見出し画像

なぜあなたの会社はエンジニアが辞めてしまうのか?その⑦

はじめに

この記事はその①その②その③その④その⑤その⑥の続きのお話です。まだ読まれてない方は必ず先にその①その②その③その④その⑤その⑥を読んでから読んでみて下さい。

登場人物の紹介

その①でも紹介しましたが、今回は対話形式で書いてみたので、登場人物だけ紹介しておきます。3人登場します。(②話目以降はほぼ2人ですが…)

エンジニア:Eさん
Eさんの評価者:Sさん(非エンジニア)
Sさんの友人のエンジニアマネージャー:Mさん

簡単なあらすじ

Eさんやエンジニアから退職され、途方に暮れたSさんは、元同僚で今は別の会社でEM(エンジニアマネージャー)をやっているMさんと飲みに行って相談して、これまでの経緯を聞いてもらって、コミュニケーションを中心にいくつかアドバイスを貰ったのでした。詳しくはその①その②を読んで下さい。

Sさん:「実はさ・・・カクカク・シカジカ・・・何が駄目だったのかな・・・」

そのあとMさんからいくつか意見(その②その③を読んで下さい)を貰ったあと、その意見を元に実践してみたのですが、エンジニアの退職が止まらず、もう一度Mさんを誘って話を聞いてもらった(その④その⑤その⑥を読んで下さい)のでした。いろいろ聞いた上でまだあるとのことだったので、続きが気になります・・・

新しい挑戦ができる環境か 続き…

Sさん:「どういうことだい?」

意識のアウトソーシング?

Mさん:「どこかの記事では『意識のアウトソーシング』と表現していたんだけど、今、Sさんって、システムやエンジニアの重要性を理解していて、自分でもなんとかしたいからこういう相談してるわけだよね。
でも日本はまだまだ『ITは重要である』『これからはITの時代だ』と言いながら、結局『ITは難しくて分からないから、後は任せたよ!』と、部下やSIerに丸投げしてしまうリーダーや経営者が多いらしいんだ。」

https://data.wingarc.com/thinksier-saitomasanori-21967

Sさん:「うーん、丸投げしてたってのは俺も一緒かもしれないな・・・」

リーダーや経営者にITへの健全な期待や興味があるか

Mさん:「なんかいい例無いかな・・・あ、さっき事例にあげた、元営業の事業責任者でエンジニアのマネジメントをやっていたHさんという人紹介したでしょ?上手だった人。その人も、システムの事知らないんだけど、よくこういう質問をしてきたんだ。」

Hさん:『ねーねー、こういうことできない?やれるとビジネス的にこんなおいしいんだけど』
『半年後の繁忙期までに、こういうシステム作れない?うまくいけば売上倍になるかもなんだけど』
『この領域参入障壁が低そうだから、2ヶ月後に◯◯系のサービスをローンチしたい!』
『◯◯社が従業員500人に対して◯人で回してるらしいんだけど、うちのシステム自動化して半年以内に実現できないかな』
『このシステム年間◯百万円かかってるけどさ、内製してタダにできないかな』
『最近流行ってるこのサービス、うちのエンジニアでも同じようなもの作れる?』

Sさん:「うわ、なんか技術全く知らない感じだ。質問が雑いw なんかエンジニアの苦労を全く分からず無茶振りしてる感じするんだけど・・・これが『いい事』なの?」

Mさん:「確かに『いい事』になるかどうかは紙一重だね。もちろんSさんの言う通り、エンジニアの苦労を考えず、これを『ノルマ』にしたり『必達』にしたりすると、疲弊して辞めてく可能性もあるので『わるい事』になっちゃうかな。しかも作ったあとビジネス的にコケたりしたら尚更だね。
でも、その点Hさんはほんとに純粋な相談なだけで、現場が渋い顔すれば『じゃあ仕方ないか』になってくれたんだよね。質問だけはどんどん出てくるという感じ。さっきの『意識をアウトソーシング』するリーダーと違って、やりたい事がいつも主体的なんだよね。」

Sさん:「あ、ちょっと分かってきたぞ。リーダー側に期待や興味があるってことだな?
うーん、たしかに、Eさんの挑戦したい事はうちでも出来るけど、俺としては、やってほしいとまでは思ってなかったな・・・っていうか今も、それの何が嬉しいのかあまり想像しきれてないし。」

Mさん:「Sさんでさえそうなら、会社からなんて絶対に期待されてないんじゃない?であれば、Eさんはその挑戦をやったところで独りよがりになっちゃうよね。多分だけど、Eさんは転職先の面接官から『それをやって欲しい』と言われてる可能性が高いと思う。」

Sさん:「そういうことか・・・」

Mさん:「Hさんのような、質問がバンバン出てくる人というのは、基本的に『テクノロジーを使えばいけるんじゃないか』というテクノロジーへの期待が根本にあるんだよね。そしてそれを具体的に相談できるエンジニアの存在をすごくリスペクトしてくれている。つまり『技術』は分からないけど、『技術を使って何かしたい』という想いの強さというか、可能性を信じてくれてる感じかな。
『俺はよくわからんから、提案してきたら考えてあげるよ』というスタンスの人や会社とは全然違うんだよね。だからエンジニアはみんなHさんについていってたんじゃないかなと思うんだ。」

Sさん:「えー、それがどんな無茶な質問でも?」

Mさん:「逆に無茶な質問ほど技術的難易度も高そうだからワクワクするかも。『絶対やれ』って話になるなら別だけどね。
アグレッシブで優秀なエンジニアや、成長意欲が高いエンジニアほど、難易度の高いところに行きたがる傾向はあるかな。純粋に高度な要求を解決していく楽しさとやりがいがあるし、難易度の高い事をいつも求め続けてくれる会社にいれば自分のスキルや実績が上がっていく事が保証されるわけだし、その実績をネタにカンファレンスなどに登壇したり、記事を書いたりして、自分自身の市場価値も上げられるかもしれない。そういう文化な会社であれば、多少給料が低くても、継続的に所属しているだけでエンジニアとしての未来やスキルの向上に期待ができるし、会社が常に求めてくれるということは、その価値が分かってもらえる組織であり、正当な評価をしてもらえる可能性も高い。
まぁ、受け身的なエンジニアや、変化を嫌うエンジニアもいるのでそういう人は出ていくかもしれないけどね。」

提案しやすい文化の会社かどうか

Sさん:「言われてみるとそうだなって思うな。でも、それなら上から言われるまで待たずに、自分で考えてもいいんじゃないの?」

Mさん:「エンジニアも自分で考えたい人はほんとに多いよ。でも会社の文化として『考える事は俺たちがやるから、お前らは言われたものを作ってよ』という雰囲気が蔓延してる場合は意見出せないかなー。さっきの、どっちのベースが強いかという話にもつながるけど・・・提案してもいちいち説明求められるとかね。」

Sさん:「そうか、さっきの話だな・・・」

Mさん:「そうそう、で、逆の文化であれば、エンジニアも自分で考えて提案してくれる人が増えるから、まずはそこの文化を醸成するところからかな。
あと、アイディアの質というか、向き不向きの傾向として僕が見てきて感じるのは『顧客のためにプロダクトを良くしていこう』という観点はエンジニアが得意な気がするけど、やっぱり『マネタイズとかビジネスチャンス』みたいな嗅覚は、営業やマーケの方が優れてる人が多かった気はするね。もちろん絶対ではないけどさ。
で、そのあとの実現する力はエンジニアの真骨頂だね。良いアイディアがあって、それをどうやって実現するかの方がエンジニアの価値としては重要と考える人が多いし、できる人ほど、そういう自分の力を発揮させてくれるところに身を置きたいってわけさ。」

理想の関係性とは?活用力と実現力の2軸

Sさん:「そうなると、俺はどこを目指せばいいんだ?」

Mさん:「そうねー、ちょっと図にしてみよう。」

Mさん:「さっきのビジネスへのアイディア力やマネタイズみたいなのを『テクノロジーを活用する力』と定義して、エンジニアの具体的に実現する力を『テクノロジーで実現する力』と定義してみて、縦軸を活用力、横軸を実現力としてみようか。」

『テクノロジーを活用する力』と『テクノロジーで実現する力』

2軸で考えてみる

『テクノロジーで実現する力』に長けているエンジニア

Mさん:「で、エンジニアの大多数は実現する力が秀でてるけどビジネスへの活用やマネタイズはそこまで上手ではないと仮定してこの辺に置いてみる。たまに右上隅にいるようなすごい人もいるけど、一旦ね。」

多くのエンジニアの位置

『テクノロジーを活用する力』と実現の為の知識もそれなりに

Mさん:「で、Sさんが目指すべきは、あくまで僕が言うには、だけど、この辺じゃないかなー
今から実現するための知識を覚える必要はないと思うよ。大変すぎるので。でも、ビジネスに活用しようとかうまくマネタイズしようと思ったら、活用できるくらいのリテラシーや、実現するためにどれくらいの難易度があるか理解できるくらいの知識が無いと、アイディアも浮かばないし、期待もできないだろうし、エンジニアと話ができないから、これくらいかなと。
あと、これくらい知ってると、逆にエンジニアとの技術的な差も見えてるだろうから、健全にエンジニアを頼る事ができると思うんだ。
こういう関係性になれたら、最強だと思うよ。」

理想のSさん

Sさん:「なるほど!実現の方は全部理解しなくてもいいんだね、少し気は楽になるなー。まぁそっちはいいとして、テクノロジーをビジネスに活用するとか期待するところも別に強くはないんだよな・・・でもビジネス領域に近そうだから、まだ想像できるかも。って考えると今はこの辺かなー」

今のSさんは?

Mさん:「おいおい、それはさすがに自分を卑下しすぎだろw 僕とこういう話ができてる時点で、もう少しマシだと思うけどね。
活用する力は、日頃からITと接するといいよ。例えば積極的にいろんなITプロダクトを活用するとかね。何か出てきて、流行ったり、儲かってたりしたら、何が課題で、どういう技術やシステムで解決してるか、どんなマネタイズになってるかって考察をしてみる感じかな。まぁ僕も受け売りだけどね」

Sさん:「卑下っていうか、俺の性格上、これくらいで考えとかないと、使ったことない頭だから、すぐに『できてる』って勘違いしそうでさ。ちなみに、理想の逆のアンチパターンとかもまだあるんでしょ?教えてよ」

アンチパターン① 理解度の低い精神論トップダウン

Mさん:「アンチパターンね。うーん、まずはトップダウン型のリーダーかなー。エンジニア並みに実現方法を理解してる人が言ってくるならまだいいけど、実現の難易度関係なく『出来るよね、納期ここね』というトップダウンは困るよね。
実現までの差を理解する気すら無くて、精神論で言えばできると思ってるリーダーで、高圧的だったり、外注みたいに扱う感じだと最悪かな。そんなリーダーの元で働くことになったら、すぐ転職するか、強引にハリボテで作って『動いたからいいでしょ』と言いつつ転職するか、どっちかかなw
面接とかでたまに『このシステム導入を指揮しました』って自信満々で言う人がいるんだけど、よくよく聞いてみると、入れろと指示して入れさせただけで、システムやプロダクトの事を全然分かってなくてさ『あなたそれ自慢できるやつじゃないよ』と思いつつ面接落としたりするw 導入や新規構築より、継続や運用の方がよっぽど大変だし工数がかかることすら理解してないんだよね。こういう人を入れると現場に混乱を招くし危ないから必ず面接で落とすね。」

アンチパターン② 頼らない人(頼り方が分からない人)

Mさん:「あと、これはリーダーシップというより他職種とかでありがちなんだけど、『頼らない人』かな。難易度を全く知らないから、頼らなくても自分達でシステム導入とかをやれると思っちゃったり、システムを一回作ったら終わり、一回導入したら終わりと思っちゃうタイプだね。あとは、いつも忙しそうなエンジニアに遠慮して自分達でやろうとする遠慮型とかも同様かな。『足元の問題が解決したい』というのが切実で、その後のデータ連携とか、アラート対応とか、問い合わせ対応、要望対応、使い続けることで発生するいろいろなことの考慮が足りず、結局、おもりできなくなってエンジニアが大変になる、みたいな事がよくあるんだよね。差を理解するにも一定のリテラシーが必要ってことかな。
頼らないタイプの厄介なところは、本人達は『エンジニアに頼らず頑張った!導入できた!』みたいな変な自信になっちゃってて、指摘しにくいんだよね・・・
さっきエンジニア比率のところで紹介した、一人ひとりのITリテラシーを上げる場合も、中途半端に上げた気になっちゃうとこうなるかなー・・・」

アンチパターン③ ITやテクノロジーに関心が薄い人

Mさん:「あとは、活用の仕方を知らないので、やる必要が見出だせないリーダーだね。困るというより、そういう組織の元で働くとあまり未来が見えないかな。慎重だったり、他のことで忙しかったり、変化が怖かったり、いろんなパターンがあると思うけど、提案しても『数字で出して』など、基本的に説明に時間がかかる事が多いのでなかなかチャレンジが出来ないんだよね。共通してるのは、テクノロジーに関心が薄い人達かな。
少し勉強するだけで、自分たちへのメリットを想像できるようになると思うんだけど・・・苦手意識もあるのかも。」

Sさん:「あー、ここが俺かなー」

アンチパターン④ ITへの意識をアウトソーシングする人

Mさん:「最後にさっき言った『意識をアウトソーシング』してるリーダーだね。『ITは重要である』『これからはITの時代だ』と言いながら、結局『ITは難しくて分からないから、後は任せたよ!』と、部下やSIerに丸投げしてしまうリーダー。こういうリーダーは、外注のように扱ってきがちだし、作ったものが微妙だと結局丸投げした先に責任を押し付けてきたりもする。システムを一回作ったら終わり、一回導入したら終わりと思っちゃう人も多いかな。システムを導入した実績が欲しいだけ、みたいな人もいるよね。結局何をしたいのかよく分からない事が多いので、あまりついていきたくないかな」

Sさん:「なるほど!困る人がわかると、理想も少しくっきりしてきたかも。つまり俺の目指すところは『テクノロジーを活用するプロになり、継続するサービスや、プロダクトの最低限の事や、差があることくらいは知識を付けておき、適切にエンジニアを頼る』ということだね」

その⑧に続く・・・


この記事が参加している募集

仕事について話そう

#創作大賞2024

書いてみる

締切:

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?