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【両利きの組織をつくる7:第四章(前半) 組織はどのように変わるのか】

本マガジンの前回までの記事は上記に入れています。

本マガジンでは、近年注目の“両利きの経営”についてAGCを題材に事例研究した書籍、“両利きの組織をつくる”について解説していきます。今回は、前回マガジンでビジョナリーカンパニーを学習した健が同期の倫也に工場で会います。(両者とも課長)倫也がこの本について解説し、その中で2人が議論していきます。今回は第四章「組織はどのようにして変わるのか」の前半を解説します。

・・・・

👱🏼‍;おはよう。

👨‍🦱;おはよう。今日は、第4章に入っていくよ。前回両利きの経営について、AGCの実践例でコングルエンスモデルの枠組みを踏まえ学んだな。

👱🏼‍;ああ、AGCでは、「分離しかつ統合する」のバランスとって組織デザインしていることがわかったよ。

👨‍🦱;しかし、組織の深化は組織デザインだけではなしえない。そこには組織のアライメントの再構築が必要となる。今日はその部分を解説していく。引き続きAGCの事例を使って理解を進めいていく。

👱🏼‍;ああ、よろしく。

◆経営者の最大の役割は意思表示と価値判断

👨‍🦱;ところで、組織が進化していくための経営者の役割って何だと思う?

👱🏼‍;そりゃ変化のリスクをとって、意思決定することだろう。意思決定というのは、意思表示と言い換えていいと思うけど。ただ、事業の方向性を決めるだけでなく、組織としての在り方、価値判断という部分も必要になってくると思う。

👨‍🦱;さすが、俺もそう思うよ。でもさ、トップの意思決定での組織変革とかいうと、トップダウン型の変革をイメージしてしまうと思うんだけど、これは違うんだ。

👱🏼‍;どういうこと??

👨‍🦱;変革っていうのは、トップと現場の間の相互作用が必要なんだ。それが実際の組織進化の過程になっていく。著書にはこう書いてある。

① トップの意思表示が契機となって、
② トップとミドルアップの絶妙な組み合わせが生まれ
③ トップの価値判断によって組織の深化が可能となる

👱🏼‍;なるほど、わかるね。結局、両方が同時に変化していかないとだめってことだ。でも実際はトップとミドル・若手との間に齟齬がある場合が多いよな。ミドルやボトムは、「上が方向性を示さないとか、何をしたいかわからない」といって、トップは「ミドルもボトムも主体性がない、待っているだけではだめだ」という。残念ながらこれでは変わらない。

👨‍🦱;著者はこのような状況をこう言っている。

 組織の問題が解決をしないのは、それが「上と下の共犯関係」によって存続しているからだ

👱🏼‍;共犯か。うまくいったね。お互い文句を言いながら共犯であると。非常にわかりやすい。でも、どうしたら打破できるかだよな?

👨‍🦱;そう。まず必要になるのは、経営者の意思表示であると著者は言っている。「私たちはこういう会社・組織になりたい」という意思表示が必要で、そのうえで、必要な場面場面で、うちはここで勝負する、ここにこだわる、これはいらないという価値判断を行うことが必要であるという。

👱🏼‍;なるほど。価値判断っていうのは、存在目的によるものと考えていいよな。なぜ私たちは商売をしているのか、理念であったりビジョンを根底に判断する部分ってことだと思うな。つまり「WHY」から始まるってことだな。

👨‍🦱;その通り、経営者の意思表示と実際の価値判断がセットになって、組織進化の方向が定まっていくと書かれている。そして、経営者のリーダーシップっていうのは、「会社の未来に対して、明確な意思を示し、二律背反するテーマが浮上した際に自らの価値判断を迷わず行うこと」と書かれている。

👱🏼‍;じゃあ、その逆、つまり、価値判断を行わないで、数字指標だけで組織を運用していくと変化なんて起きないってことだな。

👨‍🦱;そうだ。でも、ミドル側だって「会社の将来は自分たちが担う」と経営を自分事化していかなければならない。トップを動かすくらいの気持ちがないとだめなんだ。

👱🏼‍;それすごい解る。言い訳言っている場合じゃないんだよね。やっぱり、ミドルの意思が強い組織は外から見ていてもわかる。

👨‍🦱;だな、とはいってもまずは経営者からだ。どんな意思を示せばよいかというと、著書の中では、

 -企業の存在目的(WHY)
 -戦略(WHAT)
 -その実行のための組織(HOW)

だと言っている。

👱🏼‍;どんなステップがあるのだろう。

👨‍🦱;まずは、存在意義を自らの言葉で語ることがまず重要である。そして、それに従って、戦略と組織の目指す姿を描き、そこで求められる組織機能力を生み出せるようにしなければならない。

👱🏼‍;なるほど。そこで、組織の基本要素の「KFS」「人材」「公式の組織」「組織カルチャー」のアライメント(整合性)の再構築が必要ってことか。

👨‍🦱;その通り、そして、多くの場合、再構築のプロセスは、トップとミドルとの相互作用によって進んでいくんだ。そして、既存事業のアライメントと新規事業のアライメントは共存しなければならないのが「両利利きの経営」だったな。実際AGCにおいては、この両方を行いながら組織進化を実現している。

👱🏼‍;そうなのか、それは興味があるな。

◆組織進化のWHY

👨‍🦱;まず、存在目的を語るってところなんだけど、島村氏はAGCのCEOに就任する前、同社の経営者としては異例の行動をとっていんだ。2014年11月翌年の1月からのトップ人事が発表された直後、自分の信条や社員への思いを記したメールを全社員に送ったんだ。伝えたのは自らのリーダー感だ。そこでは、

今求められるのは「人の心に灯をともすリーダー」

と記載されていた。

👱🏼‍;そうか、そこでは、目標を語るのではなく、また号令をかけるわけでもなく、彼の目指すリーダー像、経営者としての在り方を語ったのか。

👨‍🦱;そうなんだ。そして、2015年にCEOに就任し、会社の存在目的を問い直し、新たな経営方針を策定した。それが組織変革のスタートだ。そして、島村氏は自ら経営方針を考え「AGC plus」というコンセプトを提示した。下記だ。

私たちAGCグループは、
世の中に「安心、安全、快適」を
お客様・お取引先様に「新たな価値、機能」と「信頼」を
従業員に「働く喜び」を
投資家の皆様に「企業価値」を
プラスする。

👱🏼‍;なるほどね。顧客企業のニーズにこたえる中でイノベーションを生み出す、まさにAGCplus というわけだ。

👨‍🦱;そう、そしてこれがやがて、「AGCは素材加工会社ではなく、素材開発会社である」「我々は、ユニークな素材によるソリューション提供会社」であるといった共通認識を生み、新たな組織アイデンティティを育てていくんだ。

👱🏼‍;なるほど、WHYはわかった。次はWHATだな。

◆組織進化のWHAT

👨‍🦱;そうだ。次に着手されたのが中期的な戦略の立案である。ここで島村CEOはすごいことをする。今後20年間の成長戦略を20人のミドルに託したんだ。ここでもコンサルを使わず、2チームに分けて社内メンバーで経営陣への提言を作らせた。

👱🏼‍;すごいな、でもまたなんでそんな大胆なことを?

👨‍🦱;こういっているそうだ。

「ビジョンは実際にその実現を担う人たちに考えてもらうのが一番だと思ったからですよ」

👱🏼‍;これしびれるな。だって、10年後ってことは、40代の人が会社を担うときになって、自分たちが言ったことだから、やらざる得なくなるもんな。おのずと自分事化されてくる。

👨‍🦱; そして、提言が経営チームが独自の検討を加えて長期戦略として、2016年に「2025年ありたい姿」が策定された。

👱🏼‍;あるべき姿ではなく、ありたい姿っていうのも意図があるんだな。

👨‍🦱;そのありたい姿は簡潔に下記のように表現され解説されている。

「コア事業が確固たる収益基盤となり、戦略事業が成長エンジンとして一層の収益拡大を牽引する、高収益のグローバルな優良素材メーカーでありたい」

コア事業、すなわち建築用ガラスや自動車用ガラス、化学品、ディスプレイなどについては、「ポートフォリオ経営の徹底による長期安定的な収益基盤を構築」を基本戦略とし、メリハリのある資源配分やM&A、アジアでの事業拡大などによる成長を掲げた。一方の戦略事業については、「高付加価値のビジネスの拡大による高収益事業の確立」を基本戦略とし、モビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスの三領域をターゲットとして、より付加価値の高いソリューションを提供する、としている。

👱🏼‍;すごいな。この文章で、①AGCの存在目的(WHY)を明確にし、②目指す理想の姿を描き出し、③コア事業と戦略事業を切り分けているんだな。ミドルの使い方といい、トップとミドルの相互作用による組織進化といっていいね。そして、コアを切り離して、既存と新規事業のバランスもとっている、まさに両利きの経営だ。

👨‍🦱;そうそう、でも、策定したとき当時当事者たちは誰も「両利きの経営」を意識はしていなかったというんだ。自分たちの頭で悩み、考えた末の結果が、既存事業の深堀と事業機会の「探索」を共存させる「両利きの経営」の内容に合致していたんだ。

👱🏼‍;なんと・・。やはり、両利きの経営は考え抜けば出てくる、一つの解なのだな。WHATはわかった。次はHOWだな。

◆組織進化のHOW

👨‍🦱;そうだな。戦略(WHAT)と車の両輪をなす組織(HOW)のあり方を考えなければならない。AGCの組織デザイン上の要となっているのが、経営チーム(島村CEO、平井CTO、宮地CFO)の存在なんだ。社内では「トップ3」と呼ばれているが、そのような呼称は島村CEOの時代になって初めて生まれた呼び方だ。それまではトップは一人しかいなかった。そして、島村CEOは、就任当初から「ワン・チーム」という表現をよく使うとのことだ。

👱🏼‍;わかるよ。AGCのような異なる事業体であるからこそ、顧客に付加価値を与えるためにワンチームとなって商品の品揃えを充実させる必要あるってことだろう。

👨‍🦱;そう。島村氏は従業員にワンチームを唱えるだけでなく、自分たちの経営チーム自体がワンチームであることを大切にしているというんだ。そして、AGCの組織デザイン上の特徴となるのが、トップ3と四人のカンパニー・プレジデントの関係なんだ。AGCは社内疑似カンパニー制をとっているのは解説したよな。

👱🏼‍;ああ、電子、化学、ビル・産業、オートだな。

👨‍🦱;特徴というのは、事業運営の実際的な指揮をとるのは各カンパニー・プレジデントであるということだ。短中期的な経営課題はカンパニー・プレジデントが担い、中長期的な経営課題を経営チームが担うという役割分担がなされているんだ。

👱🏼‍;そうか。AGCの経営チームが組織カルチャーという長期的なテーマに深くかかわることが出来ているのは。、この経営構造が要因なのかもしれないな。短中期はカンパニープレジデントが責任もって決済をする、そして、トップ3は全体のバランスと中長期的な課題に取り組むという構造になっているように見える。

◆最後に

👨‍🦱;そうだな。さて、組織進化のためのビックピクチャーWHY,WHAT,HOWについてはここで終わりだ。今日はここまでにしよう。次回は、4章の後半として既存事業と探索事業共存するためのアライメントの再構築について解説する。

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今回は第4章の前半を解説しました。次回はいよいよ、組織アライメント(整合性)の再構築に入っていきます。本書も中盤から後半に差し掛かっていきます。組織を変えたい方必見です。是非、フォロー、スキお願いします。

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