ぐん税ニュースレター vol.48 page02 -ヨーロッパ紀行 Part 1-
3月17日
パリに来て3日経ちました。
今回感じたことをまとめてみます。
パリはきれいになりました。道のゴミが以前より格段に少なくなっていますし、ビルとビルの間の狭い路地も昔は排気ガスで空気が非常に悪かったのですが、排ガス規制や電気自動車の普及のおかげか空気が良くなりました。
僕が若い頃パリに住んでいた時に行った様々な場所もとてもきれいになりました。その頃は社会党のミッテラン政権でして、労働者優遇政策が多く取り入れられていました。その頃、街の掃除をする人たちは、アフリカの黒人たちが多かったのですが、今はいわゆる白人のフランス人が掃除人として雇われております。掃除業者へ対する給料が高くなったのかなと思います。
次に驚いたのは付加価値税です。僕が住んでいた1990年代は付加価値税は33.3%のAV製品や高級品及び自動車などにかけられる重税率と、18.6%の標準税率、それに5.5%の食料品等の生活必需品に適用される軽減税率の3つでした。今はEUの指令に合わせ、重税率は廃止され、標準税率20%と軽減税率10%と5.5%と2.1%になりました。
特にレストランについては、テイクアウトは5.5%で、店内で食べると18.6%ということで、マクドナルドで店員がどっちにしますかと聞くような時代でした。日本は今でもテイクアウトかイートインか聞かれますよね。
ところがバーガーキングの店内で食事をしても税率は10%でした。標準税率が20%だからその半分の10%になったのか思ったらレストランでの食事が10%の軽減税率適用になったようです。一方で、テイクアウトは食料品の5.5%が課税されていましたが、すぐに食べられるように調理されているものについては10%の対象になるようです。そのため、テイクアウトもイートインでも同じ税率です。
また、車に対しては非常な高額な税金がかけられています。特にEVをヨーロッパは推進していますので、フランスではEV車を購入すると5000ユーロの補助金が出るそうです。また逆にガソリン車には車体価格と同じ位の税金がかかっているそうです。ちなみにBMWに乗っていた個人タクシーの運転手に聞くところではガソリン車だと60,000ユーロの車体稼働に60,000ユーロの税金がかかるそうです。つまり購入対価は2倍になりますね。だから本人はハイブリット車を買ったそうです。ハイブリット車だとガソリン車よりは税金安くなるそうです。一方でガソリンの値段は1リットル2ユーロでとんでもなく高い。タクシーやっていると2日か3日で80ユーロ(約1万2800円)なくなっちゃうそうです。タンクはハイブリッド車なので40リットルしか入らないので航続距離が500キロ位でしょう。これではタクシー営業は大変ですね。
こういうことなので、政府のEV推進政策は国民には不興です。タクシーの運転手曰く、EVが環境に良いなんていうのは真っ赤な嘘だと知っていました。特にバッテリーが重くその分だけ燃費が悪くなると言っていました。
また、パリ市内には、ディーゼル車はもう入れないそうです。なるほど、パリ市内のバスもハイブリットや電気自動車ばかりでした。これも空気が良い理由の1つでしょうね。
環境政策で言えばスーパーでレジ袋を配らなくなりました。そのため、みんな商品をそのまま手で持って帰るか、自分で袋を用意するかしています。バーガーキングでも変な感触なんですが、飲み物が使い捨ての紙コップでなく透明なプラスチックのコップになっていて、なおかつストローもないので、直接コップから飲むような形になっていました。回収する時はプラスチックのコップだけは他の回収箱に入れて残りはゴミ箱に入れる形になっています。
パリ5区のホテルに泊まったのですが、周りはカルチェラタンやサンジェルマンデプレなど左派のインテリがたくさんいるところです。ここで最初の日にデモといっても、100人ぐらいの学生のデモですが、イスラエル反対パレスチナ保護を訴えていました。確かフランスはイスラエルを支持していたと思いますけれども、その晩のテレビでもマクロン大統領が一生懸命何か弁護をしていました。
また次の日ですが、テレビでウォーキズムということについて議論をしていました。ウォーキズムと言うのは日本で耳慣れない言葉ですが、最近アメリカから始まり、ヨーロッパでも広まっている思想のことです。ウォーク(woke)というのはウェイク(wake)の過去分詞であり目覚めたということです。何に目覚めたかというとある人が他の人を差別しているとか、自分たちは社会に悪いことをしていると言うことについて常に覚醒しているということです。わかりやすい例はLGBTQの話です。同性愛者を差別しているとこれは悪いことだとだから、LGBTQについては特別な配慮が必要だということです。差別についても同じです。黒人を差別することが無意識に行われているので、意識的に黒人を差別しない。もっと言うと優遇すべきだという考え方です。差別されてない人たちは、もっとそのことを常に意識して原罪を背負って生きていかなければならないという主張になります。思想的には最近のブラック・ライブズ・マターから始まったということになっていますが、極左翼と言っても良いでしょう。リベラルでは、解決できなかった社会問題を力づくで解決しようと言うラディカルな考え方です。環境問題についても同様で温暖化によって地球が壊れてしまうと主張し、その原因となるCO2を削減していくことが1番重要で、そのためにはガソリン車を廃止してEVを阻止する。プラスチックは使わずに紙を使う。そういった過激な思想が生まれています。
今回、歳をとってパリに戻ってくると日本では、国民の社会思想が全然違うなと言うことを感じます。基本的にヨーロッパというのは支配階級と被支配階級の闘争で歴史が成り立っていると感じます。古くはフランス革命ですね。王政派と共和派が争い、革命が起きたのですが、結局は支配階級が王族から下級貴族に移っただけでした。その後、ナポレオンによる独裁があったり共和制に戻ったり左と右を行ったり来たりしています。その後は共産主義ですね。これは資本家と労働者の対立ということでマルクスが理論化したものですが、結局これも労働者が支配階級になるのではなく、エリートである共産党幹部の一党独裁になっただけです。意気込みは良いのですが、結果が必ずしも良い方向に行っていません。
そもそもヨーロッパがこれほどまでに環境問題に力を入れるようになったのは、1990年にソビエトが解体され、国連はこれまで冷戦を維持しようと努力してきたわけですが、相手方が倒れてしまったため、目標を失ってしまったと言うことにあります。そこで地球温暖化が問題だと叫ぶことで国連職員が大量に失業するのが防がれたと言う説もあります。つまり、あらたな敵を見つけることで、失業を免れたということです。
しかし、CO2と地球温暖化の関係は未だに解明されておらず、科学者の大部分はこれを否定しています。にもかかわらず、CO2削減にこれほどまでに力を注ぐのは狂っているとしか思えません。もちろんその中には反進歩主義思想があるためではないでしょうか?産業革命の時にラッダイト運動とか反産業化の運動がイギリスを始め、ヨーロッパのあちこちでありました。どの時代にも変化を嫌がる人たちがいて、反対運動をやるのです。その人たちにとっては、今のような高度な資本主義で金持ちがさらに金持ちになって、貧乏人が増えてく今の世の中は許せないのでしょう。だからといって産業を否定しても、結局は貧乏人がさらに増えるだけなのですが、この人たちには理解できません。人類の将来は学技術産業の進歩にあると私は信じておりますが、この人たちは原始時代に戻れば平和で豊かな生活が送れると信じているようです。
同じような事はシャンパンソーシャリストのことを考えればすぐにわかります。シャンパンソーシャリストというのは、シャンパンを飲むほどお金持ちでありながら、世の中にはどうしてこんなに貧困な人たちがいるのかしら、その人たちがかわいそうだから色々な募金活動やら社会福祉活動をしましょうよ、という人たちのことです。自分たちは労働者を雇用して豊かになっているのに気づいていないというお馬鹿さんですね。
僕は基本的に保守本流でありたいと思っているので、このような左翼のよく言えばリベラル、悪く言えば超過激派の思想には同意できません。
3月18日
フランスは変わりました。ラデュレ(マカロンの有名なお菓子屋)がたくさんできました。ポール(高級パン屋)もたくさんできました。ブーランジェリー(パン屋)がカフェみたいになって食事を提供するようなスタイルになりました。
感じたのですが、フランスでは三色旗をいたるところで見ます。公共の建物には必ずフランス国旗が掲げられており、役所、学校、病院、警察等の公共の建物には必ず三色旗がついています。
フランス人は権力に反発しながらも、国を大好きで国旗を大切にします。この辺はアメリカ人に似ていると思います。国旗を粗末に扱っているのは日本ぐらいですね。
街の中がきれいになった証拠として犬のうんちが道路に落ちてないっていうのがあります。1度だけうんちの大きいのを目撃しましたけども他にはありませんでした。以前はパリで街を歩くときは犬のうんちを踏まないように気をつけたものです。今は下を見てなくても犬のうんちを踏む事はありません。
3月21日
今日は3月21日木曜日です。午後のフライトでマドリードからポルトに行きます。これまで17日から21日までマドリッドで滞在した感想をここでまとめときます。
思い返すと1986年の7月にマドリッドに2週間滞在したことがあります。その当時は先輩のアパート(それも高級住宅街の高級アパートでしたが)に泊めてもらい、1週間は自分で、4日間はパンプローナ・バルセロナに車で連れて行ってもらいました。
そんなわけでマドリッドは1週間滞在したわけですが、当時の印象としては、スペインは物価が安く、貧しいけども、みんなが明るくて元気にしていると言う印象でした。物価的には日本の半額ぐらいだったかなぁと言う気がします。今から37年前ですね。
ところが今のマドリッドは東京にも物価が高いです。大体2割位高いと言う印象ですよね。
三菱UFJの支店長さんが話すところによると、賃金水準は最低賃金が時給1600円位で日本より2割ぐらい高いそうです。給与水準も2割ぐらい高いと。ただ物価は2割から3割高いので、まぁ生活水準としては同じ位かなと言う風な感じでした。
前回来た時は、バブル真っ最中の日本でしたので、円も強く、当時のペセタは弱い通貨でした。しかしながら、現在のスペインはユーロ圏ですので、ユーロに支えられ、物価も高く賃金も高くと言う状況です。
日本は37年間もの間、何やってきたのかなあという風なことを考えて悲しくなりました。
また、現在の低金利政策及び円安政策がほんとに正しいのかと思います。やはり円安を喜ぶのは輸出企業だけで、一般消費者は円高になると物価が安くなるので、その方が望ましいはずなのですが、新聞とか政府の言うことを見ると円安で経済が良くなると言うことばっかり言っています。しかし日本はもう輸入依存度は低く内需経済となっているので、円高にして輸入物価を下げた方が、一般国民の生活レベルは上がると思います。早く政府もそちらの方向にカジを切って欲しいものです。
スペインの印象ですが、まだマドリッドしか知らないので、マドリッドの印象になりますけれども、マドリッドは大きな建物、歴史的な建物が多くやはり豊かな国だなぁと言う印象があります。すべて石造りの天井の高い大きな建物ですので、特にプラド美術館の辺りのプラド通りですが、あの辺りはほんとに豪華な建物がたくさん並べ立っていて見ごたえがあります。
37年前のマドリッドと今のマドリッドと何が違うかと考えてみましたが、当時の街並みはほとんど覚えていないのでよく分かりません。1つ言える事は私が歳をとったということでしょう。当時まだ22歳の僕にとってはプラド美術館に行っていろいろな絵を見たり、特にゲルニカの絵を見たときには大変感動しました。言葉が出ないと言うのはこのことだと思って非常に感激というかショックでした。しかし今回プラドに行ってもゲルニカを見てもですね、当時のような感動はありません。むしろプラドなどはルーブルのほうが凄いじゃん、なんて思ってしまいました。年をとって感受性がかなり落ちてきているということじゃないかなと思っています。
ヨーロッパに来てもう1週間以上になり少し疲れが出てきました。ホテル住まいにも慣れてきたというよりは、あまりゆっくりできないなぁと疲れを感じるようになってきました。早く日本に帰ってゆっくりしたいなぁと思う自分がいて、これも歳をとったのかなあと感じています。22歳の僕はヨーロッパのどこ行っても興味津々でワクワクして、ホテルに帰るとぐっすり眠れるという体力がありました。新しいものやワクワクするものが大好きな好奇心旺盛な性格ですので、そういう旅行はお金がなくても充分楽しいものでした。
今は贅沢なホテルに泊まることもでき、お金を出して飛行機や特急列車に乗れることもできますが、若い時と同じようなワクワク感などの感動はありません。それと同時に仕事のことを常に考えてしまっている自分がいます。今回あえて旅行期間を3週間にしたのは仕事を忘れてヨーロッパ旅行をすることで、何か新しい気づきや感動があればいいなと思ったからなのですが、こっちにいても仕事のことが気になり、また日本の楽な生活が恋しくなりホームシックになっています。
日本にいれば自分の部屋もあれば、食べ物も慣れたものばかりだし、レストランに行くにも情報を調べるのも簡単だし、電車に乗るにも車に乗るにも、道はよく知っているし、何も考えなくても生活ができます。こちらではそうはきません。すべて勝手も知らないような環境で生活しなければなりません。どんな食べ物が欲しいのか安いのか、またどこのレストランがいいのか悪いのか、動くにも駅から時刻表から切符の買い方まで全て調べないと生活ができません。もちろん旅行会社が手配するオプショナルツアーでも参加すればそういった煩わしさからは解放されるのですが、それではあまり意味がないと思ってなるべく1人で行動するようにしています。そうすると生活ってこんなに大変なんだなぁということが実感できます。また逆に今までルーティーンでやっていた生活を全て意識してやらなくちゃいけないということなので、自分を見直すチャンスにもなっているのかなと思います
日本での生活では仕事もルーティーンだし、生活もルーティーンということで、マンネリ化がこの5年間位はあった気がします。そこから外れることについて自分自身が抵抗感を示しているということについては、ある意味、今までの自分を見ると驚きでもあり、これまでチャレンジをしてきて、新しいものを求めてきた自分自身も老いてきたな、という風に感じる次第です。
ところで仕事の話といえば、常に僕は皆に変化を求めており、そのたびに従業員からの抵抗に遭ってきました。社員はルーティーンワークが大好きなので、新しいやり方をやることに相当抵抗します。日本人はこの失われた30年間の間に超保守的になってしまい冒険をすること=失敗と考えているようです。しかしながら、成功の限りはたくさんの失敗があるわけで、失敗をすればするほど成功の確率が上がるという言い方もできます。正確に言うと、挑戦の数だけ成功の確率が上がると言うことですね。
会計事務所においても、介護事業においても常に挑戦をし続けているわけですけれども、常に皆さんの抵抗に合うそういった生活をしてきて、僕は皆さんの嫌なことを強制しているのではないかと言う風な自己嫌悪に陥ることもしばしばです。僕自身はこの方法は成功する道だと信じて改革改善をするのですが、従業員はまた失敗すると思って今までのやり方を変えません。最後には強制するような形でやらせないとやってくれません。そうすると失敗したときにはこれ見たことかと従業員に言わされて、その後始末をさせられる。我々は大変なんだという風な視線を感じます。
しかし今回旅行に来てみて思うのは、挑戦し続けないと進歩がないと言うことですね。あのフランスでも日本より変化が大きく、いろんな試行錯誤をやっているような感じがしました。日本人にはもう少し変化が好きなメンタリティーを持って欲しいなと言う風に思いました。
マドリッドで感じたことの1つに若い人が多いなぁということがあります。フランスでも若い人たちが多い感じは日本よりはあるのですが、フランスよりもスペインの方が若い人が多いような気がしますね。それとスペイン人と日本人はちょっと似ています。スペインと言うと昼寝をしたり、仕事についてはルーズという印象がありますけれども、実はスペイン人は非常に真面目で保守的です。また人種差別もほとんどありません。フランスでは人種差別的な感じを少し受けるのですが、スペインでは全然感じません。タクシーに乗ってもボラれることもないですし、こちらの拙いスペイン語や英語を理解しようと頑張ってくれているのがよくわかります。
そういった意味でスペインと日本で将来プロジェクトができればいいなぁって思いました。スペインと日本の有効がますます発展するといいですね。
もう一つこちらで面白いなと思うのはレストランの開店がとても遅いということです。夜の20時開店と言うのは割と普通で20時から24時位まで営業しています。そんなに遅くって大丈夫かなぁと思いますけれども20時からそれもおしゃべりをしながら2、3時間かけて夕食を取ると言うのがスタイルみたいです。
3月23日
今日は3月23日土曜日です。
本当は今日はリスボンに行って2泊する予定でしたが、リスボンのホテルを予約したと思ったのがキャンセルになっていました。そのため、急遽ポルトさらに2泊追加することにして、旧市街の市庁の前にあるホテルに引っ越してきました。
さて、昨晩考えていたことですが、林修先生が孤独は寂しくないと言う風に言っていました。また友達は少ないほうがいいということも言っていました。その言おうとするところは孤独ということは自分が勉強する時間を確保すると言うことなので、頭の悪い人は、孤独を嫌って、他の人とつるみたがります。つまり友達と多いということは、あまり自分と共通の感覚を持ってない人に自分が合わせて無理に社交をやっていることになり、非常に時間の無駄だと言うことです。自分と考えが似たような人は、世の中にそんなにはいないので、そうすると友達は少なければ少ないほどそういった価値観にぴったり合う人が選ばれるということになります。
僕が同窓会とかに行くのが嫌いな理由は同じような理由です。過去のことをあの頃良かったとか、同じこんなことをやったというか、楽しかったなぁということを10回も20回も聞かされても全然進歩がありません。そういう過去にすがって、今の自分の努力を怠っているとしか僕には見えないので、あまり同窓会には行きたくありません。懐かしがるのは死ぬ前の1年位でいいのではと思っています。
若かった時は一人旅は全然気にならなかったのが、今では1人でいると非常に不安を感じるというか、疲れます。これは今まで人に囲まれて、人とお付き合いをすることで気を紛らわしていて、自分の時間をもって勉強する努力をしてこなかったということでもあると思います。これからは孤独を愛して、孤独の間に自己研鑽を一生懸命頑張りたいと思う次第でした。
まずはこの1人旅を自分で、一緒に楽しむ人がいなくても楽しむ。そういうことで孤独に強くなろうと言うふうに思っております。
ぐんま税理士法人
代表社員 小林 浩一