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怖くない小説の雑居房

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ホラー要素や残酷な展開がない小説たちの雑居房です。治安が良いです。
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2024年6月の記事一覧

【掌編小説】毎朝

【掌編小説】毎朝

 今朝、新聞配達を終えたばかりの空は、陽に向かって雲が斑に赤く、まるで向こうに眠らない別の街があるようだった。

 きっと、気付かなかっただけで昨夜から明るかったのだ。だから、眠らない街でいい。

 日曜日の早朝に歩くのは、年寄りばかりで、6月も半ばに差し掛かろうというのに皆が春先の装いをしている。朝の年寄りは年中厚着だ。

 遠くからトラックのエンジン音が聞こえて、姿を見せないまま音は去っていく

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【短編小説】マスオ

【短編小説】マスオ

 月曜日が、来る。
 成人式の記念品でもらってから6年間も働いてくれているデジタル目覚まし時計のライトを、私は叩いて点ける。窓の外に見える街の日曜日の夜よりもずっと暗い部屋に、たったひとつだけ灯る緑色の光。
 あと1時間13分4秒、3、2、1。
 あと1時間12分で、月曜日に曜日が変わる。
 そしたら、会社に行かなければならない。最寄りの駅まで自転車で向かって、満員電車に揉まれて乗り換えを2回して

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【掌編小説】インク商法

【掌編小説】インク商法

 僕はよく人に、髭が濃い、と言われる。そのせいで中学の頃は『コソ泥』、高校では『雑木林』とあだ名を付けられ馬鹿にされた。
 でも、社会人になって、毎朝髭を剃るようになってから気が付いた。
 僕は髭が濃いんじゃなくて、髭が太く硬くしぶといんだ。つまり、並大抵の髭剃りじゃ根本まで剃り切れず、髭が残ってしまう。無理に剃ろうとすると、負けてしまい、流血。もっと早くこの事実に気付けばよかった。だって、髭がこ

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