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タルと暴れアヒルとワタシ/連載エッセイ vol.84

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.86(2015年・第1号)」掲載(原文ママ)。

今年で本紙連載14年目に突入したこのエッセイ。
偶数月発行のスケジュール上、今更ではあるが…親愛なる読者の皆様、あけましておめでとうございます!! 
今年も当組合を宜しくお願い致します!!

さて…年明け一発目のネタといえば…これまたお約束的な『アメリカ研修』である。

毎年参加するようになって個人的には既に11年が経過しているが、その費用は全て自腹である為、毎回の渡米を可能にする『軍資金』は、普段の施術業務の賜物に他ならない。
改めて、日々のお客様のご支持に感謝である。

まぁ、それを受けて真面目なセミナーリポートをご披露してもよいのだが、その役割はいつものように通信表面へお任せするとして、このエッセイでは、読者の大多数が楽しみにしているであろう、これまたお約束的な『こぼれ話』なぞを…。

『毎年ラスベガスへ行く』と周囲に伝えると、『センセイ…空き時間はやっぱりカジノですか??』…などと言ってこられる方も多いが、実はワタクシ、その手の道楽には全く興味がなく、今や『総合エンターテインメント都市』と化した彼の地での個人的なお楽しみは、『服飾ショッピング』と『ショー鑑賞』の2本立てなのである。

しかし…今年はセミナー開催の『タイミング』が悪かった…。

前者で言えば、1月末は既に『秋冬物ファイナルクリアランス』が終了してしまっており、かといって『春夏物』の品揃えは十分ではない。

後者に関しては、閑散期である為、日本でも有名な『シルク・ドゥ・ソレイユ』の現在7種存在する常設公演が休演期間であったり、曜日休演であったり…。

まったく、何の為にラスベガスまで来たんだか…。
(いや、セミナー参加でしょ!?)

そんな厳しい状況下、私が縋ったのは普段から愛読している『某ラスベガス情報サイト』。

週刊で提供される最新情報をチェックしては、次回の訪問に向けてテンションの維持向上に日々努めている私の元へ、昨年末、ある『耳寄りな情報』が飛び込んできたのである!!

『ダーク・アーサー』…。

それが今回の『ネタ元』となるイリュージョニストの名前である。
彼は業界の中でも『花形』とされる『虎』の使い手として有名。

なんでも、トラ自体が絶滅危惧種として取引が厳しく制限され非常に高価な動物であるばかりか、小形動物と比較しても飼育管理費において別格である為、トラを使ったショーを演じることは業界でのステータスとされているのだとか。

そんな彼が、昨年末より2年振りにラスベガスへ帰還してきており、しかも『ラスベガスの創成期を支えた老舗』といえば聞こえはいいが、少々ロケーションと目新しさに難がある『リビエラ・ホテル』にて毎晩ショーを披露している為、非常に安価でのチケット入手が可能とのこと!! 

彼の地へ到着した夜、速攻で『安売りチケット販売店』に並び、翌晩分のチケットを、『シルク~』の6分の1程度の金額で手に入れたのはいうまでもない…。

その約22時間後…。
私はシアターで開演を待っていた。

『シルク~』の常設ショーでは、そもそもその演目に合わせて会場が独自設計されており、シートもゴージャス仕様となっているが、リビエラのショー会場では、通常の椅子がシアタースタイルで並べられているのみ。
正直、『見劣り感』は否めない。

そして何より、会場自体が狭い!! 

…ということは逆に、それだけステージが近い!! 

『この至近距離でトラが登場してくるのか…??』 

一抹の不安を胸に抱くこと、十数分…。
ステージにライトが灯り、アシスタントと思わしき見目麗しい女性2人によるダンスからショーは開幕した!!

その約1時間後…。

私は大いなる満足感とともに会場を後にしていた!! 
コレは…恐ろしくコストパフォーマンスに長けた優良なショーだぁ♪♪

その晩に登場した大型動物は、トラの他にも、ライガー(ライオンとトラのハーフ)や黒ヒョウ&雪ヒョウなど多彩。

それらが鎖や檻に繋がれているとはいえ、約5mの至近距離で突然現れたり、一瞬で姿を消したり!! 

合間には、ハトやアヒルなどの小動物を用いた定番ネタや、動物を用いないクロースアップ(至近距離)マジックなども披露し、最後は大掛かりなイリュージョンで締めるという充実の構成!!

正直、数年前に同じくラスベガスで鑑賞した、世界的に有名なイリュージョニストのショーより、数段楽しめたというのが実感であった。

(そして何より…故ロビン・ウィリアムス似をややイケメン寄りにした風貌のアーサー氏による、マジック披露後の『ドヤ顔→ハニカミスマイル』の『鉄板展開』が、個人的はツボでゴザイマシタ…!!)

そしてワタクシ…実は今回も『爪痕を残す』ことに成功!!

つまり…『ダーク・アーサーのステージ』に『参画』したのである!!

それはショーの3分の1程度が経過した頃。

その夜の初めての『客いじりコーナー』にて、ステージ上には『檻に入れられたアヒル』と『樽』が運び込まれていた。
そう…お約束の『檻から消えたアヒルが空っぽのはずの樽から出現』ネタの登場である!!

客席へ降り、覗き込ませて樽が空であることをアピールするアーサー氏。
たまたま通路沿いの座席だった私の所へもやってきたので、少し大げさな動作で中を確認し、何も見えないことを場内へアピール。

すると、その『所作』が彼の『御めがね』に適ったのであろう。
私はその場に立たされ、その樽を手渡された。

そして若干戸惑いつつ、底に手を軽く添えて持つ私に、氏は満面の笑みと真剣な眼差しを同居させつつ、コッソリこう告げた…

『そうじゃない…もっと両手でしっかりと抱えるんだ…!!』。

ステージへ戻る氏の後姿を見送りつつ、私はすぐにその言葉の真意に気づく…。

カリッ…カリカリガリッ…!! 

樽を抱きかかえた両腕を伝わってくる明らかな振動…。

そう…この樽の中…既にナンカいるぅぅぅ~!!!!

ステージ上では、氏が意気揚々と檻中のアヒルの健在をアピールし、いよいよ布でソレを隠し始める。

一方、私の手元の樽中の『ナンカ』は、いよいよ暴れ始め、油断すると樽につられて私自身の身体が揺れてしまう程…。
そうか…だからこの抱え方かぁ!!

時間の経過とともに将軍級の暴れっぷりをみせる樽中の『ナンカ』!! 

布を取り去り、ソコにいるはずのアヒルが消えたことをアピールするアーサー氏!! 

ステージ上からスライドしてきた会場中の視線を、一斉に引き受けるワタクシ!! 

樽が動かないよう必死に抱きかかえつつも、表向きはわざとらしく会場の隅々へ視線を配り、アヒルを探す振りをするワタクシ!! 

ココが見せ場だ、耐えろ…耐えろワタクシィィィ~!!!!

そして…ステージから降り立ち颯爽と駆け寄ってくる氏と向き合い、肩を竦めるというアメリカンなジェスチャーを返しつつ、樽の蓋が開いて勢いよく掴み出されたアヒルを見て、『いま初めて気づきました』的な腰抜けリアクション芸を披露したワタクシ…。

会場大爆笑&アーサー大スマイルである!!

そしてその後…会場内からの惜しみない拍手を受ける私の表情は、氏が憑依したが如く、『ドヤ顔→ハニカミスマイル』だったことは言うまでもない…!! 

ビバ・ラスベガス!!


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