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アオバト繁華街【短編集3】

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2023年12月の記事一覧

【短編】君さえいなくなれば、いい街

【短編】君さえいなくなれば、いい街

君はあの街からいなくならない。
黒髪をくるくる巻いて、上品な顔で、品質が悪くなった人々の傍にいる。
断片的で、君という人間をちゃんと伝えられる自信はないけれど、
君の、アセビの話をしよう。

「すっご…」
俺の部屋を見て、女が言う。これは3年前、俺が高校を出て働き初め、すぐにやめて、仕事とは言えない小遣い稼ぎを始めてすぐの頃。
女の名前は、アセビ。最初アワビって呼んでて、なんかやだぁと言われたのを

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【短編】夢があると言えず、流れ落ちる

【短編】夢があると言えず、流れ落ちる

俺さ、夢があるんだと言って彼の口から出てきた言葉は、青く輝く槍となって、真っ直ぐに私めがけて飛んできた。かわす準備はできている。こんなものを避けるの、お手の物。そんな自分が嫌だった。

子供は2人欲しくてさ、その子供と休日は公園でサッカーして、帰ったらミカの手料理が待っててさ、毎週末が記念日みたいで、息子ができたらスポーツやらせるんだ絶対、めっちゃ練習相手になりたいし、一緒にランニングとかもできた

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【短編】忘年しつつ、私、曲書く毎分

【短編】忘年しつつ、私、曲書く毎分

信じられないくらい時が過ぎるのが遅い。
ノルマ未達の私、新しい動きもない私、新人ではなくなった私、
全ての属性から解き放たれて、
キャラ付けしようにも難しいと思われてしまう、
そんな自分をこの空間から消し去りたい。
しかし逃してこないのが隣のおばさんだったり、正面のおじさんだったり、
左斜め前の、少年が如き新卒くんだったりして、
口角を上げたまま動かさず、何回もハイボールに口をつけた。

仕事の愚

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