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薄楽俊
2024年5月19日 20:41
引き潮過去という現在が今日もぼくの日暮れ待ちの海岸にたくさんの漂流物を打ち上げる墜落した魔女の叔母さんの形見の箒とか三角帽子のピエロの叔父さんが忘れていったブリキの太鼓とか少数民族の裸を撮りまくった元脱走兵の報道記者愛用のニコンのレンズとかテロリストになったシスターが羊小屋に棄てていった真鍮の貞操帯とか何にもおわっちゃいないのにぼくをポストモダン化しようとした真っ赤な
2024年5月4日 17:59
五月のノスタルジー あやめかる安積の沼に風ふけば をちの旅人 袖薫るなり 源俊頼風が万物を薫らせ蒼い静脈の這う近所の少女の乳房が膨らみ出戻りの姉の白い太腿はむき出しで縁側に投げ出され売春宿のぼくの恋人のお腹の産毛が陽炎のようにゆれるそんな五月の白昼に不如帰が鳴き出すと工事現場では必ず神隠しが起こり少女の腋臭のような沼の匂いが山から下りてきて夕暮の雨は予想
2022年11月30日 16:24
黄昏れている自転車が黄昏ているブランコが黄昏ている物干し台が黄昏ているブラウスが黄昏ているジャングルジムが黄昏ているコルセットが黄昏ている鉄棒が体育館裏が素敵な先生が黄昏ている黄昏ている たそがれているスーパーマーケットが黄昏ているきみの作ったおいしかったオニオンスープが黄昏ているコンビニエンスストアも黄昏ているカップラーメンも茶碗蒸しも黄昏ている街のカップルも警察
2022年11月11日 00:18
挽歌少しづつ距離ができる希望が生まれるたびに願うたびにぼくたちは言葉で幾多の景色をつくったまるで国産くにうみのようだと君はいいぼくは初夏に横たわる丘陵のような君のなだらかな腹を無言で撫でたとるに足らない戯れの過ぎてゆくほどにたまらなく愛おしくなるのはなぜか希望がかなえられるごとに言葉は単なるツールとなってぼくたちは労働者の消えた鉄の街の払い下げアパート