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【ビジョナリーカンパニー編11:カルト文化が必要?】

前回までの投稿を上記に入れています。

ある日、入社20年になる健は工場長の哲也に呼ばれ工場長室に行く。健はここ数年、全社が注目する新規事業の計画・プロセス立ち上げをこの工場で行ってきた。立ち上げが終わり、そのまま課長をするよう内示を受ける。それと同時に工場長からビジョナリーカンパニーについての解説・指導を受けます。1章でビジョナリーカンパニーの定義、2章で時計を作ることの大事さ、第3章で時計のための理念の重要性、AND思考重要性、そして、第4章でその理念をどう維持、進歩させていくか解説してきました。第二部として、第5章では、「社運をかけた大胆な目標」を解説し、今回第6章のカルトのような文化を解説します。

・・・・

◆カルトのような文化

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳;おはよう。第二部の続きだ。今日は6章の“カルトのような文化”について解説する。

🧒‍;恐ろしいタイトルですね。

👨‍🦳;そうだな。でも私はこの本の中で珍しくきれいごとではない、現実も解説してくれていると思うよ。早速、ノードストロームを事例にこの言葉を解説していくぞ。

🧒‍;はい。ノードストロームってアメリカの百貨店ですよね。ノードストロームウェイなんて聞きますよね。

👨‍🦳;そうだ。この章は唐突に架空の人物が面接を受けているところから始まるんだがそこをちょっと紹介しよう。(一部省略)

面接官;「それでノードストームで働きたい理由を聞かせてもらえますか?」

学生;「友人から、これまで働いたなかで最高の会社だと聞いているからです。ノードストロームの社員であることに強い誇りを持っています。それに、給料もいい。八年前に倉庫係として入社し、いまでは店長にまで昇進しています。二十九歳でここまで昇進している。ノードストロームの店員は、ほかのデパートの店員よりはるかに給料が高く、とくに成績のいい店員は年収が八万ドルになると話してくれました」

面接官;「ほかのデパートより給料が高いのは事実です。当社の店員は、全米の小売企業の平均と比べて、ほぼ二倍に近い給料を受け取っています。しかし、ノードストロームの一員として成功するために必要な資質は、全員が持っているわけではありません。社員を厳しく選別するので、辞めていく人が多いのです。どの地位にいても実績を示さなければならず、それができなければ、辞めるしかありません」

学生;「新入社員の五〇パーセントは一年以内に辞めていくと聞いていますが」

面接官;「新入社員は、いちばん下の地位から出発することになります。倉庫係か店員です」

学生;「でも、ワシントン大学を出ているし、成績も優等だった。ほかの会社なら、幹部候補になれます」

面接官;「当社は違います。ここでは、全員がいちばん下から出発する。当社では、社員は最大限、自主性を発揮できます。細かいことまであれこれ指図する人間はいません。制約になるのは、本人の能力だけです。合わないのであれば入社しないほうがいいです。」


👨‍🦳;どう思う??

🧒‍;これ、短い文章にいろいろ詰まっていますね。まず、友人は最高と言っているが、実は50%もやめる環境。50%ってすごいですよ。だいぶブラック感ででますよ。それと、昭和感ばりばりの最初は倉庫か店員からという。そして、従えないなら入社するなですもんね。はまる人には最高の職場ですが、はまらない人にはブラックということですかね・・。

👨‍🦳;昭和感ばりばりってお前も昭和生まれだろ。(笑)そうだな。まあ、具体的なやり方は業種によって変わるだろうが、このやり取りがノードストロームという会社を表していると思っていい。

🧒‍;なるほど。

👨‍🦳;そして、当時ノードストロームに入社すると下記のようなメッセージをもらうとのことだ。

ノードストロームにようこそ
入社おめでとう。わたしたちの第一の目標は顧客に傑出したサービスを提供することです。
個人としての目標、職場での目標を、どちらも高く設定してください。高い目標を達成できる能力があるはずと、わたしたちは確信しています。

ノードストロームの規則
どのような状況にあっても、自分で考え、最善の判断を下すこと。
これ以外の規則はありません。

疑問があれば、部門責任者、店長、本社の部門責任者にいつでも遠慮なく質問してください。

🧒‍;え?それだけ?

👨‍🦳;そう。ちなみにこのノードストロームの理念の世界や人を「ノーディ」といってたようだ。この世界に浸っている人たちは、そのノーディの行事か、ノーディの仲間との付き合いに使っていた。ノードストロームの店員が仲間の話を書く「英雄物語」というメモもあったらしい。

🧒‍;すごい。ちょっと違和感がありますが・・。

👨‍🦳;さらに、顧客からの手紙、社員が顧客に書く感謝の手紙とともに、それが最高のサービスを提供した店舗に贈られる賞の選考に使われていたそうだ。そして、常に、異常なまでに売上目標、生産性、成績……が求められ、従業員控室の壁には標語のポスターがはられている。「今日の課題は決めていますか」、「目標を決め、優先順位をつけよう」、「期待を裏切らないようにしよう」、「猛犬のようなリーダーになれ。賞品を逃すな」などだ。そして、意識向上セミナーがあって、そこでは、「ノードストロームの店長はすばらしい仕事だ………ノードストロームの店長はすばらしい仕事だ……ノードストロームの店長はすばらしい仕事だ」といわなければならない。

🧒‍;おそろしい。。。俺、耐えられないですね。

👨‍🦳;つらい人にとっては、朝七時の部内のミーティングで、ノーディの同僚と『われわれは一番』とか『ノードストロームのために働こう』とかの歌を歌わなきゃいけないんだ。これが好きな人には最高だ。でも嫌な人には最悪だ。

🧒‍;なるほど、こりゃカルトのようなっていうのがわかります。でも、日本の会社にも社歌があって今でも歌うところはありますもんね。


◆「病原菌か何かのように追い払われる」

👨‍🦳;この本で、著者が今回の調査をはじめたとき、調査が進めば、ビジョナリー・カンパニーが社員にいい会社という情報が集まると思っていたそうだ。

🧒‍;そうです。これまでいい話ばっかりですもん、時計を作るとか、理念を作るとか、革新的にリスクとるとか。。

👨‍🦳;でも、ちがうんだよな。調査が進むと、そうではないことがわかってきた。少なくとも、だれにとってもいい職場とは言えないということがわかった。ノードストローム場合、すばらしい職場だと言えるのは、ノードストロームの流儀を信奉している者、それにぴったり合っている者だけである。ほかのビジョナリーカンパニーでも同じだという。

🧒‍;ですね。

👨‍🦳;ビジョナリー・カンパニーになるために「やさしく」「居心地のいい」環境をつくる必要はないことがわかってくるんだ。ビジョナリー・カンパニーは成績や信条への忠誠という点でお、社員に対する要求が厳しい傾向があるんだ。

🧒‍;世の中厳しい・・・。ビジョナリーっていうのはやさしさとか自由を許すこととではないんですね・・。

👨‍🦳;違うんだなそれが。ビジョナリー・カンパニーは、やっぱりもっと傲慢だ。自分たちの性格、存在意義、達成すべきことをはっきりさせている分、自社の厳しい基準に合わない社員や合わせようとしない社員は働けない環境にしているんだ。病原菌か何かのように追い払われるとすら書いてある。もちろん、一方合う人は、幸せだと。

🧒‍;それで、今回のタイトルはカルトのような文化・・と。。

👨‍🦳;そうだ。著書の中では、ビジョナリー・カンパニーに比較対象企業より顕著にみられる特徴のなかに、カルトと共通した点が以下の四つあることがわかったと言っている。

・理念への熱狂
・教化への努力
・同質性の追求
・エリート主義

そして、著者はこれを「カルト主義」と呼ぶことにしている。カルトではないが、カルトのようなカルチャーということだ。

🧒‍;うーん。イメージが悪くなりますね。。

👨‍🦳;いや、悪いイメージを持つ必要はない。単純に事実を言っているだけと捉えたほうがいい。これまでの話のように世の中に貢献し、従業員を幸せにし、常に進歩を遂げているというのは事実なのだから。見方を変えれば、真面目に一貫性をもって理念に忠実に従っているだけといえるからね。

🧒‍;でも、それが実際、基本理念を維持していくうえで中心的な役割を担っているとのですよね。

👨‍🦳;それと、本の中では、ビジョナリー・カンパニーと比較対象企業を分析した結果、以下の点が明らかになったと書いているよ。

・十八組のうち十一組で、ビジョナリー・カンパニーは比較対象企業に比べて、設立以来一貫して、基本理念の教化に熱心に取り組んでいる。

・十八組のうち十三組で、ビジョナリー・カンパニーは比較対象企業に比べて、設立以来一貫して、同質性の追求に熱心である。会社とその基本理念にぴったり合っている者と、まったく合っていない者とに、はっきり分かれる傾向がある(献身的になるか、辞めるかになる)。

・十八組のうち十三組で、ビジョナリー・カンパニーは比較対象企業に比べて、設立以来一貫して、エリート主義(何か特別で優れたグループに属しているという感覚)が強い。

・同質性の追求、エリート主義の三つの側面での違いをまとめると、十八組のうち十四組で、ビジョナリー・カンパニーは比較対象企業に比べて、設立以来一貫して、カルト主義が鮮明になっている。

🧒‍;うーむ。何が正しいのか・・。

◆これらから考えるべきこと

👨‍🦳;この章を読んで、少し不安になったかもしれない。著者自身も、この章の内容にはある程度不安を感じていると書いてあるんだ。

🧒‍;なんじゃいそりゃ。でも、データからの事実なのですもんね。

👨‍🦳;カルト的って言っても、本当に危ない団体をさしているわけではということをここでも明確にしなきゃな。それに宗教団体や社会運動団体では、個人崇拝が強いけど、ビジョナリー・カンパニーでは、イデオロギーに関してカルト的になっているんだ。

🧒‍;そりゃ、もちろんわかっていますよ。

👨‍🦳;カリスマ的な指導者を中心とするカルト主義は、時を告げるのに似ている。永続的な基本理念を追い求める仕組みを創っているカルト主義は、時計をつくるのに似ているんだ。

🧒‍;ここで学ぶべきは、再度、個人崇拝のカルトをつくるべきではないということですね。それは、絶対にやってはならないですね。

👨‍🦳;そう。学ぶべき点は、基本理念を維持する一貫性を持った仕組みを持つ組織をつくるということだ。実際、下記の具体的な方法を使って、従業員を教育し、同質性を追求し、特別な集団に属しているという感覚をつくり出していると著者は言っている。

・入社時のオリエンテーションとそののちの研修によって、技術や技能とともに理念を教育し、価値観、規範、社史、伝統などを教え社内に「大学」や研修センターを設ける。
・同僚や上司がオン・ザ・ジョブでさらに教育を進める。
・社内から人材を登用する方針を徹底して守る。若者を雇い、社内で昇進させる方針をとって、若い時期に従業員 を自社の価値観に合わせて形成する。
・「英雄的な行動」や模範になる人物の神話を、絶えず吹き込む(顧客からの手紙や大理石の彫像など)。
・独特の言葉や用語を使い(例えば、「キャスト」や「モトローラン」などがある)、価値判断の基準をはっきりさせるとともに、特別なエリート集団に属しているという感覚を持たせる。
・採用にあたって、あるいは入社後の数年間に、厳しい選別を行う。
・報奨や昇進で、会社の理念にどこまで適合しているのかを基準にすることを明確にする。

などだ。


🧒‍;でも、上記のカルトのような文化は、違う意味でも、やっぱり危険ではないのですかね?才能ある人材が流出したり、多様性がなくなったりすることで、むしろ変化が起きにくくなるというか硬直した組織になるようにも思います。

👨‍🦳;確かにカルトのような文化は危険であり、会社にとって制約になり得る。もし、理念と進歩の両輪がかみ合っていなければな。理念があって、社会貢献をして、そしてそれに対する進歩がある。この二つが相互補完の関係にあり、互いに強化し合っている。このベースの考えがないとだめだ。

🧒‍;なるほど、そして、前回の議論した、大胆な目標(BHAG)を追求達成するには、このカルトの文化のほうが適している。そして、順繰り回りますが、それが達成できるから、理念と進歩の両輪を回せると。


◆権限移譲と自主性

👨‍🦳;そう。そして、カルトのような同質性を持っていることで「ANDの才能」が「ORの抑圧」をはねのけるということができるんだ。さらにビジョナリーカンパニーはそのための権限移譲ができていて、自主性の発揮ができるようになっている。逆に言うともし君が従業員に権限を与えて、自主性を発揮する組織をつくりたいと考えているんだったら、何よりもまず、理念をしっかりして、従業員を指導しし、病原菌を追い払い、残った従業員にエリート組織の一員として大きな責任を負っているという感覚を持たせなければならないんだ。

🧒‍;え、自主性、理念、エリート、、ごちゃっと来てついていけません。どういうことでしょうか?

👨‍🦳;それこそ、それが次章の内容になっていく。今日はここまでにしよう。

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今回は、6章を解説しました。カルトのような文化という衝撃的なタイトルですが、いかがでしたでしょうか?ちょっと極端に書いている気がしますが、やはり、ある程度の同質性や選別が必要というのが現実なのではないでしょうか。それがむしろ条件になっているということでしたね。次回は、第6章について解説します。いくら優れた組織やはり、やってみて試行錯誤ということわかってきます。ぜひ、フォロー、スキお願いいたします。


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