見出し画像

【ビジョナリーカンパニー編13:やってみなはれ (後半)】

前回までの投稿を上記に入れています。

ある日、入社20年になる健は工場長の哲也に呼ばれ工場長室に行く。健はここ数年、全社が注目する新規事業の計画・プロセス立ち上げをこの工場で行ってきた。立ち上げが終わり、そのまま課長をするよう内示を受ける。それと同時に工場長からビジョナリーカンパニーについての解説・指導を受けます。1章でビジョナリーカンパニーの定義、2章で時計を作ることの大事さ、第3章で時計のための理念の重要性、AND思考重要性、そして、第4章でその理念をどう維持、進歩させていくか解説してきました。第二部として具体例を5、6章と解説してきましたが、今回は、第7章「大量のものを試して、うまくいったものを残す」の後半を解説します。

・・・・・・

🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳‍;おはよう。前回は3Mを事例に大量のものを試して、うまくったものを残すについて解説した。今回は、その後半ということで、これら事例から何を学ぶかということについて解説する。

🧒‍;よろしくお願いします。

◆3Mの事例から学ぶ

👨‍🦳‍;前回も話した、進化という観点から3Mを手本にするなら、学ぶべき教訓は、以下の五点だ。(もちろんほかの事例も書籍には記載してある。その共通項という認識)

一つ目;「試してみよう。なるべく早く」

まずやってみろということだね。疑問があれば、方法を変え、考え方を変え、問題を解決し、実験し、何か新しいことを試す。そりゃ、基本理念に従っていなければならないがな。その時は将来の結果なんてわからない。ただ、それを気にせず失敗したら次を試す、そこから修正していくということだ。幸運の女神はこの繰り返しでやってくる。数千の同じようなことが繰り返されていなければ、3Mはビジョナリー・カンパニーにはなっていなかっただろうと著者はいっている。

🧒‍;考えすぎて何もしないのが一番悪いことということですね。工場の現場管理でも同じことが言えると思います。試行錯誤の繰り返しでしか、いい改善は生まれないですよね。

👨‍🦳‍;そうだな。次にいこう。

2つ目;「誤りは必ずあることを認める」。

👨‍🦳‍;試行錯誤の過程には誤りと失敗がつきものであることは当たり前のことである。ダーウィンの進化論でも、「繁殖し、変異し、強いものが生き残って、弱いものが死に絶える」であると言っている。進化を実現するには、多くのトライアル(繁殖)を、さまざまな変化への対応(変異)、うまくいったものを残し(強いものが生き残り)、うまくいかなかったものを捨てる(弱いものが死に絶える)ように考えなければならない。言い換えれば、失敗した実験が大量になければ、活、3Mには近付けないと著者はいっていて、さらに3Mの元CEO、ルイス・レアーが語っている。

「もし、秘訣があるとするなら、失敗の事業はそうとわかった時点でなるべく早く捨てることだ。……しかし、失敗にも、ある意味で価値がある。……成功から学ぶこともできるが、それにはたいへんな努力が必要だ。失敗からなら、はるかに容易に学べる」。

🧒‍;CEOがいうって説得力がありますね。私も結局失敗も成功も本質は変わらないと思っています。両方とも、何かしらの事実を明らかにすることであって、失敗もうまくいかないことがわかるということが大事だと思いますね。いくつも事実を明らかにするなかで、それが成功である場合があるってことですよね。分析も重要な場面がもちろんありますが、現場で起こる事象は複雑系なので分析で分かったふりになるのがほとんどです。やってみて事実を明らかにして、次に進むということのほうがスピードや精度が上がる場合が多いと思います。もちろん致命的なリスクは避けての上ですが。(とはいえ、ビジョナリーカンパニーはBHAGでリスクすらとる)

👨‍🦳‍;そうだな。だが、前の章で解説した、カルトのような文化ということは忘れてはいけない。ビジョナリー・カンパニーは誤りや失敗に対して寛容だが、基本理念にそむく行為に関しては徹底的に許さない。病原菌のように扱われるということだ。この文化がベースにあっての話であることを理解しておいてくれ。

🧒‍;そうでした。きれいごとだけではないのでした。。

👨‍🦳‍;よし。次にいこう。

三つ目; 「小さな一歩を踏み出す」

👨‍🦳‍;当然ながら、実験や変化への挑戦が、大きな損失にならない限りは失敗を許容することも容易であるし多くの実験ができる。そして、その小さな実験が、大きな戦略転換の基礎になり得ることもある。マックナイトが顧客に素朴な質問をしたことが、耐水性サンドペーパー事業につながり、自動車業界に大きな市場が広がりさらに、そこから大きなビジネスにつながっていった。

🧒‍;企業の戦略的な大転換したい場合、「一歩ずつの革命」を積み上げていくことも一つの方法であるということですね。実際、企業内で、何か革命的なことをやりたいのであれば、「実験・変化する」ことに組織として許容を持たなければならないということですね。つまりトップは、短期的な目線ではなく、中長期的な視点で様々な小さな実験を許可していく必要がありますね。

👨‍🦳‍;そう。この辺現実と理想のはざまで苦しんでいる人は多いと思うがな。まあ、次にいこう。

4つ目 :「社員に必要なだけの自由を与えよう」

3Mは比較企業と比べて、社員の自主性を認めていて、権限移譲が進んだ組織になっている。これが、計画によらない変化や成功のベースになっているといっても過言ではない。

🧒‍;それが大事ですよね。勝手にやるな!って怒られたら、変化や実験に対して、思考停止しますもん。

👨‍🦳‍;そう。本の中では、18のビジョナリー・カンパニーとその比較対象企業を比べていくと、12組で、ビジョナリー・カンパニーのほうが権限移譲が進み、業務上の自主性を社員に認めている(五組では、差がなかった)。と記載されている。

🧒‍;それはわかりますね。多くのものを試すっていうときに、その周りの環境は重要ですよね。現場改善も同じで、現場の状況がわかっていないトップが指示して、現場のメンバーが思考停止してては、絶対に納得感のある活動にならないし、問題解決はできないですからね。

👨‍🦳‍;社員が自分の案を言いやすい環境にすること、いまでいう、心理的安全性の確保が重要だ。次に行こう。

5つ目;重要なのは仕組みである。

👨‍🦳‍;時計をつくるべきだとずっと言ってきているが、まさにそれだ。最も重要な3Mからの教訓は、上記の四つの点を単なる考え方に終わらせず、いくつもの具体的な仕組みをつくり、それらがうまくかみあうようにしたってことだ。3Mの仕組みは、どれも、きわめて具体的である。(書籍の中では3ページにわたって具体例が記載されているため、ぜひそちらを見てほしい。)どれも、進歩をさせるために一貫したメッセージになっている。そして、ムチが用意されているんだ。

🧒‍;ムチとは・・?

👨‍🦳‍;部門の責任者なら、新製品による売り上げを30パーセント以上にする目標を達成しなければ、立場がなくなる。ノードストロームの時と同じだ、理念に沿った結果を出せなければ、はじかれてしまう。きれいごとだけでは前進しないという厳しい現実も突き付けている。3Mでは、大量の優秀な人材を一つの器に入れておければ成果が得れると考えているわけではない、その器を常にたたいてかき回して、活性化させているんだ。

🧒‍;なるほど、この仕組みの部分ていうのはおざなりになりがちですね。正しいことを言って、方針を示しさえすれば、メンバーは実験をはじめ、新しい試みをはじめると考えてしまいます。だけど、そんなことでは自主的には動かない、ましてや時計作りになんてならないということですね。

◆してはならないこと

👨‍🦳‍;逆にこうなってはいけないということも比較対象企業を例に下記のように記載されている。

テキサス・イン メンツも好例である。1950年代と60年代、同社はきわめて革新的な企業として高い評価を受けていた。最高経営責任者パトリック・ハガーティの指導のもと、一般社員からアイデアや革新が次々に出てくる社風をつくっていたからである。しかし、ハガーティの後継者のマーク・シェパードとフレッド・ビューシはこの経営スタイルを逆転させ、トップ・ダウンの官僚的手法を導入して、恐怖と侮辱によって起業家精神を消し去ってしまった。会議で部下の説明に気に入らない点があると、「ばかげている。それしか報告することがないんだったら、これ以上聞きたくない」と口をはさんだ。どなり声をあげ、テーブルをたたき、会議室の向こうの端までものを投げつけた。同社の元幹部がふたりの経営者について、こう語っている。「部下を信頼していなかった。……下級の管理職は、権限を大幅に縮小された。権限のほとんどは、本社に移された。新製品が提案されると、本社で何度も何度も仕様が改定され、それが永遠に続くのではないかと思われたほどだ。ようやく出てきた製品には、四角いクギが使われていて、丸い穴に突っ込めと言われる」。1970年代後半から80年代にかけて、同社はアメリカを代表する優良企業だという評価を失い、巨額の損失を計上した。

🧒‍;四角いクギを丸穴に突っ込め・・。例え話でしょうけど、、これは、だめですね・・。でも、さすがに今はないと思いますが、、ちょっと前まで多くの日本企業でも同じようなことが起こっていた気がしますね・・。

👨‍🦳‍;だよな。でも、この話ってさっき君が言っていた、心理的安全性とほぼ同じ話なんだよな。どの時代も言い方を変えど、同じようなことを言っているんだ。

◆基本理念を維持し、進歩を促す

👨‍🦳‍;さて、著者はさらに、上記の五つにもう一つ教訓加えるべきだと言っている。それは、

進化による進歩を促す際に、基本理念を維持することを忘れてはならない

だ。

🧒‍;そうですね。実際にやろうと思うと、大量に試したもので何を残すかっていうときに何らかの判断が必要になると思います。もちろん、市場に受け入れられた、つまりうまくいったということは一つの基準ですが、それを自分の会社として世に出していいかというのは、別物になると思います。

👨‍🦳‍;そう、その判断基準が理念に従ったものかどうかということになる

3Mはウィリアム・マックナイトの時代から、社会のニーズに合致した革新的な技術を生み出すことを目標にしてきたと言われている。

🧒‍;そうなのですね。

👨‍🦳‍;ビジョナリー・カンパニーが進化し大きな成果を成し遂げるとき、基本理念が求心力になり、指導原理になると著者は言っており、さらに3Mの事業は広範囲にわたり、規模の小さな事業部門が多数あるが、それでも、驚くほど結合力が強い。3Mの社員はほとんどカルトのような忠誠心によって会社に結びついていると言っている。

🧒‍;結局最後に理念に立ちかえってくるのですね。そして、それをつなぐものがカルトのような文化であったり、忠誠心であったりする。そして、実際に行動をとること自体が、理念の維持になり、進歩になっていくというわけですね。

👨‍🦳‍;そう、理念自体は変化させずにな。この章の最後になるが、ウィリアム・マックナイトは3Mでの65年間を振り返って、こう語っているそうだ。

われわれがどれほど互いに依存し合っているのか「共通の価値観に依存しているのか」を強調しておくべきだろう。われわれにとっての課題は、人間についてのこの重要な教訓を重視しながら、個人を十分に尊重することである。 進歩を続け、アメリカと世界にとって役立つ事業を続けていくためには、われわれは、卓越した仕事をすると選択をした人たちを正しく評価し、それによって、そのような人たちがわれわれすべてのために何かを創造できるようにし、新しいアイデアや製品によって生活を豊かにしていくべきだ。最高の仕事、もっとも難しい仕事は、冒険と挑戦の精神によって成し遂げられるのだ。

🧒‍;難しいですが、わかりました。卓越した人材を選び、彼らが創造性を発揮する環境を作る、そして、それらアイデアと製品によって社会の生活を豊かにしていくべきだと。それが最高であり、難しい仕事である。

👨‍🦳‍;その通りだ。ここで、7章は終わりだ。大量に試すこと、そして残していくことの意味はわかったな。

🧒‍;はい。ありがとうございます。

・・・・・・・・・・

今回は第7章の後半について解説しました。BHAGとはちょっと異なる、理念維持と進歩の方法について記載されていました。しかしながらいずれにしろ言葉でなく行動で浸透させていく重要性を説いていることがわかってもらえたかと思います。次回は、第8章に入っていきます。終わりが見えてきました。最後までお付き合いしてもらえれば幸いです。フォロー、スキよろしくお願いします。

また、下記にこれまで作成した別マガジンを記載します。ぜひ覗いてみてください。


#製造
#理論と実践
#ものづくり
#成長
#5S
#トヨタ生産方式
#ジャストインタイム
#自働化
#リーンプロダクション
#ザゴール
#制約理論
#ドラッガー
#ビジョナリーカンパニー
#アドラー
#コーチング
#情報リテラシー
#要件定義
#会計
#損益計算書
#決算書
#損益分岐点
#原価低減
#平準化



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?