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【エッセイ】『星の王子さま』で死ぬほど好きな真理とその名言

【エッセイ】『星の王子さま』のヘビ🐍の謎に先日触れましたが、このNOTEでは作中の名言について触れていきます。その前の余興として、『星の王子さま』は表向きは神秘的なストーリーに仕上がって入るものの、ちょっと見方を変えると全然違って見えてきます。例えば、物語の最初に登場する一本のバラを男(王子さま)を惑わす女として見ると次のような感じに印象が変わります。

二人の関係が始まって以来、女は自分が上の立場にあると考えているものの、実際は女は男の助けがないと生きていけない状態にあります。奉仕させていた男に自分の元から去ることを告げられた女は「行きたいならさっさと行けば?」と突き放します。

そういう言い方をしたのは、ここで取り乱して男にすがりついてしまったら(立場が逆転して)女の誇りが台無しになると分かっているからです。しかしながら、本音とは裏腹に男は言葉通りに女の元から去っていきます。取返しのつかないほどの時間が経った頃、男は女のことを思い出して元いた場所へと帰ってきます。もう昔のような関係には戻れないのに……。

王子さまを元いた場所に帰ることを決定づけた「大切なものは目には見えない」という名言は世間的には一番有名ですが、個人的に死ぬほど好きな名言が作中の何気ないところにありますので、このNOTEではそれを紹介したいと思います。

”探し物”の真理とその名言

「家でも星でも砂漠でも、その美しいところは目には見えないものさ」
『新訳 星の王子さま』より

実はこれ、王子さまではなくて王子さまが地球で出会った飛行士のセリフで、たくさんの意味がこの一言にぎゅっと凝縮されているのです。初見の方には何が何やらさっぱり分からないと思いますので、以下にその「ぎゅっ」の個人的な解釈を書き記していきます。

「星が美しい」というのは、王子さまとバラとが作った関係性があるために王子さまの星が特別なものになっていることを意味します。でも、実際に夜空を見上げると王子さまの星以外の星はたくさんあります。王子さまの星を地球で探すのは、見える範囲のすべての星を眺めることでもあるため「すべての星が王子さまの星かもしれない」という希望的可能性が星空全体を美しくしているのです。

これは①王子さまの星とバラの関係だけに限らず、作中に登場する②家に隠されているかもしれない宝物や③砂漠の中の井戸にも当てはまります。たとえ探すフィールドが家の中や砂漠に変わったとしても、探すことによってフィールド全体が美しく見えるようになるというのは同じなんです。つまり、探し物の種類やその有無に関わらず、自分が「あるはずだ!」と信じて探しているうちは、探すフィールドのすべてが美しく見えるという真理を表現しているわけです。目には見えない美しさというのは、この心理的な動きのことを指しているのでしょう。

この2ブロックで長々と書いてきた内容をあの何気ない一言に凝縮させていることに気づいた時には、この真理の素晴らしさと表現方法の上手さという二重の感動を味わえましたね。

”関係性”の真理とその名言

「仲良しになる以上は、涙を覚悟しなければならない」
『新訳 星の王子さま』より

実はこれ、王子さまではなく王子さまが地球で出会ったきつねのセリフです。”探し物”の名言と同様に、人間関係の真理がこの短い一言に込められていますので、以下に個人的な解釈を記していきます。

「大切なものは目には見えない」というのは、二人の間で構築した人間関係には(大空のように)決まった形はないけれども確かにそれは存在するのだ、という意味合いを持っています。作中ではこれ以外の名言と呼ぶべき言葉が多数あるのですが、これはすべての名言を包括したような名言オブ名言として公に認知されていますね。

さて、自分と誰かとの人間関係を一本の時間軸として眺めると、出会いの時から一緒に過ごした時間と、末端の別れに相当する時間とに二分できます。前者を形容する名言もあるにはあるのですが、私は別れを形容するこちらの名言の方を強く推します。

大切な人との死別や、生前における最後になるかも分からない別れというのはいつかはやってきます。その時には自分の意思とは関係なく、涙がこぼれ落ちます。その涙は長い年月をかけて積み重ねてきた二人の関係性の深さを証明するものであり、またその人が大切であればあるほどより深い悲しみに打ちのめされる覚悟をしなければならないという真理を表現しているのです。そういう意味では、関係性の深さと悲しみは表裏一体の関係にあると言えそうです。

これについても上記の内容を何気ないあの一言にまとめているのだと思うと、「もう無理、表現方法すごすぎてヤバイ。尊い。誰か助けてくれ……」という状態でしたね。

このような感じで、本文中を探すと ”探し物” や ”関係性” 以外にまつわる未発見の真理がまだ見つかると思います。それこそ、本の中に隠された宝物を探すようなものです。ほんの少しの紹介ではありますが、原作者の真理描写と翻訳者の巧みな言葉遣いが織り成す感動が、私を『星の王子さま』に夢中にさせている理由の一つです。これ以上考察を書き出したら止まらなくなりそうなので今回はこの辺でやめておきますね。最後に、このNOTEの内容は飽くまでも私の自分勝手な解釈であって正しいかどうかは分からないということをお断りしておきますね ( 'ω' )

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