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『スターリー・ジャーニー 星を巡る世界一周の旅から得た人生のヒント』第1章・無料全文公開

8月12日発売の書籍『スターリー・ジャーニー 星を巡る世界一周の旅から得た人生のヒント』から、第1章「『皆既日食を見上げて』オーストラリア編」を全文公開!

01「皆既日食を見上げて」 オーストラリア

2012年11月14日。オーストラリアのケアンズでは「皆既日食」が起ころうとしていた。皆既日食とは、宇宙から見たときに地球と太陽のあいだに月が入り込み一直線になると、地球上では月が太陽に重なり完全に覆い隠してしまう現象のこと。そのため周囲が薄暗くなり気温も下がり、異世界のような空間になる。
日食は地球規模で見れば毎年のように起こっているものの、おいそれと見ることができない貴重な現象といえる。その理由は、皆既日食になる確率に加え、海外で起きたときは現地まで出ないと見られない、ということ。たとえば、南米で起こった場合は日本から距離が非常に遠くなるため、現地に行くまでに数日はかかってしまう。
さらに、地球は陸地よりも海の割合が高い。私たちが観測しやすいのは基本的に陸地だ。海の位置で起こった場合は、船がないとその場にとどまるのが難しい。
そのような環境でも見られるように旅行会社のツアーも用意されることもあるが、その分コストがかかってしまう。
これらのように、日食の仕組み、起こる確率、観測場所、その場所に行く時間・予算、などを掛け合わせていくと、私たちが実際に日食を体験するのは、非常に貴重な現象となることがわかっていただけるだろう。
実際に一度見た人は「皆既日食ハンター」となり、日食が起こるたびに世界中に出かけていくほど、この現象にとりつかれてしまう人もなかにはいる。天文や星空が好きな人たちのあいだでも、「人生のうち一度は見ておいたほうがいい!」といわれるほどの天文現象だ。
 
2012年の日食は「皆既日食」。また、広大なオーストラリアの一部を横切ることもあって、観測できる候補地が比較的多く、観測にうってつけの条件が揃っていた。
さらに現地では、壮大で神秘的なショーをさらに盛り上げるため、日食当日を挟み、7日間かけて野外音楽フェスティバル「Eclipse2012」が開催予定となっていた。フェスはケアンズの町なかより車で3時間ほど離れた山奥の大自然のなかで行われ、ホテルはおろか水・電気・ガスなどのインフラもほとんど整っていない場所だという。
そのような環境でも参加しようと思った最大の決め手は、もともと観測することを考えていたケアンズの町なかよりも「皆既帯(皆既日食が起こる範囲)の中心に近いため、より長い時間日食を観測できる」という好条件だったからだ。
皆既日食、当日の夜中2時ごろ。その数日前からフェスに参加し、広大な敷地をくまなく歩きまわって目星をつけておいた「特等席」に陣取った。今回は日の出直後のタイミングで皆既日食が起こるため、なるべく早く観測と撮影の準備をしておこうと考えたからだ。
本番となる太陽が昇るタイミングまで約3時間半前。辺りはまだ夜の闇に包まれており、空には無数の星が輝いている。
ひととおりの準備を終え、この旅でようやく落ち着いて星を見上げてみた。その星の瞬きは、遠くから響いてきたオールナイトで行われているDJライブの音に合わせて踊っているようだ。輝く星たちの存在に思わず僕の心も踊り、満天の星を見上げられる幸せにしばし浸っていた。
 
徐々に朝が近づき、世界も目を覚ましはじめる。夜通しライブを楽しんでいた人たちも日食を観測するために次第に集まってきた。その様子を眺めていると、世界中から天文現象を見るために人が集まっているわけだが、さまざまな人たちがいることを感じた。
現地でフェスを楽しむため、原住民のような古代の服装を身にまとっている人。僕と同じように、日食目当てにカメラ機材をたくさんかまえている人。ほかにも、夜中から同じ調子で騒ぎ続けているであろう人や、ただただ静かに日食がはじまるのを待つ人。
ここには国境を越え、同じ場所・目的で集まった人たちがまわりに多くいる。この状況に、「自分はこの世界でひとりぼっちではないんだな」という〝ぬくもり〟のようなものを感じた。そんな思いに感慨深くなっていると、何やらまわりがざわついている。皆既日食がいよいよはじまったのだ。見上げると、太陽が少しずつ欠けはじめているのがわかった。
徐々に辺りが薄暗くなり、気温が下がっていくことを肌で感じた。まるで異次元に入り込んでいくような感覚だ。まわりは獣のように騒ぎ、盛り上がりがさらに高まっていく。まるで地鳴りのようだ。
 
そして一縷の光の筋が消え、いよいよ太陽が月に完全に隠れる瞬間が訪れた。肌に感じる気温がさらに下がり、辺りはふと暗くなった。まるでアーティストのライブがはじまる直前に照明が落ちたときのように。
闇に包まれた世界には、月に隠された太陽と月のまわりからあふれ出るように輝くエネルギッシュな太陽の光だけがあった。これは「コロナ」と呼ばれる現象だ。僕も実際に目にするのは初めてで、どんな言葉で説明しようとしてもコロナを含めた皆既日食という現象の迫力は、なかなか伝えきることが難しい。あえて表現するならば「CGのような景色」。そう思ってしまうほど非現実的で圧倒的な光景だった。
その光景にまわりの人たちも同じく圧倒されている。先ほどまで音楽を聴き、踊り、騒いでいた人たち、カメラをかまえていた人、誰もがただただ無心に日食を見つめていた。僕も例外でなく、夢だった皆既日食を文字どおり「夢中」になって楽しんだ。心の底から感動。
 
ふと別の感情も湧いてきていた。
「皆既日食を見上げる人たちの姿そのものも、なんて美しいのだろう」と。
 
多種多様な人たちが皆既日食という天文現象の下で1つのものを無心に見つめ、ともに同じ方向を見上げている。その光景はかけがえのない大切なものだと思った。
無心に黙って見上げている人もいれば、仲間どうしで肩を組み合い笑顔で声をあげている人、抱き合って涙を流している人、など様子はさまざまだが、「同じモノ、空間、感情をいまこの瞬間に共有している」と強く感じたからだ。
世界ではいまも大なり小なり争いが起きている。大きくは国どうし、小さくは職場の人間関係もそういえるかもしれない。その原因のひとつには、それぞれの考えや価値観を受け入れられないことによる摩擦が挙げられる。
皆既日食という現象を通して、「天文現象は見知らぬ人とのつながりを生んでくれること」「さまざまな違いをもつ他人と、同じ気持ちになることが可能であること」を教えてくれた。
そして、他人と同じ気持ちを共有することは、平和を生み出すきっかけとなるのではないだろうか。だからこそ、皆既日食を見上げる人たちの姿に、僕は「幸せ」を感じたのだろう。
 
なお、その壮大な天文現象「皆既日食」が日本で起こるのは2035年9月2日。
人と同じものを共有する喜びと、平和という空間を味わうきっかけのひとつに「天文現象」があるのなら、僕はまたそれが起こる場所に出かけ、多くの人たちと一緒に空を見上げてみたい。あなたも見に行ってみてはどうだろうか。

星空からのメッセージ #01

『誰かと同じ天文現象を見上げてみよう』

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第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて8月12日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『スターリー・ジャーニー 星を巡る世界一周の旅から得た人生のヒント』

■ペーパーバック版(紙)

■Kindle版(電子書籍)

■書籍情報

世界に出ると気づけることがたくさんある
旅は学びと成長!


星をテーマに世界一周の旅をして得た人生の教訓やインスピレーションを、あなたにもお届けします。夢や目標に向かって挑戦したくても思うように前進できないあなたの背中をそっと押す1冊です。

著者は学生時代にプラネタリウムで星空に魅了され、プラネタリウム解説員を目指す夢を抱きました。しかし、夢の実現は一筋縄ではいかず、数々の困難や挫折を経験。それでもあきらめず、自らの足で星空を追い求め、世界各地の天文現象や星空の美しい場所を巡る世界一周の旅を決意。29歳のときに旅立ち、1年5か月で43か国145都市を訪れ、多くの星や天文にまつわる体験をし、そこに携わる人たちとの交流を深めました。

旅のなかで得た星空からのメッセージは、単なる知識だけではなく、実際の体験から得た深い気づきと感動に満ちています。苦悩や挫折のなかで自分の夢を見失いかけたとき、ふと立ち止まり、夜空を見上げることで得られる静かな時間が心に新たな光を灯してくれたのです。

本書は、旅や星が好きな方だけでなく、夢を追いかけたい人、挫折したり困難にぶつかり立ち止まっている人、新しい視点から自分を見つめ直したい人に向けて書かれています。星空を見上げる行為が私たちにとっての普遍的な行動であるように、本書は多くの方に役立つ人生のヒントを提供します。

あなたも自分の好きなことをテーマにした旅に出かけてみませんか?
自分の夢や目標に向かって一歩踏み出す勇気を本書から得ていただければ幸いです。
世界一周をやってみたい方にも、旅のルートなど参考になることでしょう。

今夜、星空の下で、あなた自身の物語が新たにはじまることを願っています。
星の輝きが、あなたの人生を豊かに彩るきっかけとなりますように。

【目次】

(1)「皆既日食を見上げて」 オーストラリア
(2)「アボリジニに伝わる月の神話」 オーストラリア
(3)「世界有数の星空を守るもの」 ニュージーランド
(4)「発展途上国のプラネタリウム」 インドネシア
(5)「古代中国の天文学者がつなぐ姿勢」 中国
など21のエピソードを収録

【著者プロフィール】

ササキ ユウタ

星空メッセンジャー/旅する星空解説員
天文光学機器メーカー勤務を経て、星をテーマとした世界一周の旅へ。1年5か月かけて世界各地にある天文台やプラネタリウム、星空の美しい場所を巡る。訪れた国と都市は44か国145都市(現在も更新中)。帰国後はプラネタリウムで解説員をする傍ら、旅行会社と提携し国内外の星空ツアーガイド、天文誌への寄稿、星空写真の撮影・提供、プラネタリウム作品の制作、など様々な分野で活躍中。
夢は、世界を自由に旅しながら毎日各国の美しい星空を見上げ、多くの人にその感動を届けて生きていくこと。

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