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なぜあなたの会社はエンジニアが辞めてしまうのか?その④

はじめに

この記事はその①その②その③の続きのお話です。まだ読まれてない方は必ず先にその①その②その③を読んでから読んでみて下さい。

登場人物の紹介

その①でも紹介しましたが、今回は対話形式で書いてみたので、登場人物だけ紹介しておきます。3人登場します。(その②以降はほぼ2人ですが…)

エンジニア:Eさん
Eさんの評価者:Sさん(非エンジニア)
Sさんの友人のエンジニアマネージャー:Mさん

簡単なあらすじ

Eさんやエンジニアから退職され、途方に暮れたSさんは、元同僚で今は別の会社でEM(エンジニアマネージャー)をやっているMさんと飲みに行って相談して、これまでの経緯を聞いてもらって、コミュニケーションを中心にいくつかアドバイスを貰ったのでした。詳しくはその①その②を読んで下さい。

Sさん:「実はさ・・・カクカク・シカジカ・・・何が駄目だったのかな・・・」

そのあとMさんからいくつか意見(その②その③を読んで下さい)を貰ったあと、その意見を元に実践してみたのでした。

退職エントリー!?

Sさん:Eさんがいなくなったあと、Mさんのアドバイスを自分なりに考えて、しっかりエンジニアの話を良く聞くことにしました。マーケや営業との間にもしっかり立って、できるだけエンジニア達が開発に集中できるように立ち回ってみたところ、今までとは全く違うレベルで信頼関係を結べてる実感がありました。
その甲斐もあって、中核だったEさんがいなくとも、なんとか残ったメンバーで頑張って開発速度を速めようとしてくれました。
ただ、Eさんの抜けた穴は予想以上に大きいことも分かってきました。今まではコードレビューを必ずEさんが行ってくれており、新人は知らないような仕様やコード、関連性などを的確に指摘してくれていたおかげで、不具合を未然に防ぐ事ができていたのですが、最終防衛ラインだったEさんのチェックが無い事でのリスクがだんだんと浮き彫りになってきました。
ついには不具合も増え、営業やマーケとの関係性も更に悪くなりました。Sさんも間に立って頑張りましたが溝は深まるばかりです。他のエンジニアも疲弊してきたのか、その後Eさんを追うように退職が相次ぎました。

Sさんは、経営側からはマネージメントの責任を問われてマイナス評価です。
分からないのはエンジニアの退職理由で、Eさんと同じく目立った不満がある人があまりいませんでした。多少の不満を言う人も中にはいたものの、それが退職の理由では無いと言っており、改善しようにも何が問題なのか全くわかりませんでした。
Sさん:「ほんとは不満があるんじゃないのか?あるなら言ってくれよ、分からないよ!」
と思いながらスマホで検索していると、エンジニアが書いてる「退職エントリー」なるものを見かけました。
そこにある不満が「うちの会社っぽいなー」とも感じたので、「これうちのエンジニアかな・・・」と思いましたが、社名が書いてなかったので、特定は出来ませんでした。うちの社名が載ってたら、採用でも余計うちに来てくれなくなるのではとゾッとします。また久々にMさんと飲みに行って聞いてみよう、と思いました。

またお願い!

他にもある特徴

早速質問です。
Sさん:「ちなみにさ、最近エンジニアの『退職エントリー』の記事をよく見かけるけど、なんで退職するのにああいうの残すんだろう。不思議だったんだよね」

Mさん:「あー、でもエンジニアじゃなくても結構書く人いるよね。確かにITエンジニアは書くことが多いかもしれないかな。なんでだろ。一つは元々オープンな文化ってのはあるかなー。エンジニアは会社に分かってくれる人がいなくても、その垣根を超えたところには分かってくれる人がいたりするからね。通常業務の中でも、ネット(を通したみんな)から助けてもらってばっかりだったりする。
技術で困ってもノウハウを記事にしてくれている人が多くて助けられたりするから、自分の経験した技術も無償で記事にしたくなって、その記事が感謝されたりもするんだ。そういうのもあって、基本的に『秘匿するのではなく、オープンにしてお互い助け合おう』の精神というか、文化がある気はするなぁ。
ソースコードもオープンソースばかりだし、オープンサラリーとかもみんな書き込むしね。」

Sさん:「オープンソースってあれでしょ、Linuxとかでしょ?確かうちのサーバーもそれだった気がする」

Mさん:「お、よく知ってるね。Linuxもそうだけど、言語でもRubyのようにOSSのものがあるね。あとフレームワークでも、バックエンドのLaravelやフロントエンドで有名なReactなどもそうだし、他にも結構あるんだよね。多分今のSさんの会社のシステムも多くのオープンソース(OSS)で成り立ってるんじゃないかな。今の売上利益を生み出しているシステムは、世界中の有志が作り育て、OSSの多くは無償で提供してくれているからこそ作れたもので、ひいてはSさんの給料にもなってるわけなので、ちゃんと感謝とかリスペクトした方がいいよw
少なくともOSSを利用して実際にシステムを作ってるエンジニアは、多かれ少なかれそういう気持ちを持ってるはずだから、具体的にOSSのコミュニティへの協賛とかをやっている会社は好印象に映るよね。」

Sさん:「そうか、そう言われると、何で作られてるか知らないし、どれくらい恩恵受けてるかも知らないし、どういうところに協賛すべきかも分からないな・・・とても理解がある会社とは言えないかも」

Mさん:「会社が理解してくれると、それだけでエンジニアのモチベーションは上がるし、採用にも効果的だから、是非やってみるといいよ。実際に、会社として協賛しているかどうかを採用の判断基準に入れているというエンジニアもたまに聞くからね。
まぁ、話を戻すと、それくらいオープンな文化であり、その文化や心へのリスペクトも高めなんだよね。優秀なプログラマーが無償でオープンにそういう行動をしてくれているからこそ、自分たちは実際に助かってるから、憧れるし、かっこいいと思う。そうすると自分も自然とオープンにしたくなるっていう作用も働くんだと思う。」

Sさん:「エンジニアの人はよく記事を書くなーとも思ってたけどそういう背景はありそうだね。なるほど、退職エントリーもその延長ってことかい?」

Mさん:「そんな気はするね、書きたいと思う動機は同じような気がする。『この経験が他のエンジニアの役に立つのかもしれない』って。
他にも『自分の考えを分かってくれる人がいるのかどうかを確かめたい』とかもあるかもしれないし、あわよくば『この記事を見て、元いた会社が改善されて、残った仲間がもっと仕事がしやすくなるといいな』という理由の人もいるかも。『口で言葉にするのは苦手だから文章にする』とか『元の会社が好きだからこそ書き残す』という人も多そうだね。」

Sさん:「なるほどねー・・・全然知らなかったなー・・・
そういう特徴を知らずに今までマネージメントしてきたのかと思うと、退職されても仕方ない気がしてきた💦」

Mさん:「まぁ、逆に俺たちは営業やマーケのことを知らないってのはあるし、知らなくて当たり前だよ。毎月数字に追われるプレッシャーとかは実際に体験しないとなかなか分からないしね。
それに、何度も言うように、逆側が理解するのはコストがかかるから、知らなくていい場合も多いと思う。企業にとって、別にエンジニアが必要なビジネスモデルでなければ、無理して理解する合理性が無かったりするからね。」

Sさん:「いや、うちはプロダクトの開発が止まったのは結構インパクトあったので、そういうわけには・・・」

Mさん:「であれば、コストを払ってでも違いや特徴を理解しにいった方がいいかもね。『他部署の人も全員理解しろ』とは言わないまでも、せめて評価するSさんくらいはね。
Sさんも理解しに行くのは大変だと思うどさ、それこそ人として、相手のことや価値観を知ろうとする、とか、お互いを認め合う、みたいな、友人や家族、夫婦で必要なそれと同じではあるからね。Sさんは今話してても理解しようとする姿勢が少なくとも僕には伝わってるから、頑張ってほしいな・・・。
僕はEMとしてエンジニアとビジネスサイドとの接点を担う事が多いから、Sさんとは逆で、自分の理解が薄いビジネスサイドの思考を理解しないといけないから、一緒だね。特別扱いしているというより、分からない事が多いからより意識して取りに行ってる感じかな。一緒に頑張ろうよ。
エンジニアの場合は他職種と文化のギャップが特に大きい気はするので、少し大変かもしれないけどね」

Sさん:「ううー、ここにきて『人として』が自分に返ってきたなー。指摘していた俺も出来てないんじゃないかって言いたいんだろ?Mさんこういうとこあるよな・・・」

Sさん:「まぁ、でも確かにその通りだとは思うし、自分も頑張ってまずは理解者になるところからやんなきゃだなー」

上手な会社や上手な人の事例

Mさん:「いやいや、ごめんごめん、僕も偉そうなこと言ってるけどさ、いろんな事例からの受け売りだったりするんだ。例えばNETFLIXのこの事例とかは結構好きなんだよね」

一時ネットフリックスはバッファリング時間(ビデオをクリックしてからスタートするまでの時間)の短縮に大苦戦していた。エンジニアにしか完全には理解できない、厄介きわまりない問題だ。
私たちはセールスとマーケティングの担当者に要請した。「あのくそいまいましいバッファリング問題をなんとかしてくれ!」とエンジニアにぶちまける代わりに、「なぜバッファリングにこんなに時間がかかるのか、わかるように説明してくれ」と聞いてほしい、そしてその質問は本心からぶつけてほしいと。
相手がとりくんでいる課題に心から関心をもってする質問は、理解の架け橋になる。技術系でない従業員は、この質問への答えを通して、エンジニアがどんなに手ごわい課題にとりくんでいたかを初めて知り、視野を大きく広げた。
こうした質問を投げかけるうちに、やがて社内に好奇心と敬意が育まれ、チームや部門の内外で有益な学習が行われるようになった。いい加減な噂や陰口のたぐいも減った。

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Sさん:「へー、ネットフリックスもセールスやマーケとエンジニアでいろいろあったのか・・・こんな有名なIT会社でも似たような事があるんだね。うちで起こるのも当たり前って思えて、少し勇気もらえるな。
そこからちゃんと克服してきてるなら、うちにもできるかな」

Mさん:「やってみるしかないねー。この『心から関心をもってする質問』のところが大事なんじゃないかな。実際には理解が難しくても、本心から理解しようとする姿勢が伝わるだけでかなり違うと思うんだよね」

Sさん:「確かに姿勢は伝わるもんなー・・・」

Mさん:「他の事例も紹介しとこうかな。
Sさんと同じく元営業の事業責任者でエンジニアのマネジメントをやっていたHさんという人がいてね、その人がすごく上手だったんだ。多分立場が同じで参考になるかもなので厚めに話そっか。」

その⑤に続く・・・


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