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【ビジョナリーカンパニー編4:時を告げるのでなく時計を作る】

前回までの投稿を上記に入れています。

ある日、入社20年になる健は工場長の哲也に呼ばれ工場長室に行く。健はここ数年、全社が注目する新規事業の計画・プロセス立ち上げをこの工場で行ってきた。立ち上げが終わり、そのまま課長をするよう内示を受ける。それと同時に工場長からビジョナリーカンパニーについての解説・指導を受けます。今回は第2章“時を告げるのでなく時計を作る”を解釈を入れながら解説していきます。(今回は第2章の前半です。)


・・・

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳‍;おはよう。今日は、第二章に入っていくよ。ここからは前回投稿したそれぞれの神話の崩壊の内容の詳細説明だ。早速だが、この章の最初には下記の名言が書かれている。解説に入る前にぼんやり頭に入れておいてくれ。

リチャード・シッケル『ディズニー・バージョン』
何よりも、決して立ち止まることなく、決して振り返ることなく、決して終わることなく、会社を築いて、築いて、築き続ける能力があった。結局のところ、ウォルト・ディズニーの最高傑作は、ウォルト・ディズニー社であった。

サム・ウォルトン(ウォルマート創業者)『ロープライス エブリデイ』
考えられるかぎり最高の小売り企業を築くことにずっと力を注いできた。目標はそれだけだ。個人として巨額の富を築くことをとくに目標にしたことは、一度もなかった。

◆時を告げるのでなく、時計を作る

🧒‍;かっこいーですねー。

👨‍🦳‍;だな。ところで、今何時かわかるかい?

🧒‍;え、急どうしました?たぶん、朝の7時半くらいです。

👨‍🦳‍;え?なんでわかんの?そこわからない体で答えてほしかったんだけど。

🧒‍;季節を考えて、太陽の位置が解れば大体わかります。

👨‍🦳‍;すごいな。そんなこと知っているの?でも、君は特殊で、普通の人はまず時間はわからないよな。

🧒‍;まあ、そうですけど。普通みんな時計見ればわかるじゃないですか?

👨‍🦳‍;ああ、そうだが。もしそれが、時計ができる前の話だったら?

🧒‍;時間がわかる人に聞かなきゃいけいないし、秒単位の正確にはわからないですね。私も正確にはわからないしですし。少なくその人がいなくなったら誰もわからなくなります。時計の発明が必要です。

👨‍🦳‍;そう。時を告げることはすごいけど、時計を作るってことがより影響が大きいよな。これって会社や組織経営に置き換えてみるとどんなことが言えると思う?

🧒‍;うーん。すいません。ちょっとわからないです・・・。

👨‍🦳‍;これは、素晴らしいアイデアやカリスマ、つまり時を告げる人ではなく、時計を作る人っていうのが重要になるってことだ。そして、ビジョナリー・カンパニーの創業者が概して時を告げるタイプではなく、時計をつくるタイプであったんだ。彼らは建築家のようなやり方で、ビジョナリー・カンパニーになる組織を築くことに力を注いだといっている。

🧒‍;おー。ちょっと目からうろこです。やはり、カリスマや優秀な個が必要だと思っていました。

👨‍🦳‍;それが違うんだ。ビジョナリー・カンパニーを築くには、すばらしいアイデアもカリスマ的指導者も、まったく必要ないことがわかったんだ。しかも、調査結果によれば、カリスマ的指導者によるすばらしいアイデアは、逆相関するとも思えるって言っているんだ。


🧒‍;カリスマ的指導者とビジョナリーカンパニーが逆相関?うーん、でもなんか直感的にわかりますね。製造現場のマネジメントでも同じっていうか、、私たち転勤族じゃないですか?会社にはよると思うんですけど、そうすると4年とか5年とかで課長が変わってしまう。カリスマが去った後っていうのは往々にしてトラブルが起こってしまうというか、各種活動が止まってしまうということが起きますね。


👨‍🦳‍;そうだ。だから、この調査発見によって、私たちは企業・組織成功を異なった見方をしなければいけないということになったんだよ。今カリスマがいるから業績を上げているっているのは、当人は褒められて、いい気分になるかもしれないが、実は大きなリスクをはらんでいるということだ。

🧒‍;でも、逆にいうと、アイデアを自分がだして、実現しなきゃというプレッシャーに苛まれる必要はないということですね。


👨‍🦳‍;そう。いいアイデアでなくてよいという部分。例を使って、もう少し解説しよう。

🧒‍;よろしくお願いします。

◆「素晴らしいアイデア」の神話


👨‍🦳‍;一つの実話だ。1937年8月23日、大学を卒業したばかりで、まともなビジネスの経験もない二十代前半の二人のエンジニアが、新しい会社をつくろうと話し合った。しかし、その会社で何をつくるのか、はっきりとしたアイデアはなかった。

🧒‍;アイデアはなかった。。。のですか。

👨‍🦳‍;そうだ。わかっていたのは、広い意味での電子工学の分野で、二人で会社をはじめたいということだけだった。最初につくる製品と市場の可能性について、幅広く意見を出し合いはしたが、この新興の会社には、二人を設立に駆り立てるような「すばらしいアイデア」はなかった。

🧒‍;よくやるな。。そんなのすぐにダメになるのでは?

👨‍🦳‍;これはヒューレッド・パッカードの話だ。

🧒‍;え?今でも優良企業のHPですか・・。。

👨‍🦳‍;そうだ。ビル・ヒューレットとデーブ・パッカードは最初に会社をはじめることを決め、そのあとで、何をつくるかを考えた。二人は、まず一歩を踏み出して、ガレージから抜け出し、電気料金を払えるようになりそうなことを、手当たりしだいやってみた。ビル・ヒューレットはこう述懐している。

たまに、ビジネス・スクールで講演する機会があるが、会社をはじめたときに、なんの計画もなく、臨機応変になんでもやったとね。

🧒‍;ポカーンなんですけど。。

👨‍🦳‍;そして彼はさらに続ける。

わたしたちは、カネになりそうなことは、なんでもやってみた。ボーリングのファウルライン表示器、望遠鏡のクロック・ドライブ、便器に自動的に水を流す装置、減量のためのショック装置などだ。たった約五百ドルの資本金しかなかったから、だれかが自分たちにできそうだ! たものは、なんでもやってみた。ボーリングのファウルライン表示器は市場に革命を起こさなかった。自動水洗装置も減量用のショック装置も、ものにならなかった。

とね。

🧒‍;もう、めちゃくちゃですね。

👨‍🦳‍;事業が軌道に乗ったのは、一年近くたって、ようやく初の大口契約を獲得してからだったんだ。ディズニーの映画『ファンタジア』向けの音響用オシロスコープ八台だ。このあとですら、ヒュ レット・パッカード(HP)の路線は定まらず、さまざまな製品を次から次へと手がけた。そして、1940年代初め、軍の契約を起爆剤に、大きく飛躍したんだ。

🧒‍;なんだか。。とりあえず、日銭稼いで運よく当たったみたいな・・。そんなことないのでしょうが。。。そういえば、比較対象の企業がるのですよね。そちらはどうだったのでしょうか?

👨‍🦳‍;そうだな。これに対し、テキサス・インスツルメンツ(TI)は、設立時の構想が大成功を収めたんだ。TIは1930年にスタートした。当時の社名はジオフィジカル・サービスというらしいが、「油田の反射振動探査を行う初の独立系企業であり、テキサス州の研究所で探査のための装置を開発、製造した」。TIの創業者は、ヒューレットパッカードと違い、しっかりした技術を持ち、的を絞ったビジネス機会をとらえようと、会社を設立した。

🧒‍;それが普通ですよね。

👨‍🦳‍;だが、実際にビジョナリーカンパニーとして選ばれたのはHPなんだ。ちなみに、ご存じ、ソニーもウォルマートもそうなんだ。素晴らしいアイデアはなかったし、最初はうまくいかないことの連続だったんだ。


🧒‍;そうなのですか、そうなると広く信じられている、”素晴らしいアイデアが必要”という既存概念が正しいかわからなくなってきますね。

👨‍🦳‍;先見性のある起業家が、製品アイデアや市場についてのビジョンを武器に会社を設立する神話は言われ続けている。この神話だと、まず卓越したアイデア(技術、製品、市場の可能性)を持って会社をはじめ、そののち、魅力ある商品ライフ・サイクルの成長カーブに乗ることになる。まさに完璧なストーリーを成功企業は辿ると思われている。でも実際は、これはビジョナリー・カンパニーの創業パターンとしては、一般的ではないんだ。

🧒‍;信じがたいですが、それが事実なんですね。

👨‍🦳‍;そう。実際には、今回調べたビジョナリー・カンパニーのうち、すばらしいアイデアや卓越した製品を出発点とする企業はほとんどないんだ。 本の中では、多く事例を紹介しているが、そこには最初からの素晴らしいアイデアと成功がない。3Mも含めてだ。

🧒‍;3Mも、革新的アイデアばかりのイメージですが。ちなみにどのビジョナリーカンパニーも最初から成功しなかったのですか?ある確率で成功しないのはわかるのですが、全部がそうといわれると・・。

◆「素晴らしいアイデア」を持つのは悪いアイデアかもしれない。

👨‍🦳‍;ないことはない。が、少ない。「すばらしいアイデア」が大成功を収め、好調なスタートをきった会社は、ジョンソン&ジョンソン、ゼネラル・エレクトリック(GE)、フォードの三社だけだった。ただ、GEとフォードでさえ、「すばらしいアイデア」という考え方に完全にあてはまるわけではないがな。

例えば、GEの場合、エジソンのすばらしいアイデアは、ウエスチングハウスのすばらしいアイデアにかなわなかった。エジソンは直流方式を追求したが、ウエスチングハウスは、それよりもはるかに優れた交流方式を押し進め、結局、交流方式がアメリカ市場に普及した。

🧒‍;そうなのですか・・。

👨‍🦳‍;対照的に、比較対象企業のなかで、すばらしいアイデアを出発点とするモデルにはるかに近かったケースは、エームズ、バローズ、コルゲート、ケンウッド、マクドネル・ダグラス、ノートン、ファイザー、R・J・ レイノルズ、テキサス・インスツルメンツ、ウエスチングハウス、ゼニスの十一社あった。

🧒‍;アメリカの本ですから、わからない会社ばかりです。ケンウッドとかは、わかりますが。

👨‍🦳‍;まあ、細かい名前は覚えなくていいよ。ただ、重要なのは、調査によると、「すばらしいアイデア」を出発点としているものの比率は、比較対象企業より、ビジョナリー・カンパニーの方がはるかに低かったこと、さらに、設立当初の構想がどうであれ、ビジョナリー・カンパニーは、企業として早い時期に成功したものの比率が、比較対象企業よりも低かった。ということだ。具体的には下記のように書いてある。18組のうち、ビジョナリー・カンパニーが設立当初に比較対象企業よりも成功しているケースは三組しかなく、逆に、比較対象 業が設立当初にビジョナリー・カンパニーよりも成功していたケースが十組あった。五組は差がなかったんだ。

🧒‍;そうなのですね。ビジョナリー・カンパニー、もしくは組織を築きたいと強く願っているけど、「すばらしいアイデア」がないため、できない思っている場合は、まず始めてみなさいってことなんですね。


👨‍🦳‍;彼らの調査の結果を見るとそうなるんだ。むしろ、すばらしいアイデアを見つけてから会社や組織作りをはじめることにこだわらないほうがよいかもしれない。なぜなのか。すばらしいアイデアにこだわっていると企業が究極の作品だとは考えられなくなってしまうからっていっているんだ。


◆企業そのものが究極の作品である


🧒‍;究極の作品??なんですかそれ??


👨‍🦳‍;作品というのは、時計を作るということだよ。アイデアばかりこだわっていると、時を告げることを重要視してしまうってことだ。

🧒‍;なるほど。

👨‍🦳‍;時を告げることと、時計をつくることの違いを簡単に理解するために、GEとウエスチングハウスの設立当初の様子を比べてみよう。ジョージ・ウエスチングハウスは、深い洞察力を持ったすばらしい発明家で、ウエスチングハウス以外にも五十九の会社を設立している。さらに、エジソンの直流方式よりも優れている交流方式が普及すると読み、実際にそうなった。

🧒‍;はい。それは知っています。エジソン越え。すごい。

👨‍🦳‍;エジソンを一度置いておいて、ジョージ・ウエスチングハウスと、GEの初代社長、チャールズ・コフィンを比べてみよう。実は、コフィンは何ひとつ発明していないんだ。だが、「アメリカ初の企業研究所」、ゼネラル・エレクトリック研究所の設立したんだ。ジョージ・ウエスチングハウスは時を告げ、チャールズ・コフィンは時計をつくった。ウエスチングハウスの最高傑作は交流方式で、コフィンの最高傑作はGEだったと言われているんだ。

🧒‍;一度負けても、次を生み出す仕組みを作り出したということことなのですね。

👨‍🦳‍;そう。ビジョナリー・カンパニーの創業者はどこまでもねばり抜き、「絶対に、絶対に、絶対にあきらめない」を座右の銘としているんだ。そして、何をあきらめないのかというと、それは会社・組織を作り上げることなんだ。

🧒‍;アイデアはあきらめたり、変えたり、発展させることはあるが(GEは当初の直流方式を廃止し、交流方式に転換した)、組織を作り上げていくことは絶対にあきらめないということですね。

👨‍🦳‍;そう。一方、会社の成功をアイデアの成功だと考えるとそのアイデアが失敗した場合、会社まであきらめる可能性が高くなる。そのアイデアが運よく成功した場合、そのアイデアにほれこんでしまい、会社が別の方向に進むべき時期がきても、そのアイデアに固執しすぎる可能性が高くなる


🧒‍;あくまでもアイデアの成功は短期的なものですよね。ただ短期的なものが目に見えるからそこに集中してしまうのですよね。。

👨‍🦳‍;そうだ。だが、やっぱり、究極の作品は会社であるので、善し悪しは別にして、ひとつのアイデアにこだわることなく、長く続くすばらしい組織をつくりあげることを目指すことが大事だ。実際、HPも、何度も何度も失敗し、その中で素晴らしい製品を設計する仕事から素晴らしい製品を次々に生み出すことができる仕事に方向転換していくんだ。

🧒‍;いわれてみれば、ソニーもそうでしたよね。

👨‍🦳‍;わたしたちは、ビジョナリー・カンパニーに優れた製品やよいアイデアがまったくなかったと言いたいのではない。それは間違いなくあった。そして、次回以降で触れるが、こうした会社のほとんどは、自社の製品やサービスを、顧客の生活を向上させる重要な貢献であると見ているんだ。こうしたことができるのは、会社が組織として卓越しているからにほかならず、すばらしい製品やサービスを生み出しているからすばらしい組織になったのではないと思っている。どんな素晴らしいものやアイデアもすぐ時代遅れになるしね。

🧒‍;でも、ビジョナリーカンパニーは時代遅れになるとは限らないですね。会社として変化し発展していきますもんね。

👨‍🦳‍;そうだ。そして、どんな指導者も、いかにカリスマ的であっても、すばらしいビジョンを持っていても、やがてはこの世を去る。同じだね。おっとだいぶもう話してしまった。次回はこれに関連して2つ目の神話について話していくよ。

🧒‍;もうこんな時間ですね。はい。次回続きお願いします。

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今回は、第二章の前半にそって、1つ目の神話”素晴らしいアイデアの神話”の崩壊ついて解説しました。次回、2つ目の”偉大なカリスマ的指導者の神話”の詳細について解説します。序盤から非常に重要な議論になっていきます。是非フォロー、スキお願いいたします!

次の投稿は下記です。

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