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(連載81)ミュート・レコード契約までの道のり:ロサンゼルス在住アーティストの回顧録:2015-2016年

最初に言っときます。

このタイトル、、、嘘じゃないですが、、、。苦笑

多分、皆様が想像をしてるストーリーと、ちょっと違うかもしれません。


皆様のイメージはこうでしょう。

「苦労を重ねて、やっと有名レーベルと契約できたんでしょ?」

凄い! よかったね〜!

おめでとう〜〜!!


そうなんです。

このミュートの事を報告すると、まず、そう言われるんです。


いえいえ、ぜんぜん、凄くないってば!

いえいえ

と、言っても、

ただ謙虚な人だと勘違いされて、誰からもまったく信じてもらえません、、、、。


だって、どう考えても、この話、変じゃないですか? 

私の音楽活動のすべてのはじまりは、カラオケですよ。

世の中そう、甘くないです。

これが、今回の結論ですんで。最初に言っときますよ!!



では、お時間もありません、先を急ぎましょう、、、。


事の始まりはここからです。

先日の、埼玉のレジデンスのお話、覚えてらっしゃいますか?

読んでない方のために、ちょっとサマリーを申し上げますと。

2012年、日本でいっしょにレジデンス(実際にその場所に住んで作品を作る)と展覧会をやった、アダム・リー・ミラーという男性。

彼はデトロイト在住で、アーティストでもあり、もともとフルタイムのミュージシャンです。妻のニコラといっしょにアナログシンセなエレクトロ・パンクなバンドやっておる人です。

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ADULT.

ただのアダルトではないです。アダルトの後にピリオドがつきますよ。笑


彼らは、2000年くらいから、ずっと今でも、コンスタントにアルバムを出し、アクティブに活動していて、この筋では名の知れたバンドで、この2015年頃は、ゴーストリー ・インターナショナルというレーベルがバックについていて、ツアーマネージャーもいて、デトロイトだけでなく、全アメリカ、ヨーロッパにもファンがいます。

そして音楽活動以外でも、いろいろな展覧会に参加もしていて、コッテコッテのミュージシャンというよりも、私のようにミディアをまたいで表現活動をしているおふたりです。

彼らの作品です。

Veneer (Face) 

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Adam Lee Miller 2015


Support Systems No.1

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          Nicola Kuperus 2016


そんなこんなで、私と一緒に日本の埼玉で展覧会をやる運びとなり、このあたりの経緯は 上の(連載74)に詳しく書いたので、ハショリますが、、、、、

私もこれがきっかけで、彼らとはたまに連絡をとったりするような関係になっておりました。



で、ある日。。。。

彼らが「音楽で奨学金をもらった」という連絡があって。

それはデトロイトの彼らの家にゲストを呼んで、家にある音楽スタジオでいっしょにレコーディングのコラボをやり、それをまとめてアルバムにするというプロジェクト。

題して、デトロイト・ハウスゲスト!

すべての経費をその奨学金でまかなってくれるというものでした。


で、その招待するゲスト6人に中に、私を入れてくれたのですよ。

これは、嬉しかった!!


もともとは自分がファンだったバンドと、10年後にはミュージシャンとして、彼らといっしょにアルバムに収まるっていうのが、もう信じられませんでした!!!

長生きしててよかった、、、と思いました。


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夫のトッシュも興味しんしんで、「僕も一緒に行く〜!」と半分観光気分になり、日程の調整などをして、ふたりで、いざ、デトロイトへ!!

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アダムとニコラ。昔パトカーだった車で、空港に迎えにきてくれたの図。笑

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この時のデトロイトは、(2015年ですが)車産業がとことん衰退して、市は2013年についに破産宣告。 

その荒廃ぶりはすごく、いろいろと噂では聞いていましたが、街をドライブしてても、空き家、空きビルがとても多く見受けられた。

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一つのブロック(ストリート)ごと全部が売りに出てたりとか。

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こんなアールデコ時代の美しいビルまでも売りにでてて、

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これがですよ!

たったの1億円だったんですよ。

もう、一瞬、買おうかな?って思いましたよ。爆笑


ただ、アダムとニコラが住んでいたところは、昔、車の会社のフォードの上役の人が住んでいた一角で、区切られた公園のようになっていて、家は古かったですが、どっしりした、素敵な一軒家でした。

一階にリビングとキッチンと図書館のように使ってる部屋、二階に小さいですが、4ベッドルームありました。

その上の屋根裏を音楽のレコーディングルームに改造してあり、

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そして、地下に写真のスタジオ、

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そして、ガレージを絵を描いたりする作業場にしていました。

この家の中でクリエイティブな事は全て完結できるんです。

ーティストにとっては、理想の生活!!!

しかも、一部屋一部屋に彼らの美意識が詰まっていて、感激しまくりました。


同伴者のトッシュも仕事部屋をもらって、嬉しそう!

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僕はどこでも仕事ができるからね〜。(ライターなので)



家の中で、朝起きてから1日中、何を作るのかを話しあいました。

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こういうのどう?と、意見を出し合って、音を作ってみたり、

また、こういうイメージが好きなんだよね?って一緒に映画を見たり、

だったら、こういうのビデオを撮影してみようか?とか


これは、壁に向かって歌ったら声がどうなるんだろう?とかの実験中。笑

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ミシンのノイズをいれて、ミュージックビデオを撮影したいな〜って言ったら、、、、

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じゃ、やってみよう! と。

すぐ、カメラで撮影がはじまる。。。

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もう、思いついたら、その場ですぐ行動! 

どんどんアドレナリンが噴出する〜このスピード感!!



そして、その合間をみて、あの、モータウンに見学に行ったり、、、の観光も。 

ここが、あの、モータウンか〜。以外に小さいので驚きました。

植木の影からモータウンを除く、不気味な日本人の図。

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以上は私の場合ですが、他のゲストも、大筋はだいたいこんな感じで、進行したと思われます。朝から晩までいっしょに生活し、そのゲストとコラボ合宿して、楽曲を作り上げてゆく。。。。


その他のコラボメンバーをご紹介しときます。

スワンズのマイケル・ジラさん

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ドイツ人のテルミン奏者のドリット・クライスラー

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映画俳優でもあるロバート アイキ アウブレイ ロー 

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Nitzer Ebbのダグラス・マッカーシー

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ラスト・アサイラムの シャンノン フュンチェス

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この濃いゲスト達が、次々に彼らの家に招待されました。

そして、すべてが順調に運び、このアルバムが仕上がったら、彼らのレーベルからリリースされる、という段取りになっておりました。


ところが、、、、、。



このゲストの中でも、一番有名なスワンズのマイケル・ジラさん。。。。

日本語で、ウィキってみたらこうなってました。

1982年NYにてマイケル・ジラが中心となりバンドを結成、1983年アルバムデビュー。1980年代~1990年代のオルタナティヴシーンの巨頭としての活動は、当時そして現在のシーンへの影響力は計り知れない。

最近、Where Does a Body End? という映画にもなってましたしね。

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この オルタナティブの巨頭で影響がはかり知れないジラさんに、

いきなりスキャンダルが大浮上!

なんでも、不倫をしていたらしく、そのガールフレンドが、事もあろうに

フェイスブックにそのゲス男ぶりを暴露!!

私も読みましたが、何があったのかを詳し〜くブチまけてた。

これがかなりの話題になり、拡散されて、音楽のウェブなどでも書かれるくらいの一大事になってしまったんです。

マイケルさんもこれには、かなり精神的にやられたと想像します。。。


それで、このアルバムが出るはずだった、レーベルのゴーストリー・インターナショナルは、二の足を踏んで、結局は、アルバムのリリースは中止という運びになったんです。

アダルトの二人は、ここまで来るのに1年近くかかり、それまで、全てが順調に運んでいたのに、自分らとは全く関係のないスキャンダルに巻き込まれて、アルバムは宙ぶらりん。

失望のどん底になったと思います。

1からまたレーベルを探すのは、無茶苦茶大変ですからね。。。

幸せの頂点から、真っ逆さまですよ。



ところが、、、、、。



しばらくして、、、、、、。

もう結論から申しますと、

このマイケルさんが、もともとがミュートレコードのアーティストで、レーベルに相談したのでしょう。

だったら、ミュートで出したるわ。

って事になった。

さすが、ダニエル・ミラー!!

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フトコロがでかいとこ、見せたろ!


これには、アダルトのふたりもびっくりでした。なんせ、ゴーストリーよりも、何倍もメジャーですからね。

まさかのミュートから、自分らのレコードがでるなんて、思ってもみなかったらしいです。

で。


これでもう、この話の先はご想像できるかと。。。。

あとはとんとん拍子で、彼らがミュートと契約、そのコラボの相手である私にも、幸運がまわってきたというわけです。

私は2曲契約しました。

そして、ここまでに、かなり時間はかかりましたが、無事にアルバムはリリースされました。。。。


とさ。


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これで、この道のりばなしは、あっけなく、おしまいです。


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そして、

ミュートと契約以降ですが、私の人生は何も変わりませんでした。

ダニエル・ミラーからパーティーに招待されたりとか、デペッシュモードとコラボできたりとか、ニック・ケイブのバックステージにはいれたりとか、そんなん、何もありませんでした。

アダルト自身も、これ以降のミュートとの繋がりを期待していたと思いますが、残念ながら発展はしませんでした。いわんや、私なぞは、たまたまそこにいて、ついでに契約してもらった存在です。

冒頭に申しましたが、

人生、そんなに甘くないです。



でも、、、、、私としては、ですね。

ネタとして、 もう十分、有難いです!

だって、こうやって、文字通り、このnote に書いてますからねー。笑

人生なんでも、ネタになればオッケー

で、あります!!

これがなんだかんだで、自分のポリシーかも? 笑


ちなみに、これ、よかったら、見てやってください。

Uncomfortable Position  邦題は「変な姿勢」


ちゃんとミュートってはいってますので。笑


今回も最後まで読んでいただいてありがとうございました。

L*


















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