ゲーデル

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最近の記事

広がる寝床【禍話リライト】

Kくんが、ビジネスホテルに泊まった時の話。 当時Kくんは、計画を立てずに電車に飛び乗り、今まで降りたことのない駅で降り、観光して一泊する、ということをやっていたのだが、当然そのような無計画な旅の仕方ではさまざまなトラブルに見舞われることもある。 その時も、夜中になっていざ泊まるところを探そうとしたところ、どこにも泊まる場所がなかったのだという。 もちろんそれは、ビジネスホテルそのものがないという意味ではない。 むしろ、駅前に何軒もあったので、そのうちどれかには泊まれるだろう

    • ファミレスデスゲーム【禍話リライト】

      少し前の……20世紀の話である。 その日、Jさんは深夜に田舎のファミレスに行った。 出張帰りに車を飛ばしている時に、どうしてもお腹が減って、そのファミレスに車を入れたのだそうだ。 駐車場には、3時まで営業という垂れ幕がかけられていて、ずいぶん中途半端な営業時間だな、と苦笑したのをよく覚えているのだという。 時刻は、ちょうど日付の変わるころだった。 店内に入ると、そこまで広くはないため客席全体が見渡せる。 客は少なく、ホームレスみたいな、みるからに不潔な格好をした初老の男性

      • 落としましたよ【禍話リライト】

        「ぼくの知り合いに、”ザ・人間のクズ”みたいなおっさんがいるんですけどね」 Iくんは雑談の中でそう切り出した。 その人は、酔っ払うと通りすがりの女の人に声をかける、という癖のある人だった。 平たく言えば、酔っ払うと決まってナンパをするのだ。 それも、通りすがりに「落としましたよ」と声をかけ、振り返った女の人の手を、物を渡すふりをしてギュッと握る……というセクハラまがいの、やられた女性の側からすれば恐怖以外の何ものでもないような行為なのだった。 ところがその人は、最近その「

        • 赤い女に気をつけてください【禍話リライト】

          電話先の女(2:40) 知り合いのAさんが、今から20年以上前に体験した話だという。 当時Aさんは、仲間たちと連れ立って一月に一回ほど、日帰り温泉旅行に行っていた。 その時も、次に行く温泉の相談を仲間たちとしていたのだが、行き先が決まった時に仲間の1人がこんなことを言い出した。 「なあ、ここ行くの三度目じゃん?」 「そうね」 「あのさ、みんな覚えてるかな?国道でここに向かう途中にXってとこ通るでしょ?」 Xはその温泉地近くの住宅地である。 少し珍しい地名だったので、皆覚

        広がる寝床【禍話リライト】

          まみさんの家【禍話リライト】

          Eさんは、中学校教諭だ。 今ではベテランというべき存在だが、彼女が新米教師だった頃に、忘れられない思い出があるという。 Eさんは、自分の母校に国語教師として赴任した。 悪戦苦闘の日々だったが、楽しく、充実もしていたそうだ。 教師という仕事にやりがいを感じていたし、生徒から好かれてもいたからだ。 最初から担任を持たされることはなく、副担任として学級を受け持っていたが、担任の先生もいい人だった。 自分が中学生だった頃からいた、おじいちゃん先生で、思いやりのある優しい人だったという

          まみさんの家【禍話リライト】

          違っていた女【禍話リライト】

          ある県の山のかなり上の方に、ボロいアパートがある。 今はもう、誰も住んでいないし、住めない状態なのだという。 2階建ての建物なのだが、外階段も抜けているので、もう誰も2階には上れない。 当然そんな状態なので、建物の周りには立ち入り禁止のロープが張られている。 「近日中に取り壊し予定」という趣旨の立て看板も置かれているのだが、それが設置されてから2年ほど経つものの、いまだ取り壊しの気配すらない。 そして、その廃アパートにはこんな噂が囁かれていた。 アパートの裏に回ると、2階

          違っていた女【禍話リライト】

          首じゃないのに【禍話リライト】

          Bくんはある日の夜、バイトから自転車で帰宅していた。 その帰り道のこと。 進行方向の道ばたに、カラスが荒らしたのか、ぐちゃぐちゃになったゴミが散乱しているのが目に入った。 ネットは道路の反対側に飛ばされているようで、むき出しのゴミ袋が転がっているのだが。 それが街灯の関係で陰影がついていて、大きな男の右を向いた横顔のように見えたのだという。 自転車で走っていたBくんは、それを見てひどく驚いた。 「ええ!!」 慌てて止まってよく見てみると、やはりゴミであることは間違いな

          首じゃないのに【禍話リライト】

          電話先の女【禍話リライト】

          知り合いのAさんが、今から20年以上前に体験した話だという。 当時Aさんは、仲間たちと連れ立って一月に一回ほど、日帰り温泉旅行に行っていた。 その時も、次に行く温泉の相談を仲間たちとしていたのだが、行き先が決まった時に仲間の1人がこんなことを言い出した。 「なあ、ここ行くの三度目じゃん?」 「そうね」 「あのさ、みんな覚えてるかな?国道でここに向かう途中にXってとこ通るでしょ?」 Xはその温泉地近くの住宅地である。 少し珍しい地名だったので、皆覚えていたそうだ。 「ああ

          電話先の女【禍話リライト】

          冷蔵凶【禍話リライト】

          大学生のUくんから聞いた、冷蔵庫に関する話である。 ゴミ捨て場には、ずっと回収されないものが偶にあるが、そういうものに手は触れないほうがいい。 それは、卒業シーズンのことだった。 サークルの部室で、今、ゴミステーションに行くと、引っ越す人が捨てた棚とか手に入るよな、などという話をしていたのだという。 すると、同級生のWがこんなことを言い始めた。 「いや、俺んとこねぇ、シーズン関係なくすごいんだけどさ」 「そういえばお前のとこ、すごい安いアパートだったな」 Wが住んでい

          冷蔵凶【禍話リライト】

          くちゃくちゃおんな【禍話リライト】

          暗い夜道には気をつけたほうがいい、という話。 大学生のSくんから、去年あった話として、こんなことを聞いた。 彼は関西方面の大学に通っているのだが、一人暮らしのアパートから通学中に、いつも通っていた近道があった。 人一人、ギリギリ通れるくらいの狭い道で、通行にも難儀するほどなのだが、大通りを通るのに比べるとかなりのショートカットになる。 だが、やむを得ないことではあるが、その道には電灯などが一切ないため、夜は真っ暗である。 Sくん自身は、そのこと自体は仕方ないかな、と受け入れ

          くちゃくちゃおんな【禍話リライト】

          回収を待つ【禍話リライト】

          知り合いのRさんから聞いた話だ。 数年前に、高速バスを待っていた時のこと。 夜に出発する高速バスを途中のバス停で待っていたのだが、その日は雨が降っていて、平日でもあったため、バス停にいるのは自分くらいだった。 通常のバスはすべて終わってしまっている。 そんな状況で、寂しいなぁ、バス来ないなぁと思っていたら、ふと、20メートルほど離れたところにある郵便ポストの前に、女が佇んでいるのが見えた。 そこは、停留所ではない。 マンションの植え込みがあるだけで、入り口というわけでもな

          回収を待つ【禍話リライト】

          落武者ホテル【禍話リライト】

          「『落武者ホテル』って知ってる?」 「知らない、何そのミスマッチな名前のとこ」 「心霊スポットなんだけどさぁ」 Nくんは、大学の部室でだべっているときに、友人から初めて通称「落武者ホテル」と呼ばれる心霊スポットの噂を聞いた。 友人は、「正式名称は知らないんだけどさ、みんなからそう言われてるっていうんだよね」と続ける。 だが、正直言ってNくん自身、その「落武者ホテル」なる心霊スポットの噂を真に受けることはできなかった。 「落武者」と「ホテル」という二つの単語の食い合わせの悪さ

          落武者ホテル【禍話リライト】

          追われる夢【禍話リライト】

          Mくんは、友人と二人、とある廃墟に行った。 と言っても、別にふざけてそんなところに行ったわけではない。 ドライブをしている時に、友人が急にトイレに行きたいと言い出した。 「じゃあ適当なところで停めるわ」 Mくんがそう言ったのは、山道を通っている時のことだった。 ただ、山道は車通りがそこそこある。 「ここで道端はきついな」 「ちょっと奥まったところに行こうよ」 そんな話をしていたのだという。 すると、道の脇に、ぽっかりと開いた草っ原が見えた。 奥の方はやぶになって

          追われる夢【禍話リライト】

          十円の贈り物【禍話リライト】

          Jくんには、付き合っていた彼女がいた。 お互いの家に泊まることもあり、頭に結婚もちらつく関係性だったそうだ。 そこそこ長い交際期間ではあったが、二人の間に特に問題は生じていなかったという。 相性もよく、楽しく過ごしていたらしい。 ところが、である。 ある時、二人でテレビを見ていると、心霊番組の予告映像が流れた。 そのとき、画面にちらっとこっくりさんのようなものが映ったのだという。 それを見て、Jくんは思わず言葉を漏らした。 「ああ、懐かしいなあ。まだやってる人いるのかな

          十円の贈り物【禍話リライト】

          こわいでしょう【禍話リライト】

          その地区には、かつて、小山と小山に挟まれた学校があった。 田舎なので、運動会には村中の人が来るような、そんな地域の中核となるような学校だった。 その学校が、廃校になる直前のこと。 人が1人、酷い死に方をしたらしい。 しかも、噂によればそれは生徒ではないという。 「その校舎には入ってはいけない。とんでもなく怖いことが起きる」 地元では、まことしやかにそう言われているそうだ。 だが、恐れられ、忌まれている割には、具体的なことは何も知られていない。 その学校の曰くも、そ

          こわいでしょう【禍話リライト】

          元に戻って乗せて行く【禍話リライト】

          その街には、海に面した寂れた公園がある。 崖になった海岸線に沿うように遊歩道が整備されてはいるが、海風がきつい上に、海に入れるわけでもないので、いつ行っても人はほとんどいないような場所だった。 数年前のこと。 そんな公園の崖から、若いご夫婦が飛び降りた。 理由はよくわからない。 生活苦だったわけでも、事業が失敗したわけでもない。 ただ、遺書はあって、そこに理由は書かれていたものの、遺された人たちには到底納得いかないようなことばかりが書き連ねてあったそうだ。 具体的なことまで

          元に戻って乗せて行く【禍話リライト】