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読書ノート

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2019年9月に読んだものの感想

2019年9月に読んだものの感想

西兼志,2017,『アイドル/メディア論講義』東京大学出版会.
筆者が訳書、共著をもつベルナール・スティグレール、ウンベルト・エーコのメディア論を用いながら、〈スター〉〈タレント〉〈アイドル〉性とその変化を論じた前半が特に面白い。

メディア論をやや離れて、ハビトゥスや言語行為論に踏み込むと、ちょっと理論が先走りすぎているように思う。学生向けに、メディア論への導入としての側面を持たせようと書いてい

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コナリミサトの強迫的性善説と羅生門的語り――『凪のお暇』と『珈琲いかがでしょう』

コナリミサトの強迫的性善説と羅生門的語り――『凪のお暇』と『珈琲いかがでしょう』

コナリミサトと「他者の合理性の理解」「今さら!?」とぎりぎり言われなさそうなタイミングで、コナリミサト『凪のお暇』を5巻まで読み終えた。人間関係の描写もさることながら(特に嫌味のリアリティがすごい)、「生活」に必要なMPを回復させてくれる要素も持ち合わせる、定期的に読み返したい漫画だった。めちゃめちゃ面白かったので、そのまま『珈琲いかがでしょう』も読み終えた。人がいるのに少し泣いた。

コナリミサ

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2019年1月に読んだもののメモ

2019年1月に読んだもののメモ

今後、ゆるゆる月に1回ぐらいの更新を目指します。

千葉 雅也、二村 ヒトシ、柴田 英里(2018)『欲望会議』自分の研究対象であるポルノグラフィの問題も、本書の中心的テーマ。

千葉雅也先生の合いの手、整理、ブレーキのかけ方は見事だと思ったのだけれども、それをふりほどいてさらにアクセルを踏む柴田さんには危うさも覚える。とりわけ問題だと思うのは、「フェミニスト」を非常に一枚岩としてとらえているので

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【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

穂村弘さんの最新歌集『水中翼船炎上中』の感想、というかほとんど好きな歌を引用して並べておくだけになるのですが、今更ながらさらっと書き残しておきます。

『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』以来、実に17年ぶりの歌集。「昭和」「ノスタルジー」をテーマにしてきたここ最近(といっても十数年経ったわけですが)の集大成。

「歌集にまとまったおかげで、後期穂村さんの歌がこれで読みやすく、批評しやすくな

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閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

※2015年4月26日のブログ記事を移転しました

千種創一さん主催「青空勉強会」の第4回、与謝野晶子『みだれ髪』の後半戦が4月25日に行われた。
前回の僕の感想はこちら。
最近ブログ更新にかけられる時間が限られているので、ごく簡単に今日の感想をまとめる。

発表担当は、結社「塔」、同人誌「穀物」の濱松哲朗さん。
「頻出する韻やリフレイン、それに基づく調べは、長唄などの近世日本文学由来のものでは

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