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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.96 期待通りに行動しない原因は何か?

企業の成功は、そのリーダーシップに大きく依存します。特に、ナンバー2をはじめとする役員たちの行動と判断は会社の方向性を大きく左右します。しかし、「役員が期待通りに行動しない」という悩みを抱える経営者も少なくありません。この問題の根本には、多くの場合、「役割と期待を明確に伝えていない」というシンプルな原因が存在します。

役割と期待の明確化がもたらす効果

①目標の共有による結束力強化
②責任所在の明確化
③モチベーション維持

①目標の共有による結束力強化
役員に対する期待や役割が明確でない場合、彼らは自分なりの解釈で行動することになります。これは時に企業の理念や目標とずれた行動を招くことがあります。しかし、具体的な役割と期待を明示することで、同じ方向を目指しやすくなります。

逆に言えば、経営者に確固たる企業理念がなく、それを言語化もしておらず、短期はもちろん中長期的な目標を掲げていなければ共有するものがないので、場当たり的に注意や指導を繰り返したところでいつまでも期待通りに行動することはありません。

経営者にありがちですが、「言わなくてもわかるだろう」という考えを捨て、自分の頭の中を開示することが大切です。

②責任所在の明確化
誰が何をすべきかが不明確だと、責任の所在も曖昧になります。その状態を放置し続けると、誰も責任を取らない結果に繋がります。役割を明確にすることで責任の所在もはっきりし、問題が発生した際の対応も迅速かつ効果的になります。

そして、責任の所在だけではなく、責任を果たすための権限、決裁権の範囲を定めることも重要です。責任だけ負わせて何らの権限も持たせないのでは手足を縛りあげたうえで成果を出せと言っているようなものです。

モチベーション維持
役員は自分の役割が明確であり、その期待が理解できている時にこそ、最も効果的に働くことができます。彼らに何を求められているかを知らせることで、自己の貢献度を理解し、モチベーションが向上し、それを維持することができるようになります。

あわせて経営者が意識しておくべきことは、成果に見合った対価を必ず与えることです。役員といえども、サラリーマンです。働きに応じた対価もなく経営者に仕えたり、組織運営の難題に取り組もうという意識を持つことはまずありません。彼らにも生活やキャリアといった将来設計がありますから経営者が役員に期待を抱くように、彼らも経営者に対して期待を抱いていることを忘れてはいけません。また、お金の問題だけでなく、感謝や尊重を示すことも大事なポイントです。

具体的なステップ

それでは役割と期待の明確化がもたらす効果を理解したうえで、具体的なステップを確認してみましょう。

①コミュニケーションの強化
②目標と評価基準の設定
③フィードバックの提供
④環境整備とサポート

①コミュニケーションの強化
まずは定期的なコミュニケーションを通じて、役員との間に情報と意識の共有を図ることが重要です。個別のミーティングを設定し、それぞれの役割と期待について具体的に話し合う場が必要です。

その場では役割、期待を果たしてもらうために事業推進のうえで必要な情報も開示します。中小企業の経営者によくあることですが、儲かっている時は何も言わないけれど、業績が悪化している時だけ赤字だ、大変だと騒ぎだす経営者が少なくありません。

事業推進する立場であれば、売上、利益、決算内容、コストなどの実態を把握する必要があります。それらを何ら開示せずにただ目先の売上目標だけを示すような経営者がいますが、秘密主義の経営者の元で有能な人材が育つはずもありません。

また、情報以上に重要なのは事業や個々の事案に対する経営者の考え方、意識の共有です。経営者の方針がわからなければ動きようもありませんし、常に不毛な答え合わせをしなければならなくなり、お互いにストレスを感じます。

基本的に経営者と役員との間には一定の透明性を確保しなければ経営者の考えていることがわからず、適切な行動に導くことはできません。

②目標と評価基準の設定
モチベーション維持の項でも述べましたが、彼らに対する具体的な目標と、それを達成するための評価基準を設定します。これにより、自分たちは何を達成すべきか、どのように評価されるかが明確になります。

もしそこで示される目標や評価の基準が納得できないようであれば自社の役員として相応しくないことも明確になりますし、目標達成に対して消極的であれば過度な期待を抱かないで済むようになります。

フィードバックの提供
定期的なフィードバックを通じて、役員が期待通りに行動しているかを確認します。丸投げ、マイクロマネジメントいずれも不適切です。定期のスパンは経営者によって異なるでしょうから、日々進捗を確認する、毎週行うなどお互いに負担にならないような定期報告のルールを決める必要があります。

「役員ならこれくらいやって当たり前」という気持ちが経営者にはあるかもしれませんが、所詮は人間の営みです。良かった点は称賛し、改善が必要な点については建設的なアドバイスを提供することが大切です。ダメ出ししかしないようであれば部下である役員も辟易し、経営者に対して心服や忠誠心を抱くことは難しくなります。

④環境整備とサポート
役員が役割と責任を果たすうえで、彼らが仕事をしやすい環境を整える必要があります。彼らが部下に指示命令をしている傍から経営者が頭越しに現場に指示を出すようなことがあれば、命令指示系統が乱れるだけでなく、部下の役員に対する信頼も揺らぐことになり、統制が取れなくなります。

また役員が困難に直面した場合には、柔軟な対応とサポートを提供することも重要です。試練だと思い、経営者が高みの見物を決め込むようではやらされ感を生み出すことに繋がります。彼らが安心して役割を全うできる環境を整えることが、期待通りの行動を引き出す鍵となります。

期待通りに行動しない原因のほとんどは経営者側にある

役員が期待通りに行動してくれないと感じるとき、その原因の多くは経営者が本人に「役割と期待を伝えていない」ことにあります。明確な役割と具体的な期待を設定し、それをしっかりと伝えることで、役員たちの行動は大きく改善されます。

では期待通りに行動してもらうために考えを改め、対策を講じたにもかかわらず、依然として期待通りに行動してくれない場合、以下のような追加の検討が必要です。

①スキルと能力の再評価
②モチベーションとエンゲージメントの確認
③コミュニケーションの質の改善
④役割の再定義と再配置
⑤人事異動や退職

①スキルと能力の再評価

役員が期待通りに行動しない原因の一つとして、必要なスキルや能力が不足している可能性があるのでつぎの点を再評価する必要があります。

●スキルのギャップ分析
役員に求められるスキルと、実際のスキルセットを比較し、ギャップが存在するかを確認する。

教育、トレーニングの提供
必要なスキルや知識を身につけるために研修受講させたりメンターをつける。

②モチベーションとエンゲージメントの確認

役員のモチベーションやエンゲージメントが低下していると、期待通りの行動が難しくなりますので、つぎの点を確認しましょう。

●モチベーションの要因
役員本人が何に対してモチベーションを感じているか、または感じていないかを把握しましょう。経営者に対する不信感、経営理念の形骸化、事業の将来性、仕事へのやりがいなど人によりモチベーションを感じることは異なります。もちろん金銭報酬の場合もありますからその際は評価制度の見直しも必要かもしれません。

●エンゲージメント向上
役員が企業の理念や目標に共感し、積極的に関与できるような環境を整える。理念がないのは論外ですが、あっても形骸化していたり、経営者が理念と異なる言動を繰り返しているようでは共感すべき対象がないことになりますのでその際にエンゲージメントを高めることは困難となります。

3. コミュニケーションの質の改善

コミュニケーションが不足している、または誤解が生じている場合、期待通りの行動は難しくなりますのでつぎの点を検討します。

●定期的なフィードバック
定期的なフィードバックを提供し、期待される行動についての理解を深めさせる機会を増やします。期待とのズレを修正しない限り、いくら仕事の経験を積ませ、知識を増やしても期待外れであり続けます。

オープンな対話
役員とのオープンな対話を促進し、彼らの意見や懸念を聞く機会を増やします。ミーティングや日常の会話で経営者ばかりが話している場合がありますが、情報の非対称性があったり、価値観の押しつけがあるようだと彼らは意欲を低下させます。

4. 役割の再定義と再配置

役員が現在の役割に適していない可能性があります。その場合、役割の再定義や再配置を検討します。

●役割の見直し
役員の強みや弱みを考慮し、役割を再定義します。よくある事例としては、創業メンバーだからという理由で役員にしている場合で、会社のステージが変わり役割も変わっているにも関わらず、そうした話をきちんとすることなく、「言わなくてもわかるだろう」で済ませているケースです。本人の自覚や気づきに期待しても仕方がないので話し合う必要があります。

再配置の検討
適性に応じて役員を他のポジションに配置することも考慮します。同様に創業メンバーの事例で話すと、変化した役割に対してその適性が不足している場合があります。学び直しをさせる、サポート役をつけるなどの対応を検討し、新たな役割に適性がなければポジションを見直すことが会社にとっても本人にとっても幸せです。

5. 最終手段として人事異動や退職

これまでの対応策を講じてもなお、役員が期待通りに行動しない場合、最終的には人事異動や退職まで視野に入れる必要があります。

●人事異動、降格
再配置で述べたように、他のポジションに異動させ、適切な役割を見つけ、活躍する機会を作ることが互いにとって幸せです。降格処分の判断も難しいことですが、役割を果たせない人材をそのまま高位のポジションに据えておくことは会社の成長を阻害する結果となります。

退職の検討
在籍が長く、経営者の方針と異なる考えで仕事をしている役員がいます。自分の考え、やり方の方が正しいと思い、経営者の批判をしたり、派閥を作るなど役員が企業の目標達成に大きな障害となっている場合、弁護士等の専門家を交えて退職を含めた対応策を検討することが現実的です。

売上の多くを当該人物が担っていて、強く言えないという経営者もいるかもしれませんが多くの場合、会社のオーナーは経営者です。自分の掲げる方針に従えない人材は長い目で見て必ず成長のブレーキとなります。

まとめ

役員が期待通りに行動しない原因の多くは経営者側に問題があるのが現実です。「ウチの役員は・・・」という話はよく聞きますが、経営理念や目標、役割など根本的なものが全て曖昧であれば抱く期待もまた曖昧なものになるのに愚痴や不満を漏らし、本人の自発的な気づきに期待しても何の前進もしません。

無能で信用できない人材を役員に選んではいないでしょうからポテンシャルはあるはずです。

もちろん本人の価値観やスキルや能力などに課題がある場合もありますが、積極的に施策を考え、行動するべきは経営者です。本稿をチェックリストに見立てて、出来ていること、出来ていないことを再確認してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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