首じゃないのに【禍話リライト】

Bくんはある日の夜、バイトから自転車で帰宅していた。
その帰り道のこと。
進行方向の道ばたに、カラスが荒らしたのか、ぐちゃぐちゃになったゴミが散乱しているのが目に入った。
ネットは道路の反対側に飛ばされているようで、むき出しのゴミ袋が転がっているのだが。

それが街灯の関係で陰影がついていて、大きな男の右を向いた横顔のように見えたのだという。

自転車で走っていたBくんは、それを見てひどく驚いた。

「ええ!!」

慌てて止まってよく見てみると、やはりゴミであることは間違いない。

見間違い……だよな。
しかし偶然にせよ、よくこう見えるもんだな。

そう思いつつ、再びペダルを漕ぎ出す。
そして、問題のゴミ袋に近づいて行ったのだが。

どれだけ近づいても、やはり一見すると大きな首に見えるのだ。
普通こういう錯覚は、気付けば消えていくものだ。

うわ、すげえな……

すぐ手前にまで行っても、やはりそれはいまだに横を向いた男の首に見えるままだったという。
ただ、嫌だなとは思うが、よくよく見るとそれはどう見ても半透明の袋であり、中のゴミも透けている。

まあ、こんなこともあるか。

そう思いながら少し進んだところに自販機があったのだが、ふと見るとBくんの好きな商品が並べられている。
自分の家の近くにはない商品だったので、自転車を止めて、早速それを購入しようとした。
だが、古い自販機だったこともあってか、硬貨をなかなか認識してくれない。
めんどくせえな……と思いつつも、三回目くらいでようやく硬貨を認識してくれたので、商品のボタンを押す。
出てきた商品を取り出して、飲みながらこれまで来た道を何気なくふっと振り返った、その瞬間。

うわ!!

あまりに驚いたBくんは、飲みかけの缶ジュースをそのままカゴに放り込んで逃げたため、全て溢れてしまってズボンがびしょびしょに濡れてしまった、というのだが。

Bくん曰く、振り返った時に彼の目に見えたものは。

直立するゴミ袋だった。

反対側に進んできたのだ。
光の当たり方も変わっている。
角度も変わっている。
そうであれば、それが男の生首に見えるはずもないと思うのだが。

Bくんにはそれが、こちらを向いた男の首に見えたのだ。

無論、理屈としては、それが生首じゃないことなどわかっていたのだが、そんな理屈を超越する何かがあった、とBくんは語る。

それ以降、夜にその道を通っても特に異変はない。
たった一度だけあった、奇妙な体験なのだそうだ。

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この記事は、「猟奇ユニットFEAR飯による禍々しい話を語るツイキャス」、「ザ・禍話 第9夜」の怪談をリライトしたものです。原作は以下のリンク先をご参照ください。

ザ・禍話 第9夜
https://twitcasting.tv/magabanasi/movie/613456130
(10:51頃〜)

※本記事に関して、本リライトの著者は一切の二次創作著作者としての著作権を放棄します。従いましていかなる形態での三次利用の際も、当リライトの著者への連絡や記事へのリンクなどは必要ありません。この記事中の怪談の著作権の一切はツイキャス「禍話」ならびに語り手の「かぁなっき」様に帰属しておりますので、使用にあたっては必ず「禍話簡易まとめwiki」等でルールをご確認ください。

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