シルクロードの歴史21『現代のシルクロード・一帯一路』
*天文学史に続いて中学生時代に作った書いた40ページくらいの短い奴です。改行などの部分は直していますが細かい部分は修正していません。また、一帯一路については多少書き足しています。
1. 現在のシルクロード
シルクロードは現在、そのルート自体が丸ごと「シルクロード:長安-天山回廊の交易路網」としてユネスコの世界遺産に登録されており、登録の後にその文化・思想・環境などの多様性や、モンゴルやイスラム、中国、ロシア、イギリスなど多くの国々の戦いの場となり世界史の根本といえるほど大きな影響を与えてきた事から、シルクロードを平和の象徴にしようと言う主旨のプロジェクトが開始した。
ユネスコはシルクロードだった地域で様々な無形文化遺産、記憶遺産、生物圏保護区、ジオパーク、創造都市ネットワーク、水中保護文化遺産など多くの事業を行い、文化財の保護に取り組んでいる。
このシルクロードを保護するユネスコのプロジェクトを主導しているのは漢の武帝の時代にシルクロードを開いた国で、まさにシルクロードを作った国である中国であるが、これは「一帯一路」に利用されるのではないかともされている。
2. 一帯一路の開始
一帯一路もといBRI、OBOR、正式名称「シルクロード経済ベルトと21世紀海洋シルクロード」とは、中国、中央アジア、中東、ヨーロッパ、アフリカにまたがる広大な貿易圏の計画の総称であり、2013年に中国の最高指導者である習近平 (シー・チンピン)総書記がナザルバエフ大学の演説で提唱したユーラシアを陸で繋ぐ構想と、同年にインドネシアの国会演説で提唱した海で中国からアフリカまでを繋ぐ構想がその始まりとなっている。
それらの演説の翌年の2014年には中国の首都北京で開催された中国やアメリカ、ロシア、日本、オーストラリア、韓国など多くの国が加盟するエイペックの首脳会議でユーラシア大陸を横断してヨーロッパと中国を繋ぐ"シルクロード経済ベルト"もとい一帯と中国沿岸から東南アジア、南アジア、アラビア、東アフリカまでを繋ぐ"現代の海上シルクロード"もとい一路の二つの地域でインフラの整備や貿易の促進、資本の往来の促進などを行うという一帯一路計画が公に発表されることとなった。
一帯一路はインフラ投資計画として世界史上で紛うことなき最大のもので、現在、中国を統治している中華人民共和国政府設立の100周年となる2049年までの完成を掲げている。
3. 一帯一路の進行
習は一路の構想を最初に発表したインドネシア国会演説で同時にアジアインフラ投資銀行(AIIB)というアジアへ諸国へのインフラ投資を行う大規模な国際開発金融機関(MDB)を提唱、2014年に67の加盟国と共に実際に設立されており、他にもシルクロード基金なども行われ、中国を中心とする一帯一路経済圏の実現に向けた整備が行われた。
さらに優秀な経済学者兼政治家として世界的に知られた首相李克強(リィ・ケチァン)が各国への支持を呼びかけて100以上の国々からの協力を獲得、中国を中心とする上海協力機構の他、インドネシア、ベトナム、タイなどのASEANやアラブ連盟、ドイツやフランス、イタリアなどのEU、ロシアを中心とするユーラシア経済連合、ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体、そして世界で最も巨大で影響の強い国際機関である国際連合からも支持され、特にロシアとは大きな協力関係となっていくこととなる。
その後、2017年に一帯一路のサミットフォーラムが行われると発表されると多くの国際機関や国家の首脳が出席を表明、しかし、結局は西側の首脳などは来ずG7では唯一、イタリアのみが首相を派遣、唯一の加入国家となり、また、10年代も後半になると融資の焦げ付き(未回収)が起こってしまい、対立するアメリカからの情報ではあるが520億の金利減免を行ない、新たな投資に対して慎重になっているようである。
またG7で唯一の加盟国イタリアも2023年には貿易赤字が拡大したことや、新型コロナの影響での投資の滞りから李強首相とメローニ首相の会談の結果、離脱となっている。
しかし、10年代後半にはドイツ、ロシア、中国の共同で運営されるユーラシアを横断する世界最長の鉄道路線である「中欧班列」の本数が1万本を突破するまで増加、ロシアやカザフスタンを経由するユーラシア・ランドブリッジのルートや中央アジアやトルコ、バルカンを経由する新ユーラシア・ランドブリッジなどのルートが開発され中東諸国とも結ばれており、欧米や日本の企業も輸送に参加している。
そして海洋ルートの一路としては通常の中国から東アフリカまでのルートの他に、地球温暖化で夏のみ船が海域に入れるようになった北極海を使った北極海航路も開発され、さらに一帯一路構想から離れた中南米諸国とも太平洋海上シルクロードの構築の計画を合意している。
4. 一帯一路の国々
一帯一路の道になる国々の反応としてはカザフスタン、パキスタン、アフガニスタンなどは支持派、しかしルートにある最大の国家であるインドは中国の囲い込みなのではないかと考え完全なる拒否を貫いているという状況である。
ただ、中国から融資を受けても財政の統治やコンプラが存在しないため莫大な債務を発展途上国が抱える事態が起こっており、これによって多くの国が反中の傾向に陥っているともされる。
たとえばパキスタンは一帯一路の事業の中で莫大な借金を負ってIMFやサウジアラビに援助を求める事態ともなっており、また、かつてオマーンの飛地であった歴史を持つ港町グワーダルは操業権を中国に譲っている状態で、インドの南にあるスリランカでも中国支援のインフラで赤字が続いた結果、ハンバントタ港が中国のものとなっていて、キルギスも経済的に大きなダメージを負っている。
また、一帯一路を敵視しているアメリカはタイ、ミャンマー、パキスタン、タジキスタン、UAE、シンガポール、インドネシア、スリランカ、セーシェル、ケニア、タンザニア、アンゴラは中国の軍事拠点として検討された国家であると認識しているとしていて、これらは概ね一帯一路のルート上にあり、その大陸横断計画は経済だけにとどまらず軍事面でも行われている可能性があるとしている人もいる。
これで21記事に亘って投稿してきた"シルクロードの歴史"シリーズは終わりです。読んでいただき有難う御座いました。
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