『仕事の壁をこえる自己成長マトリックス戦略』第1章・無料全文公開
7月26日発売の書籍『仕事の壁をこえる自己成長マトリックス戦略』から、第1章「自己成長マトリックス」を全文公開!
1 経営戦略・マーケティング理論
この節では、「はじめに」で問いた「人生時間のなかの大きな部分を占める仕事の時間」を具体的にどう使っていくかについて、自己成長マトリックスの考え方で提案します。
自己成長マトリックスとは、企業の経営戦略、成長戦略、マーケティングの理論を人の成長に置き換えた考え方です。
イゴール・アンゾフの成長マトリックス理論で、4象限(市場浸透・新製品開発・新市場開発・多角化)があります。それを人の成長の4象限(現在の仕事・新能力開発・新領域開拓・新価値創造)に置き換えて考えてみました。
さらに、セオドア・レビット(*1)のマーケティング・マイオピニア(マーケティング近視眼)理論を人に置き換え、人が近視眼的指向に陥らない方法を考えます。
【アンゾフの成長マトリックス】
この理論のもととなるのは、「経営学の父」といわれたイゴール・アンゾフが1957年に市場と製品を「既存」と「新規」に分け、4象限であらわした企業の成長戦略を考えるフレームワークです。
成長マトリックスの各領域は「①市場浸透」「②新市場開発」「③新製品開発」「④多角化戦略」です。
①市場浸透
既存製品を既存市場で売る戦略で、プロモーションや価格競争力を強化し、市場シェアの拡大や競合との差別化を図ることです。
②新市場開発
新たな地域やターゲット層の開拓を行うことで、既存製品を新しい市場や製品の顧客基盤を拡大する戦略です。
③新製品開発
新しい製品やサービスを既存市場で販売する戦略です。既存顧客に新しい製品ラインナップやアップグレード品を提供することで既存の顧客層を満たす、新製品サービスの開発行為をいいます。
④多角化
新製品を新しい市場で販売する戦略です。
アンゾフの成長マトリックスは、企業が自身の位置を確認し、どの方向に成長の機会があるかを判断するためのシンプルながら効果的なツールとして、経営戦略やマーケティングの教科書に現在も載っており、実際の企業活動にも応用されています。
では、アンゾフの成長マトリックスが実際の企業でどのように展開されているか、事例を見てみましょう。
【アンゾフの成長マトリックスの応用例】
①市場浸透
コカ・コーラは、既存市場での販売促進活動を積極的に行っています。特定の季節やイベントにあわせたマーケティングキャンペーン、広告を展開し、既存の消費者をターゲットにした販売拡大を試みています。
②新市場開発
アップルは、iPhoneやiPadなどの製品を新しい地域や国へ展開しています。とくに新興国の市場成長を背景に、これらの製品を新たな市場で展開しています。
③新製品開発
ネットフリックスは、既存の顧客を対象に、オリジナルコンテンツの開発を積極的に行っています。これによりネットフリックス独自の映画やシリーズを視聴でき、既存市場での顧客満足度向上と継続的関係向上につなげています。
④多角化
アマゾンはもともとオンライン書店からスタートし、時間とともに電子商品・家電・食品・服飾品など幅広い商品群へ展開しています。アマゾン・ウエブ・サービス(AWS)などの新しい事業領域への進出も行っています。
アンゾフの成長マトリックスを個人の仕事やキャリアで考えてみたらどうなるか、ということで変換したのが自己成長マトリックスです。
【自己成長マトリックス】
アンゾフの成長マトリックスを図3のように、縦軸に能力・ケイパビリティ・スキル、横軸に領域・分野・フィールド、としました。
自己成長マトリックスの4領域は「①現在の仕事」「②新能力開発」「③新領域開拓」「④新価値創造」とします。
①現在の仕事
いま皆さんが携わっている現時点の領域(分野)にある会社・職種で、いま現在の能力を発揮することで成り立っています。いまある仕事、与えられたミッションを自ら工夫し、主体的に携わることです。
②新能力開発
いまの仕事をやっていくなかで、求められる能力や自分自身が発揮できる能力が上がっていき、実際に新たにできることが増えます。
③新領域開拓
いまできることやいまの能力で、ほかの領域、違う場所、違う部署、違う職種、違う地域に行くこと、あるいは立場が変わることで新しい分野を開拓します。
④新価値創造
新しい能力と新しい分野・フィールドを組み合わせることで、自分自身の新しい価値が生まれます。この活動は、人が仕事を通して成長していく、自己成長していくのに欠かせない活動です。
アンゾフの成長マトリックス理論の4象限(市場浸透・新製品開発・新市場開発・多角化)を人の成長の4象限(現在の仕事・新能力開発・新領域開拓・新価値創造)に置き換えてみたものです。
次に、セオドア・レビットのマーケティング・マイオピニア(マーケティング近視眼)理論を人に置き換え、「近視眼的指向に陥らない」ことについて考えます。(*2)
【マーケティング近視眼】
ハーバード・ビジネスレビューの編集者でもあったレビットは、1960年にマーケティング近視眼(マーケティング・マイオピア)を発表しました。
当時、米国の鉄道会社が自動車や航空機の発達により衰退した理由を、「鉄道会社が鉄道事業(車両や線路をつくること)にとらわれすぎて、人や物を移動する、輸送する、運ぶ、という動詞で捉えなかったからだ」といっています。
電気に携わる会社は、電気を灯す
自動車会社は、移動する
食品会社は、食べる
を仕事にする
このように動詞で考えることで、近視眼に至らず顧客志向、客目線で事業を捉えられる、といいました。
自己成長を考えるうえでも、仕事を動詞で考えることが大切です。
レビットのマーケティング・マイオピア(マーケティング近視眼)は、企業の多くが将来的な成長の可能性を理解しきれず、短期的な成功に満足して長期的なビジョンを見失う傾向にあると指摘しました。
①産業の誤解
企業は自らを特定の事業とよく定義してしまいますが、それは短絡的です。たとえば米国の鉄道会社は、自分たちを鉄道ビジネスと狭く定義してしまい衰退しました。輸送・人や物を移動する、とより広い視点で見れば、鉄道ビジネスだけでなく別のサービスを提供できます。まだまだ成長の余地はあったのです(日本の鉄道会社は都市づくりという広い視点で事業を捉え、マーケティング近視眼には陥りませんでした)。
②製品志向と顧客志向
企業は製品そのものに焦点をあてるあまり、顧客のニーズや欲求を見失うことがあります。製品やサービスを提供することよりも顧客の問題に焦点をあてるのです。
③成功体験の慢心
企業が過去の成功に慢心してしまい、新しい技術や変化する市場の動向に適応することを怠ると、結果として市場での地位を失うことになります。
レビットは、企業が持続的に成長するためには常に顧客のニーズを中心に考え、変化する環境に柔軟に適応することが必要なことを強調しました。この考え方は多くのマーケティング戦略の基盤となっています。
ここでマーケティング・マイオピアの事例を見てみましょう。
【マーケティング・マイオピア事例】
鉄道産業の事例が古くから引用されていますが、それ以外では、かつて「米国レンタルビデオの巨人」といわれた会社ブロックバスターがありました。
しかしブロックバスター社はネットフィリックスやその他オンラインストリーミングサービスの登場に対し、従来の店舗型ビジネスに固執し、変革の後れを取り、市場からの撤退を余儀なくされた事例があります。
一方、日本のTSUTAYAを運営するCCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)はビデオレンタルだけではなく、音楽・書籍・ゲームソフトも扱うことで、1つのカテゴリーに依存するリスクを軽減しました。
Tポイント事業により顧客ロイヤリティを高め、蔦屋家電や蔦屋書店など、ライフスタイルを提案する店舗を展開していきました。
書籍や音楽だけでなく、家電製品やカフェなど、さまざまな要素を組み合わせた新しいショップを提供しています。
これらの取り組みから、CCCは単にレンタルビデオのサービス提供者の立ち位置に固執するのではなく、時代の変化や顧客ニーズに応じて事業を多角化・拡大する柔軟な経営戦略で「マーケティング・マイオピアの罠」を避けた事例といえます。
なぜマーケティング・マイオピアの罠を避けられたかというと、成長マトリックスにのっとり自社を成長させていったからです。
これを成長マトリックスの図であらわすと図4のようになります。
【人の成長に置き換える】
マーケティング・マイオピアを人の成長に置き換えると次のようになります。
①名詞を動詞に変える
人はよく自らを「ある会社の○○です」とか「営業の仕事をやっています」と職業として見ます。これは少し短絡的でないでしょうか。
たとえば小さい子に自分の仕事を説明するとき、○○社の人、営業職とはいわないですよね。
自転車をつくっている会社なら、いつも保育園まで送っていくための自転車をつくっているのです。その営業職なら、皆が保育園にいくために、はやく簡単に親に連れて行ってもらえるよう、便利な自転車を広めています。
このように、単なる名詞では説明しないのです。
②できること・やりたいこと・求められること
人は、自分のいまやっていること、いま自分ができることに焦点をあてるあまり、世の中や身近なまわりの人が求めていることを見失うことがあります。
いまできることにこだわりすぎず、求められることや将来やりたいことを考えて、いまの仕事に取り組むことです。
③自己満足
人は過去の成功に満足してしまい、新しい技術や世の中の変化に柔軟に適応しないと世間から置いていかれます。
時代が変わり、これまでのやり方では通用しないのに同じやり方を繰り返してしまうと、うまくいかない事態に陥ります。人間は年を重ねても、いつまでも勉強することが大事です。
「仕事」を名詞で捉えると何か止まっているイメージがあります。「仕事をする」という動詞で捉えると、動き、躍動感、また悩みがあり、それに苦慮している、あるいは挑戦しているようなイメージが湧いてこないでしょうか。
「ING」で考えると、いま動いている、行動している躍動感があります。
この節では、経営理論であるアンゾフの成長マトリックスを自己成長マトリックスに置き換えた4象限で捉えることを述べました。また、レビットのマーケティング近視眼に陥らないためには、成長マトリックスの実践が大切であることの事例を挙げました。
次の節では、自己成長マトリックスの4象限の第1象限「現在の仕事」について考えていきます。
2 現在の仕事
「現在の仕事」は、いま皆さんが携わっている現在の領域(分野)にある会社・職種で、いま現在の能力を発揮することで成り立っています。
この節では自己成長マトリックスの第1象限「現在の仕事」に対して、いまある仕事や与えられたミッションを自ら工夫し、主体的に携わることについて考えていきましょう。
仕事に求められること、仕事の能力を磨くことについての基本的な考え方を、営業の仕事の事例をもとに考えます。具体的なワークを通して、さらに考えを深めていきます。
【現在の仕事】
現在の仕事に求められることはなんでしょうか。
たとえば配属された部署で、まずプロフェッショナルになることです。
一見ハードルが高いように思われがちですが、どのような小さな仕事でもプロになれるのです。
【プロフェッショナルになる】
1つ事例を紹介します。
私が新入社員で入った会社の製品はニッチ製品(ニッチとは隙間の意味で、ビジネスでは目立たない小さな市場の意味で使われます)を扱っていました。
配属された担当製品は、その部署でせいぜい4~5人、国内で10人程度の人数しかいませんでした。半年もすると、その製品の知識面では、ほかの製品を担当している人に比べてよく知っているようになります。
他部署の人がその製品についてわからないことがあると、新人のほうが聞きやすいので、よく頼られるようになりました。
何千人かいるなかで数人しかその製品について営業的にはよく知らないことは、もうその製品についてプロではないでしょうか。
そのように考えると、実はプロになるのはそれほど難しいことでもないのです。
いまある仕事について深く追求していくうちにプロになります。
どのような仕事であっても、その仕事を分解し、「ある部分についてはほかの誰よりも知っている、うまくできるようになる」ことを追求すればプロフェッショナルになれるのです。
社会人(職業人)になることは、現在の仕事で一人前(プロ)になることからスタートしていくもの。その道のプロになり、信頼を得ることです。では、信頼を得るには何が大切でしょうか。
【信頼を得る】
大事なことは、レスポンスがいい、反応がはやい人になることです。たいていの会社で、反応がはやい人は間違いなく「いいね」といわれます。
逆に、レスポンスが悪いと「どうもなあ~」といわれてしまいがちです。
間違ったら「すみません」といえばよく、反応が悪い人よりはよほどいいですよね。とくに新入社員にいきなり正解など求めてはいないのですから、わからないことは「わかりません、教えてください」でいいのです。
これまで長い間仕事をして、レスポンスがはやい人との仕事は、間違いなくうまくいきました。
仕事のレスポンスがはやい人と仕事すると、こちらのレスポンスもはやくしないといけないと思い、はやくするクセがつき、反応をはやくする能力が磨かれます。反応のはやい人に学ぶことが多いのです。
逆に、反応の遅い人との仕事はうまくいかないことが多いですが、相手にはやくしてもらうにはどうしたらいいかを学べます。
何よりも自分自身が反応のいい人になりましょう。
日々振り返りと反省、あしたやることを意識すること。これを続けていける人は、たいてい会社生活がうまくいっています。
なかなかそういう習慣がもてないものなので、すぐやらない、後回しにする、自分で止める、抱えてしまう、反省しない、これらを怠ると負のスパイラルに陥ってしまうのです。
「すぐやる」「先回りする」「自分で止めない」「抱えない」ことを反省し改善することで、実はほとんどの人が優秀といわれます。
会社生活のうえで一番大事なのはレスポンスビリティ、反応がいい人になる。これが大切です。
逆に、反応が悪い人、投げかけても返事がない人、相手によってレスポンスを変える人、自ら動くのをためらう人は、社会人としてはよろしくない、といわれます。
とにかく反応のスピードを上げましょう。
自ら動くことは何で、ほかの人にやってもらうことは何かをはっきりさせましょう。ほかの人に依頼するなら、その理由や何をいつまでに具体的にして、曖昧さをなくすことが大事です。
自らやることも曖昧な返事をせずに、できないなら「そこのところはできません」「ここまではできます」とはっきりさせることが大切になります。
そして、反応に心がこもっていることです。AIは反応がはやくても、どうもまだ心はこもっていないように思います。
相手が困っている事情を思いやれない反応は、かえって心象を悪くしてしまいます。AIなら怒れませんが、人間には怒ってしまう人がいるからです。
曖昧さをなくして、レスポンスをはやくする、これに尽きます。
【営業の仕事で大切なこと】
私はメーカーの営業職を長年やってきました。
営業の仕事を皆さんはどのように思いますか。
営業の仕事で大切なことはなんだと思いますか。
営業だから売ることや交渉力が大事です、といわれる方は多いですね。「いやいや、それだけでは足りない、回収しなければ売る意味がないので、代金回収が大事です」という方もいます。
それ以外に大事なことがあると思いますか。
もちろん売ることや代金回収も大事なことですが、その前に次のことがとても大事だと思います。
●お客さまや市場から課題を聞く
●宿題をもらう
●営業はその宿題、課題を解く力を磨く
決して説得して売るのではなく、納得して買ってもらうのです。「買って損した」と思われたら二度と買ってくれません。
買ってよかった、といってもらえることが大切です。
営業とは、「業を営むこと。つまり事業を行う、事業そのもの。一番大事な仕事」と教えられました。
それは製造でも開発でも管理部門でも同じようなことがいえて、会社はもちろん営業だけでは成り立たないため、どの部署も大事な仕事です。そこに意味をどう見いだせるかです。
ここで、現在の仕事についてのワークをしてみましょう。
【ワークⅠ 現在の仕事:自分の能力を知る】
自分の仕事についての理解を深め、その仕事に対する能力を明確にするワークです。
①仕事の説明
現在の仕事について、短い文章で説明してください。
例:「私はマーケティング部門で新製品のプロモーションを考案する仕事をしています」
「私は、飲食店でお客さまサービスを中心としたさまざまな業務を行っています」
②仕事の要素を分解
その仕事を成立させるための主要なタスクや活動をリストアップしてください。
例:「市場調査をする」「プロモーション戦略を考える」「広告素材を作成する」
「オーダーの受付をする」「料理を提供する」「接客する」「清掃する」
それぞれのタスクや活動について、どのようなステップやプロセスが含まれるか詳細に考えます。
③求められる能力の特定
さらに、それぞれのタスクや活動に必要な能力・スキルをリストアップしてください。
例:「市場調査をする」には「調査の方向を知っている」「データーを分析する能力」
「オーダーを受付する」には「お客さまやスタッフとの円滑なコミュニケーションを取る」
次に、それらの能力やスキルを高めるためにはどのような経験が役に立つかも考えます。
④共有とフィードバック
グループに分かれ、お互いに自分の仕事と必要な能力についてプレゼンテーションをします。相手から質問やフィードバックを受け、意見交換します。
⑤全体共有とディスカッション
各グループでディスカッションした内容と感想を代表者が発表します。
このワークにより、どのような仕事があり、それに求められる能力にはどのようなものがあるか、共通点や違いなどを深められるでしょう。
自分の仕事の本質とそれに求められる能力をより深く理解でき、同時にほかの人の仕事との比較を通して新しい視点や考え方を得られます。
【事例】飲食店業務に携わる人の仕事分析
身近な事例として、飲食店に勤務する人、顧客サービスを中心にさまざまな業務を担当する人の仕事を分析してみました。飲食店に従事する仕事(タスク)には、少し考えただけでも表に挙げた7つのタスクが思い浮かびます。このほかにもたくさんあるはずです。
いかかですか。
仕事を棚卸しする、分解する、細分化して、そこに必要な能力、伸ばしたい能力、得意な能力を考えることで、自分の仕事がより明確になります。
同時に、ほかの人の話や事例を聞くことにより、さまざまな仕事がある、という理解も深まるのです。
本書では、グループを想定したワークを4つ用意しました。読者の皆さんはおひとりで読まれているでしょうから、共有・フィードバック・全体ディスカッションができない場合、自問自答することで仕事の理解、求められる能力を明確にできます。
これらのなかで、1つ2つ自分が得意なこと、好きなことを追求してみましょう。
3 仕事の時間をどう使うか
この節では、仕事の時間をどう使うかを考えてみます。
【仕事時間の使い方】
時間の使い方でよく使用されるのが次の4象限です。
縦軸に重要度、横軸に緊急度の4象限になります。
●第1領域:重要度・緊急度とも高い領域
●第2領域:重要度は高いが、緊急度が低い領域
●第3領域:重要度は低いが、緊急度が高い領域
●第4領域:重要度・緊急度も低い領域
第3・4の領域に時間を取られないで、第1・2領域に時間を使おう、というものです。
日本の生産性が低い原因に会議がやり玉に挙がっています。目的がない、結論が出ない、長い、一部の人しか発言していない、何も決めない、決まらない、などムダな会議を止めようとする声は確かに多いです。
ただ、そういっている人たちも、そういいながら相変わらずムダな会議に出ている人が後を絶ちません。
いまではオンライン会議が増え、会議に出ても何も聞いていない人、右の耳から左の耳に通りすぎている人が増えたともいいます。
そもそも何も聞いていない時間を過ごしているとしたら、重要度も緊急度も低いまったくムダな時間です。
しかし、本来ムダな会議にするかしないかは、出席している人たちにかかっている、その人たち次第なのではないでしょうか。
会議を重要な時間にするのもムダな時間にするのも本人の心構えや、その会議に出席して発言する人によって変わります。
あるテーマについて、そのテーマリーダーが社内会議で報告する機会を得たとしましょう。
そのテーマの発表者にとっては、重要度も緊急度も高い第1領域です。
会議責任者・主催者にとっても自分が主催者なので当然第1領域ですが、そこで何も決まらないとしたら緊急度が低い第2領域になります。
そのテーマのチームメンバーにとっては重要度が高いですし、そこで投資を決めてほしいというテーマであれば、なおさら緊急度も高くなります。
一方、そのテーマにかかわっていない人にとっては、実は重要度も緊急度も高くなく第4領域になり、何も聞いていなくても支障はないかもしれません。
ただ、そこで議事録を書かなければいけない人や、その会議内容をほかの場で報告しなければならない人は、重要度はそれほど高くなくても、緊急度が高く第3領域になります。
第4領域になる会議なら本来出なくてもよい話です。
しかし、会議に出て何かを得ようとするなら、第2領域になります。その発表内容から何かをつかみ取ろうとする、何か自分のテーマの参考にならないか考える、あの人の発表の仕方は見習うところがある、あの人のコメントは心に響く、など出席する人の気持ち次第で変わるのです。
そうすれば、質問しなかった人も質問したくなります。質問やコメント力が求められるのです。ありきたりの質問でない、流行りの言葉を意味なく使わない、当たり前のことをさもいまかのようにいわない、視点を変えた質問、ほかの人が気づかないような質問が緊張感を生みます。
新入社員の人や若手の人が発言しないまでも聞くことにより、その会議から学ぶものがあるのです。主催者や上位者はそこを意識して質問、コメントをするのです。結局は人の力量によります。
「会議は決してムダでない、ムダにしない、ムダな時間を使わない、使わせない」その気持ちがあれば、生産性の高い会議ができるのです。
私自身も、仕事に向き合う基本姿勢とか、テーマを遂行する基本的な考え方を、実践や会議といった場で学べました。
仕事時間の使い方について、個人の雇われる能力と企業の雇用する能力の面で考えてみます。
【エンプロイアビリティとエンプロイメンタビリティ】
エンプロイアビリティ(企業に雇用される個人の能力)はよく聞かれますが、企業側の能力であるエンプロイメンタビリティはあまり聞いたことがないのではないでしょうか。
エンプロイメンタビリティ(企業の雇用能力)は、どれだけ多くの人の雇用を支えられるかどうか、という雇用吸収能力の意味ではなく、どれだけ労働者からその企業が選ばれるか、という雇用主の魅力が問われる能力のことです。
そのために各社ウエルビーイングの推進やビジョンの改定などに取り組んでいます。
コロナ禍でいったん下がったものの、2024年度ではとくに正社員不足がいわれている売り手市場です。求人を出してもなかなか集まらない、離職者も出ている、入社間もない人材が辞めていく、などといった問題があります。
では、エンプロイメンタビリティを高める一番の方法は何か。それは、従業員のエンプロイアビリティを高めること、といわれています。
エンプロイアビリティが高くなった従業員は、次のキャリアを目指して転職するのでは、という考えも一見あるのは確かですが、最終的にはエンプロイアビリティの高い人が集まる会社が、社会から選ばれる企業になるのはイメージできます。
一番大切なのは、新しく企業に入ってきた人、新入社員に何を学んでもらうか、勉強や座学ではなく実践で先輩・上司は何を伝えていくか、その会社の価値は何か、その仕事の価値は何か、そして、その人のエンプロイアビリティ(その会社で仕事をする能力)をどう伸ばすかです。
そのうえで、この会社に勤めていて自分のエンプロイアビリティを伸ばせるか、あるいはほかに行ったほうが伸ばせると思うなら転職するのも1つの手段でしょう。合う・合わない、向いている・向いていない以上に、現状から成長するための転職であるなら応援されるものです。
これからは企業のエンプロイメンタビリティが問われます。そのためにはウエルビーイングや労働柔軟性も大事ですが、一番は学習(まわりから学べる)組織かどうかが最も問われるのです。
個人はエンプロイアビリティ、働く能力を上げるために仕事の時間を使う、企業はエンプロイメンタビリティ、従業員の仕事時間を重要なことに使ってもらうことが求められます。
マーケティング近視眼(マーケティング・マイオピニア)に陥らない事例で、企業の成長マトリックスの実践が大切、と述べました。人が近視眼に陥らないことも同じです。仕事の能力を磨く、人が成長することも自己成長マトリックスの実践が大切になります。
仕事の時間をどう使うかで、「会議」はムダだとか、やらされ感が強いイメージを浮かべる人がいるかもしれませんが、「会議に出る」という動詞、自らが主語で考えるとムダにしたくないと思うものです。
これからは個人が仕事の能力を磨き、雇用される(仕事をする)力が必要、会社は個人を雇う能力を磨き、選ばれる(魅力ある)会社であることが必要です。
次の第2章では、自己成長マトリックスの4象限のうち残る3象限、新能力開発・新領域開拓・新価値創造の「3つの新」について考えていきます。
* * *
第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて7月26日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『仕事の壁をこえる自己成長マトリックス戦略』
■ペーパーバック版(紙)
■Kindle版(電子書籍)
■書籍情報
自分自身の人生を主体的に歩んでいける
あなたの「壁を超える」チャンスです
社会に出て誰もが道に迷います。いや、皆学生のときも道に迷うことは多々あったでしょう。やりたくない仕事、得意でない仕事につき自信をなくすことも、時には理不尽なことに向き合わなければならないこともあります。
本書は「社会に出て迷いが生じている人、転機に向き合っている人、あるいは社会に出る前に不安に思っている人」に向け、仕事を通してどのように成長していくかをお伝えしています。
私は、40年にわたり実践してきたマーケティング理論や、成長マトリックス戦略をベースにした「自己成長マトリックス」というビジネスパーソン向けのメソッドを開発しました。
顧客約1万人の課題に向き合い、その課題解決のお手伝いをしてきたなかで生まれたものです。
決して一部の人だけではない、普通の方が実践することで、誰のものでもない自分自身の人生を主体的に歩んでいける方法になっています。
本書は、あなたの「壁を超える」チャンスになります。ぜひ本書を読んで実践いただければ幸いです。
【目次】
第1章 自己成長マトリックス
第2章 「3つの新」の追求
第3章 壁を超える
■著者プロフィール
福成圭司
キャリアコンサルタント
大学卒業後、営業とマーケティング職を中心に東京、大阪、上海他7つの都市にて勤務、おもにBtoBの顧客約1万人の課題解決のお手伝いを行う。40年にわたり実践してきたマーケティング、経営理論とキャリア理論を掛け合わせた、ビジネスパーソン向けの自己成長メソッドを開発。決して一部の人でない普通の人が、自律した仕事人生を歩むことで、個人、組織、企業、社会が成長することを信条に、一人ひとりが自律した人生を歩んで成長していける社会の実現を目指して、社内外でのキャリアコンサルティングを中心に活動中。
* * *
ごきげんビジネス出版のLINE公式アカウントでは、新刊情報、お買い得情報、noteに投稿している第一章全文や書き下ろしコラムの紹介、イベント・セミナーに使えるクーポンなど、生活や仕事に役立つ情報をお届けしていきますので、ぜひ「友だち追加」をしてください!
登録いただいた方に、オリジナルブックや動画など豪華三大特典付きです!!
↓↓「友だち追加」はこちらからお願いします↓↓
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?