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ぼくらが旅に出る理由(射手座考)

射手座というサインについて考察する時に、どうしても参考にしたかったのがスピッツの草野マサムネさん。それから「惑星のかけら」アルバムとジャケットについて、です。

スピッツのアルバムはどれをとてもとっても、美しく切なく楽しく、私はとても好きです。
とりわけ「惑星のかけら」がピークのように個人的に感じているわけがあります。

先にこんなツイートをしました。
草野さんのホロスコープについてです。

スピッツは「死と性がテーマ」と言っていた通り草野マサムネさんのホロスコープは12ハウスの金星がすごく目立つ。金星は火星とスクエア、獅子座の月で180度。あたかも「惑星のかけら」のジャケットの弓矢を連想させます(金星が矢、月と火星が弓)。キラキラした獅子座の月はまるで矢をいる少年のよう。

彼の金星のサインは蠍座の金星です。

性と死を色濃く反映した蠍座の金星は12ハウスにあり、その面がより強調されています。
曲によってはどろっとした歌詞もあり、少し毒があるような曲もあり。それを手伝うのはさわやかな獅子座の月とちょっと不思議な水瓶座の火星です。いわゆるTスクエアを作っています。
金星が矢となり、月と火星が弓の役を果たし、全ての要素が絶妙なバランスでスピッツの音楽に打ち出されています。


このアルバムの前に、「オーロラになれなかった人のために」というアルバムが出されています。
死んだ人はオーロラになるのだ、という死生観がタイトルの元となっているそうで、スピッツの中では死の部分が前面に出た異色のアルバムです。
「ナイフ」イントロの音は浮遊感があり、宇宙に漂っているかのような気分になります。ようやく重い口を開いた、というような草野さんの沈んだボーカルはゾクゾクするものがあり、また美しいストリングスとよく絡み合っていて、胸が苦しくなるほど切なくて美しいアルバムです。
そしてこのアルバムの流れは、「惑星のかけら」というアルバムへ引き継がれているように感じます。


次作「惑星のかけら」。
このアルバムには射手座の「旅」という寓意が、旅への理由が、明確に表れていると感じます。

骨の髄まで愛してよ 惑星のかけら

何度も繰り返されるこのメロディーには、蠍座の金星が表すような「とことん愛されたい」という深い欲を感じます。ここから深い愛を求めるような旅がはじまり、「僕のマリ」素敵な女の子に出会い、「アパート」で喪失感をおぼえる。そしてリコシェ号でまた新しい旅に出る。射手座の対極である双子座の寓意は「国内旅行」。射手座が「国外旅行」とよく言われます。国外どころかもっと遠いところへ飛んで旅立つようなこの一連の曲の流れ。この一枚はまるで一つの旅のようなアルバムです。またこのアルバムがその後のアルバムへと旅を予感させるような、いわば「旅の理由」とも感じさせます。

さて、射手座がどこまでも遠い旅に出る、その理由は一体何でしょうか。


ギリシャ神話のケイロンが射手座の神話の元となっています。


半人半馬、粗野粗暴で荒々しいケンタウロス族の中でもケイロンは医療や音楽など学術に長けた賢者であったといいます。
父はクロノスで母はニンフ、といういわばエリートの血を彼は引いています。姿形はケンタウロスでありながら、厳密には父クロノスは神であったため、彼は純血な神でもなくケンタウロス族でもありません。加えてケイローンは父クロノスが妻の目を盗んで関係を持ったいわゆる非嫡出子であったため、家から追い出されるような形になります。彼は、アポローンやアルテミスなど他の神々の寵愛と一流の教育を受けて育ちます。粗野で粗暴と言われるケンタウロス族には馴染めないどころか、嫉妬を受けるけれども、純血な神の一人というわけでもない。彼はどこか自分が浮いた存在であったように思ったにちがいありません。

その後、彼はケンタウロス族とヘラクレスとの争いに巻き込まれます。弟子であるヘラクレスの誤って射った毒矢がケイローンに命中しますが、ケイローンは神の血を引いているため不死身であり、どんなに苦しんでも死ぬことができません。そこでケイローンはゼウスに頼み死を選びます。そしてゼウスにより空に打ち上げられた、というのが射手座の神話です。

「射手座の人は旅が好きです」というように言われるのは、狩人のような果てなき好奇心や熱意だけでなく、きっとケイロンがどこにも属することのできぬ異邦人のような存在だった、そんなことも起因しているのかもしれません。

君のアパートは今はもうない だけど僕は夢から覚めちゃいない
一人きりさ 窓の外は朝だよ 壊れた季節の中で
アパート/スピッツ

人は悲しみから立ち直るために、旅に出ます。
ケイローンの負った深い悲しみと傷は、スピッツの「惑星のかけら」、アルバムの真ん中に収録されている「アパート」の喪失感とどこかリンクしているような気がします。

ユメで見たあの場所に立つまで 僕らは少しずつ進む あくまでも
夢追い虫/スピッツ
「人が見ればきっと笑い飛ばすような よれよれの幸せを追いかけて」
桃/スピッツ

スピッツの草野さんは、「惑星のかけら」ジャケットの少年を想起させます。いつまでも夢を追いかけるのをやめられない少年のようです。

射手座のケイローンは深い悲しみと共に夜空に打ち上げられました。彼はいつまでも終わらない永遠の旅をしているのかもしれません。

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