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日韓オサレ交流は象鼻より長く象皺より深く/連載エッセイ vol.87

※初出:知事認可・岩手県カイロプラクティック協同組合発行、「ほねっこくらぶ通信 vol.89(2015年・第4号)」掲載(原文ママ)。

早いもので今年も折り返し地点を過ぎ、下半期へと足を踏み入れるコトとなった。

おかげさまで例年以上に忙しい日々を過ごさせて頂いているが、その感を一層強める要素となっているのが、この上半期の仕事絡みでの海外渡航の多さであろう。
既に国外へ旅立つコト、5回で、異国の地を踏む事がなかった月は、春先の3月のみという状態であった。

特にも4月からは、この通信が皆様の手元に渡る頃には『情報解禁』となっているであろう、ワタクシがここ5年程かけて携わってきた、ある大きな案件が山場に差し掛かった関係で、毎月お隣の大韓民国へお邪魔する事態となっていた。

『近くて遠い国』と揶揄されるコトも多い、彼の国と我が国の関係性であるが、両国間を巡る昨今の感情的ともいえる報道の応酬は、個人的にはいささか食傷気味。

少なくとも私自身は彼の国を実際に歩いていて、直接的に不快な思いをした事は、ほとんどない。

若干、『仲良くなると、ヒトとヒトの距離感がずいぶんと近いなぁ…』と及び腰になる機会も間々あるが、その様な文化の違いは、異国へ訪れれば当然存在するもので、わざわざ論うべきものではないし、そのような異文化との遭遇こそ、海外渡航の楽しみでもある。

つまり…インターネットで『知る』コトができる情報と、実際の現地で『分かる』コトができる知識とには、必ず『ギャップ』が存在する旨を明確に意識していないと、ずいぶんと『損』をする時代に生きている事実を、我々はより留意すべきであろう。

さて話は少々小難しい横道に逸れてしまったが、忙しい現地での行程の中でも、ワタクシが極力、たった1~2時間であっても組み込むようにしていたのが、ソウルでの街歩きである。

その主たる目的は…
『グルメ』??…
『ショッピング』??…
『お直し』!?…いやいや……

『レザー製品のオーダー』である!!

彼の国はレザー製品の『生産流通販売大国』として世界的に有名であり、我が国にもそのファンは多い。

そして、ついつい既製品にはない奇抜なデザインを欲してしまう『オサレ番長』なワタクシは、レザーウェアであれば『東大門』地区にある某店、レザーシューズであれば『梨泰院』地区にある某店と、『行きつけ』のオーダーショップが決まっている。

何故にそれらの店舗を選んでいるのかというと…『品質』は当然の事ながら、『アフターケア』の充実度。

出来上がってきた製品を突き返し、イチから作り直しを命じた事も1度や2度でなく…。

ワタクシ、そのやり取りの中で、異文化人との交渉には、『気遣い』と同じ分量の『自己主張』が大切であるコトを学ばせて頂いた…感謝である!!

そして今春からの『連続訪韓』でも、忙しい合間を縫って、シューズオーダーだけではあったが、店舗へ顔を出すコトが出来た。

そして結論から言えば…毎月1足ずつ、計3足の『特殊』なシューズを作る事態へと陥ってしまったのである…。
(以下、文中に若干の『専門用語』が散見されるが…わからない方はノリで読み進めて頂きたい!!)

4月。

ワタクシの希望オーダーは、『スムースレザーとスエードレザーによる異素材淡色コンビカラーのフルブローグ』。

ところが店舗にある豊富な皮革サンプルをすべてチェックしても、ワタクシのイメージに適うブツは見つからず…。
通常であれば適当な頃合で手を打って準備できる素材で注文してしまうか、製作自体を断念するか…。

しかしながらワタクシは妥協を許さない『オサレ番長』…。
そして相手は、その番長とここ数年、がっぷり四つに組み合ってきた『歴戦の職人』…。
暫く続いた重い沈黙の後、最初に口を開いたのは店側であった。

『わかりマシタ!! 
今度ワタシが市場へ行って、アナタの希望に沿える様な皮革サンプルをいくつか手に入れてキマス。
そして、その切れ端を日本のアナタの家に送るから、そこに気に入ったものがあれば、製作にかかりまショ~!!』 

『おぉ!! 
それはありがたい。
しかしながら、わざわざ送って頂くのは忍びない。
実は…来月も韓国へくる予定があるので、時間をなんとか遣り繰りして顔を出すから、その時に結論を出しましょう!!』

5月。

店舗入口近くのショーケースの上で、7種類ほど準備された皮革サンプルを太陽光に当てながら、その組み合わせを熟慮するワタクシ。

『それでは…コレとコレで作製願います!!』

『ハイ、アリガト~ゴザイマス!! それで…今月はナニをオーダーしてイキマス??(←さも当然のように!!)』 

『うん、膝下ロングブーツでサイドファスナーは全開タイプ。スーツスタイルにも合わせられるように、ダブルモンクストラップの趣向を取り入れ、スクエアトゥにはメダリオンを入れて!!(←さも当然のように!!)』

6月。

この時は他意なく本気で4月5月にオーダーした商品製作の途中経過をチェックする為だけに来店した…ハズであった…。

良くも悪くも、完全に『特別(要注意対応)客』となっているワタクシの来訪に合わせて、工房から責任者が顔を出し、製作経過に関して現物を手に説明。

なかなかの出来栄えに満足げなワタクシの表情を確認するなり、責任者は安堵の表情を浮かべつつ、はたと何かを思い出したように店舗奥へ一度下がり、その後、ズイズイと巨大な巻物然とした物体を引き摺りつつ、再度相対してきた…。

『実は…昨日、1年越しの注文の末、やっと入荷した面白い素材があるんデスヨ!!』

『コレは…もしや…エレファント(象革)!?』 

『そうデス!! 南アフリカ産の「クラス1」デス!! 
ワタシもこの品質でこの大きさの素材は初めてデス…。
既にバッグ2つと財布2つの注文が入っていて……ただ、靴1~2足分でしたら、まだ素材を確保できマスガ…??(ニヤリ)』 

『うむ…ホールカットのメダリオンレスなスクエアトゥ…ビーディングもエレファントで……宜しく頼むよ!!(←さも当然のように!?)』

7月。

4月5月にオーダーした商品の到着に遅れる事、約1週間。

意外に早く届いた小振りのダンボールへ慎重にカッターの刃を滑らせ、そっと中身を取り出すと

…パオオォォォ~ン♪♪ 

人生初の象革靴、ゲットである!! 

オサレ番長的には一枚革でしか作れないホールカットデザインかつ、通常この素材ではラウンドトゥにする傾向が顕著な既製品に対抗して、ドレス様式なスクエアで仕上げたトコロが全くの自己満足的チャームポイントである。

あまりの出来の良さにテンションの上がったワタクシ、すぐさま国際電話をかけ、お礼と、翌月に再訪してまた靴をオーダーしたい旨を工房長へ伝えると、彼は謙遜しつつも、恭しく真声でこう告げてきた…。

『アナタのォ~オーダーはァ~いつもチョット変わってるからァ~……来る前にィ~素材やデザインについてぇ~メールを貰えるとォ~僕はかなり助かりマス…。』 

うむ…その思い、我が胸に刻んでおこう……象の鼻より長く皺より深く!!


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