涙は汚いものだから よく泣く君が そのうちに 透き通ってしまいそうで 怖い
目を背ければ青空が見える 耳をすませば木々がざわめく 僕は道の真ん中にひとり 突っ立っている 道の先からやってきて そろそろ視界を埋め尽くす 蛾の大群にも似た暗闇に …
冬の朝日を待ちながら 横断歩道を渡る時 車のライトで影になる ぼくは半透明になりたい だけど ひとり未満になれない 冷たい風に身震いしながら ポケットに手を突っ込んで …
暗闇の一本道の ところどころの街灯を くぐるとスポットライトめく その一瞬の嬉しさを 影が幾つか追い越して 遠くに見える街灯へ 暗闇をまた歩き出す 命の限り足は止まら…
冬が来て 枯れ木は火花の形に凍る 静かな雪が川に溶け込み あたたかなものはよりあたたかく 凍えるものがそれを見つめる
誰かの懐かしさになりたい 記憶の町の一角の 風そよぐ路地裏 遠くに鳴る風鈴 五時のチャイムと 砂っぽい夕焼け 置き捨てられた雑誌 タイヤ型のブランコ それらに溶け込んで…
十七歳の夜 かつて夢の中の空 平泳ぎで飛んでいた 小さな少年が 月の軌道を ちょうどいま 乗り越えてゆく
泣けない僕と 泣かない君は たまらぬ僕と こらえる君で 心に管を直接刺して じょうごみたいに でかく開けば せめて偽物 雨の物まね そんな涙を 流せるだろう そんな涙を 見…
空っぽの僕の心に ウーファーの 低音が打ちつける アイドルが歌って踊る その足元で鳴っている 飾りにもなれない僕は せめて共鳴すればいいのに 胸に空気を溜め込んで じっ…
令和に未だ物々交換 公に売買されず ネット上に偽物が出回る 生まれてすぐにどっぷり漬かる 依存者だらけの精神スラム 抜け出せず 不安によく効く やめられず より満たされ…
理不尽だ、と怒る 僕も理不尽になりかねない、と、 考えなきゃいけないことが理不尽で 理不尽に怒りを感じるか、なんて よく分からなくて その曖昧な響きが怖くて 理不尽と…
光になりきれなかった 新幹線で 帰ろう 僕を待つ人のいない街へ 一路 東京へ
剥き出しの腕に 息吹きかけて 秋がきた 目の前の サラリーマンや 学生や 信号待ちの全員を ぞくりと撫でる 秋がきた この街の 無防備な場所を 平等に吹き抜ける 秋
すりむきましたら 風が鮮やか 脈打つ血の管 騒ぐ夕空 すりむきましたら 染み出す涙 ゆらぐ草むら 呼ぶ声がする 弾き語るように 思い出す 幻のような あの街のこと 流れ…
今日 洗濯がスムーズにできた それだけで 心は浮き立つ 取るに足らない、と 誰かが取りこぼした しあわせは ぼくが拾えば 輝きを取り戻す 君にとっての「大切」は ぼくに…
やさしさを知る人は 痛みを分かる人だから 受けた痛みを忘れぬように 傷を何度も引っかき回す 痛みが僕をやさしくするから 傷をえぐった痛みが嬉しい それで そうして 本当…
魚群探知機
2023年1月22日 14:31
涙は汚いものだからよく泣く君がそのうちに透き通ってしまいそうで怖い
2022年12月22日 20:58
目を背ければ青空が見える耳をすませば木々がざわめく僕は道の真ん中にひとり突っ立っている道の先からやってきてそろそろ視界を埋め尽くす蛾の大群にも似た暗闇に自ら近づく勇気もなく立ち尽くしている球形に蠢いている暗闇にいつか全身が覆われる逃げようにも逃げられず針で刺され続ける痛みばかりが本物の未来だ
2022年12月9日 06:58
冬の朝日を待ちながら横断歩道を渡る時車のライトで影になるぼくは半透明になりたいだけどひとり未満になれない冷たい風に身震いしながらポケットに手を突っ込んで少しだけ背を丸めながらふたり以上にもなれないぼくはひとりとしてしか生きられないのだだからひとりとしてひとりらしく生きるのだ輪郭が光り出すくらいくっきりとひとりになるのだそうして初めてぼくは冬を好きになれる
2022年11月30日 18:33
暗闇の一本道のところどころの街灯をくぐるとスポットライトめくその一瞬の嬉しさを影が幾つか追い越して遠くに見える街灯へ暗闇をまた歩き出す命の限り足は止まらず朝日を待てど夜は明けない街灯に騙される暗がりの人生を歩き続ける歩き続ける
2022年11月23日 05:06
冬が来て枯れ木は火花の形に凍る静かな雪が川に溶け込みあたたかなものはよりあたたかく凍えるものがそれを見つめる
2022年11月15日 18:20
誰かの懐かしさになりたい記憶の町の一角の風そよぐ路地裏遠くに鳴る風鈴五時のチャイムと砂っぽい夕焼け置き捨てられた雑誌タイヤ型のブランコそれらに溶け込んでこめかみの内側をむんむんと蒸している帰れない帰りたい懐かしい風景になりたい
2022年11月8日 23:39
十七歳の夜かつて夢の中の空平泳ぎで飛んでいた小さな少年が月の軌道をちょうどいま乗り越えてゆく
2022年11月1日 23:25
泣けない僕と泣かない君はたまらぬ僕とこらえる君で心に管を直接刺してじょうごみたいにでかく開けばせめて偽物雨の物まねそんな涙を流せるだろうそんな涙を見せびらかすよ
2022年10月25日 19:16
空っぽの僕の心にウーファーの低音が打ちつけるアイドルが歌って踊るその足元で鳴っている飾りにもなれない僕はせめて共鳴すればいいのに胸に空気を溜め込んでじっとただ眺めている淡白は魅力ではなく味なし、と嘲笑うフリして慰めながらふざけた音が僕には似合う精神の背が低いから足元に鎖繋いで重低音は頭上を越えた
2022年10月18日 03:32
令和に未だ物々交換公に売買されずネット上に偽物が出回る生まれてすぐにどっぷり漬かる依存者だらけの精神スラム抜け出せず不安によく効くやめられずより満たされにくく孤独なほどに君も欲しがる我を忘れてみんなトリップ「ありがとう」という名の麻薬
2022年10月11日 01:02
理不尽だ、と怒る僕も理不尽になりかねない、と、考えなきゃいけないことが理不尽で理不尽に怒りを感じるか、なんてよく分からなくてその曖昧な響きが怖くて理不尽という言葉が一番理不尽だ、とか何とか考える理不尽な社会の僕は
2022年10月5日 02:00
光になりきれなかった新幹線で帰ろう僕を待つ人のいない街へ一路東京へ
2022年9月27日 02:31
剥き出しの腕に息吹きかけて秋がきた目の前のサラリーマンや学生や信号待ちの全員をぞくりと撫でる秋がきたこの街の無防備な場所を平等に吹き抜ける秋
2022年9月20日 01:05
すりむきましたら風が鮮やか脈打つ血の管騒ぐ夕空すりむきましたら染み出す涙ゆらぐ草むら呼ぶ声がする弾き語るように思い出す幻のようなあの街のこと流れ流れてひとりのぼくが傷つくたびに懐かしむ場所今はもう呼ばない名前呼びたくなります泣き止みましたら空は紺色土手吹き抜けて風と帰ろうすりむきましたらそこはふるさと街灯くぐり家に帰ろう
2022年9月13日 17:41
今日洗濯がスムーズにできたそれだけで心は浮き立つ取るに足らない、と誰かが取りこぼしたしあわせはぼくが拾えば輝きを取り戻す君にとっての「大切」はぼくには取るに足らなくてぼくにとっての「大切」は君には取るに足らなくてそうしてしあわせはひとつ残らず拾われて一度なくせば長い戦い
2022年9月6日 02:13
やさしさを知る人は痛みを分かる人だから受けた痛みを忘れぬように傷を何度も引っかき回す痛みが僕をやさしくするから傷をえぐった痛みが嬉しいそれでそうして本当に優しい人がそのうちに僕を助けてくれますように