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【ビジョナリーカンパニー編15:決して満足しない】

前回までの投稿を上記に入れています。

ある日、入社20年になる健は工場長の哲也に呼ばれ工場長室に行く。健はここ数年、全社が注目する新規事業の計画・プロセス立ち上げをこの工場で行ってきた。立ち上げが終わり、そのまま課長をするよう内示を受ける。それと同時に工場長からビジョナリーカンパニーについての解説・指導を受けます。1章でビジョナリーカンパニーの定義、2章で時計を作ることの大事さ、第3章で時計のための理念の重要性、AND思考重要性、そして、第4章でその理念をどう維持、進歩させていくか解説してきました。第二部として具体例を5、6、7、8章と解説してきましたが、今回は、第9章「決して満足しない」を解説します。

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◆決して満足しない

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳‍;おはよう。9章まで来た,あと少しだ。がんばっていこう。今日は、決して満足しないがテーマだ。ビジョナリー・カンパニーで、大切な問いは、競争相手に勝つとか、そういうことではなく、「明日をどうやって今日よりと良くするか」なんだ。

🧒‍;常に現状より前にということですね。

👨‍🦳‍:ビジョナリー・カンパニーでは、この問いが起こる仕組みをつくっていて、毎日の習慣にして実際に行動しているんだ。常に改善を進め、将来のために投資する、継続した活動の中で自然に成果が生まれてくると考えられている。

🧒‍;ビジョナリーカンパニーに、たどり着けるゴールがあるわけではないということですね。ひたすら走るという・・。

👨‍🦳‍;そう「目標を達成できた」と喜ぶことはない。ビジョナリー・カンパニーずばぬけているのは、将来を見通す力が優れているからではないし、何か秘密があるわけではない。自分自身を律し、常に前進を要求するということ単純なことを続けているからなんだ。言えば単純なことだ。

マリオットの創業者、J・ウィラード・マリオット・シニアが成功の秘訣を振り返って、こう語っている。

世の中でいちばん大切なものは、自己を律することである。自己を律することがなければ、人格は形成されない。人格が形成されなければ、進歩はない。 逆境は成長への機会になる。そして、なんのために働くのかで、成果は変わってくる。問題があり、それを克服できれば、人格が養われ、成功をもたらす質を獲得できる。

🧒‍;自律での不断の改善が重要であって、ただそれが、一時的なものであったり、経営陣の気まぐれであったりしては意味がない。つまり、ビジョナリー・カンパニーでは、不断の改善がしっかりした仕組みに基づいて、日々の行動に習慣として組織に落とし込んであるということなのですね。

👨‍🦳‍:そう。現状はどんな時でも不十分なんだ。それに、ビジョナリー・カンパニーでは、現場や各担当の改善という小さな枠組みでなく。全社的に行っていて、改善という観点から、将来のために長期的な投資を行っているんだ。

◆現状を不十分と感じるようにする仕組み

👨‍🦳‍;ここまでくると、ビジョナリー・カンパニーというのは、決して楽な職場ではないというのがわかってきたのでしょうか?

🧒‍:はい。アスリートですよね・・。もはや。

👨‍🦳‍;そう。まさにその通り。楽にする、従業員を安心させるというのは、ビジョナリー・カンパニーにとっての目標じゃない。むしろ、不安感をつくり出し、自ら変化し、改善する強力な仕組み重要視しているんだ。

🧒‍:不満や不安を糧にするのですね。それがなくなれば、自己満足に陥り、自己満足に陥れば、が衰えると。これまでのBHAG,カルト、多くのもの試す、そして生え抜きの経営者。これらの組み合わせが完全に重なって仕組みができているのすね。

👨‍🦳‍;そう。ただ、そんなビジョナリーカンパニーでも、どのようにして自己満足を避けるかっていうのは一つの課題になるときがある。プロクター&ギャンブル(P&G)で、まさにこの問題を抱えていた時がある。二十世紀の初めに、一頭地を抜く優良企業になったことから、自己満足に陥りそうな時があったという。

🧒‍:やはり、各幹部に、変化を求め改善を求めるということをしたのでしょうか?

👨‍🦳‍:この時のCEO(デプリー)は、会社が将来、改善を続ける組織になるためには、単純に彼の意思や改善への意図を伝えるだけでは、不十分であると考えていたんだ。

🧒‍;意図を伝えるだけでは、不十分?

👨‍🦳‍;ああ。ムチを用意したんだ。常に進歩を内側から起こすためだ。

🧒‍;具体的には、、どんなことをしたのでしょうか?

👨‍🦳‍:1931年に、ブランド・マネジメント体制をつくり、他企業と競争しているように、P&Gのブランド同士が直接に競争するようにしたんだ。

🧒‍;ブランドごとで社にで競争というわけですか・・。

👨‍🦳‍;そう。P&Gは最高の人材を抱え、最高の製品を持ち、最高のマーケティング組織を持っている。だったら、P&Gの最高のもの同士を戦わせればいいではないかとね。市場に十分な競争がないのであれば、内部で競争する仕組みをつくるってことだ。ちょっと具体的にどんな競争したかは書いていないのだが。ただ、ここで重要なのは、選んだ方法自体が素晴らしいということではないんだ。

🧒‍:わかります。その自己満足させないために、不安感を生み出す仕組みを考えようとして実行したということですね。内部の競争はその案の一つであると。

👨‍🦳‍;実はビジョナリー・カンパニーを見ていくと、さまざまな仕組みが使われている。GEもボーイングもウォルマートもHPそうだ。本に載っている例を挙げればきりがない。しかしながら、本書での調査では、比較企業においては、ビジョナリー・カンパニーと同じ程度に不安感を生み出す仕組みはなかったと言っている。

🧒‍;なるほど、そこは有意差があるのですね。経営者の姿勢であったり、理念の浸透ということろがここにも効いてくるのですね。

◆将来のために投資する、そして短期的にも、好業績をあげる

👨‍🦳‍:もう一つのこの章で重要なことを話している。それは、短期的、長期的両方で業績を上げるという点に力を入れているということだ。

🧒‍;ANDの考え方の実践ですね。

👨‍🦳‍;そう。ヒューレットパッカードの事例を見てみよう。1946年はまだ小企業で、立ち上げから十年にもならない時期だった。この時、第二次世界大戦が終わって、軍の発注が激減し、売り上げが50パーセントも減ってしまったんだ。

🧒‍;50%って、確実にキャッシュが回らなくなるレベルですね・・・。

👨‍🦳‍:そうだ。目の前がお先真っ暗という状態だな。デービッド・パッカードが、このときの状況を以下のように説明している。

われわれは戦争終結を喜んでいたが、同時に、深刻な問題にぶつかることにも気づいていた。百五十万ドルほどあった売り上げが、一九四六年には半分ほどに減ってしまった。本当に心配になり、このままでやっていけるのかと考えていたのを覚えている。

とね。同じ状況に立たされたとき、君ならどうする?

🧒‍;最小限のキャッシュアウトに抑えないといけないかと、、やっぱり、人員の削減などリストラしないと・・。

👨‍🦳‍;一つ目はその通りだ。彼らは、従業員をほぼ20パーセント削減した。次に、これまでの受注の増減が激しい、政府頼みの受注スタイルをやめたんだ。しかし、これだけではなかったんだ。国防予算に依存していた研究機関が同じように苦しい状況を見て、それら研究所から、優秀な科学者や技術者を引き抜いたんだ。同時に、社内でも、優秀な技術者は解雇せず、知識を組織に残し、かつ増強したんだ。

🧒‍;ピンチ逆手にとって技術者の質を上げたのですね。でも、すごい意思決定だ。。

👨‍🦳‍;この決定のすごさは、この先これら人材が活躍させることができるほど、事業環境が良くなるかわからなかったのに雇用したということだ。普通なら最小限までキャッシュアウトを減らすはずだ。

🧒‍;ついてきた技術者もすごいですね。

👨‍🦳‍;そう。ある意味ギャンブルだ。まあ、その後業績は良くなるのだが、1950年になってからであった。4年も我慢しているのである。ただ、この時の投資はそれから20年にわたって実を結ぶことになる。革新的で収益性の高い製品を、技術陣が次々に開発していったからだ。そして、ここからの教訓を活かすように、事業が拡大すると、同社は、目先の安易な利益のために、長期的な原則と健全性を損なわないようにすることが重要だと、繰り返し強調するようになるんだ。倫理基準に違反して、目先の利益を追求する従業員がいたらクビにするというんだ。

🧒‍;確かに、今コンプライアンスなどの考えがあって確かにわからないでもないですが、今から50年以上前からこの考えになっているのはすごいですね。。

👨‍🦳‍;彼らは長期的な評判は、どんなことがあっても守らなければならないとパッカードは考えていたんだ。

🧒‍;なるほど、目先より長期的利益を優先したんですね。

👨‍🦳‍;しかしながら、今期の業績が少々悪くても、という安易な考え方にはならない。デービッド・パッカードの言葉を見てみよう。

今後五十年の展望について
設立から五十年間、当社を導いてきた原則を守り通していけば、その後の五十年も成功を続けられるだろう。これはわたしの気持ちであると同時に、ビル〔・ヒューレット]の気持ちでもあると受け取ってほしいが、わたしたちは当社の事業にきわめて強い誇りを持っており、今後も一層すばらしい仕事をすると皆さんに期待している。

今後一年の展望について
いまの段階で利益を出すのと、将来に利益を出すのとで、どちらが難しいとは言えない。長期的に利益を増やせるという期待から短期的な利益を減らす行動が成功を収めることは、めったにない。そういう行動はほとんどの場合、希望的観測によるものであり、そしてほとんどの場合、全体的に見て、理想的な業績を達成することができなくなる。

🧒‍;まさに短期長期の両方をあきらめてないですね。

👨‍🦳‍;これは他のビジョナリー・カンパニーに言えて、彼らは、短期的な業績または長期的な成功のどちらかとは考えない。もちろん、通常短期利益は誰しもが目が行くけどな。短期的な業績についても高い基準を掲げて、かつ何よりも長期的な成功を目指すんだ。

🧒‍:なるほど、でも、長期的な成功のために具体的にどんなことをしているのでしょうか?何となくは、予想できるのですが。

👨‍🦳‍:著者によると、1915年までさかのぼって各社の年次報告書を分析していった結果、ビジョナリー・カンパニーは比較対象企業に比べて、売上高に対する設備投資の比率が一貫して高いと言っている。

🧒‍;設備投資ですか。あと研究開発もそうでしょうか?

👨‍🦳‍;ウォルマート、マリオットなどの企業では、通常の意味での研究開発費自体が項目としてないから比較も何とも言えないようだが。数値を比較できた業界は八組あって、すべて、ビジョナリー・カンパニーは比較対象企業に比べて、売上高に対する研究開発費の比率が高かったそうだ。医療薬品業界に絞って言えば、較対象企業の一・三倍にもなっていたそうだ。

🧒‍;それは、すごいですね。

👨‍🦳‍:さらに、ここが面白いのだが、人材に対する投資にもはるかに積極的で、採用、研修等の人材育成に力を入れている。メルク、3M、P&G、モトローラ、GE、ディズニー、マリオット、IBMはいずれも、自社で「大学」や「教育センター」に投資して、徹底した研修の仕組みを構築しているという。モトローラなんて、社員一人当たり年に四十時間の研修を目標にて、1.5パーセントをいつも研修に充てるようにしているようだ。

🧒‍;やはり人財だと。

👨‍🦳‍:そう。そして、最後に、技術ノウハウ、新技術、新しい経営技法、革新的な事業慣行などの面でも、比較対象企業に比べて早い時期から積極的に投資を進めているんだ。変化が起こる前に自ら変わるということだ。GEの目標による管理であったり権限委譲などの新しい経営手法の導入が例だ。ほかにもメルクのTQCの導入もそうだ。

🧒‍:そして、このスタイルも理念維持と進歩を実現していくのですね。

◆CEO、経営幹部、起業家へのメッセージ


👨‍🦳‍;そうだな。そしてこの章の最後に、著者は、企業の育成や経営に取り組んでいるのであれば、以下の点を問いかけてみるよう勧めたいと言っている。

・どのような「不安をもたらす仕組み」をつくって、自己満足に陥らないようにし、内部から変化と改善を生み出すとともに、基本理念を維持していくことができるのか。そのような仕組みに強力なムチの要素を加えるには、どうすればいいのか。

・将来のための投資を進めながら、同時に、たったいまの業績をよくするために、何をしているのか。業界に先駆けて、新しい方法や技術を導入しているだろうか。

・不景気にどのように対応するのか。不景気の間も、将来のための投資を続けていけるのか。
・安心感が目的ではないこと、ビジョナリー・カンパニーが働きやすい職場ではないことを社員は理解しているだろうか。楽な生活を最終目標にするのを拒否し、こうした目標に代えて、いつも明日には今日より前進するという終わりのない修練の過程を重視しているか。

🧒‍;もうこの本もだいぶ終盤ですが、つくづく近道はないということを痛感しますね。ビジョナリー・カンパニーになるための基本的な要素はきわめて単純なものばかり。いうのは簡単ですが、継続が難しいことばかりなのですね。厳しい自制、膨大な仕事量、将来のための絶えざる努力ですね。わかりました。

👨‍🦳‍;わかってきたな。さて、9章はここで終わりだ。次回いよい10章、最終章になる。一貫性について語って、今回の解説を終わりにする。ラスト頑張っていこう。

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 今回は、第九章を解説しました。だいぶ己に厳しい組織スタイルがわかったと思います。また、長期的投資を重要視していることも特徴だったと思います。
次回は本書の解説としては最後の章の10章にっていきます。また、この本が終わったら、ちょっと予定にはなかったのですが、今各所で聞こえてくる「両利きの経営」について解説していきたいと思います。ぜひフォロー、スキお願いいたします。

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