いジャンパーを着させられ、おまけに目が赤く腫れ、むっつりと不貞腐れた顔をした自分の写真が一枚あった。「あんた、この時寒い寒いって泣いていたんだよ。山中湖で大雪が降って。」と母が言っていた。小学生の高学年から中学生くらいになると、大体田舎ではタウンアンドカウントリー、ピコ、というスポーツブランドのTシャツか、今よりやぼったい頃の、ユニクロのフリースが主流。洋服を選ばせてもらえなかった。ジャンパー、Tシャツ、というカジュアルな服装や従姉妹の古着がとて

          アタイのおしゃれ顛末記

          長い道のり

          小さい頃はしょっちゅう鼻血を出していた。 風呂屋でのぼせて鼻血。戦争の写真を見て鼻血。「このろくでなし!」と殴られて鼻血。体育の授業中に鼻血。大人になるにつれ鼻血を出すことも少なくなっていったが、わたしは知らず知らず心を病んでいったらしい。あの頃流していた血は鬱血して、気づけば体中があざだらけになっていた。 鼻の中を生暖かいものが滑り落ちてくる感触がして目が覚める。六畳間の暗闇で家族が寝静まっているなか、もそもそ体を起こして手探りでティッシュ箱を探し、体を丸めて鼻を押さえ続

          長い道のり

          おいしいはなし

          生まれる前の草原で、大きな神様がちいさなわたしたちを呼び集めてこう言った。「地球は本当にいいところです。緑が多くて、生き物たちはのびのびと暮らしている。あなたたちの多くはきっとヒト、として生まれるでしょう。」ヒト、ヒト、ヒト、とはじめて覚えた言葉を頭の中で何度も反芻する。わたしたちはまだ体も持たない、ただの光だった。だから、顔があることに憧れた、体を持ちたいと切に願っていた。「どんな形になれるかなあ」誰かが言う。「形じゃないよ、ヒトだよ!」髪をなびかせるしぐさをする子がいる。

          おいしいはなし

          くろちゃん、しろちゃん

          横浜には、ぶち、黒、トラ、とたくさんのねこがいる。店で飼われている看板猫だけでなく、野良猫たちも同様にみなまるまると肥えていて、重たそうな腹をゆさゆさ揺らししながら優雅に歩いているのを見ると大変微笑ましい気持ちになる。なぜかというとこっそり餌やりをしている人たちがいるからで、わたしも決まった時間にやってきてはいくつも餌の皿をならべるひとびとの、その甲斐甲斐しいようすを度々見かけることがある。それについて市のひとびとはうるさく言うようだけれども、行政は人々の内情は知るよしもなく

          くろちゃん、しろちゃん