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【ビジョナリーカンパニー編5:カリスマはいらない?】

前回までの投稿を上記に入れています。

ある日、入社20年になる健は工場長の哲也に呼ばれ工場長室に行く。健はここ数年、全社が注目する新規事業の計画・プロセス立ち上げをこの工場で行ってきた。立ち上げが終わり、そのまま課長をするよう内示を受ける。それと同時に工場長からビジョナリーカンパニーについての解説・指導を受けます。今回は第2章“時を告げるのでなく時計を作る”を解釈を入れながら解説していきます。(今回は第2章の後半です。)

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🧒‍;おはようございます。

👨‍🦳‍;おはよう。今日は、2つ目の神話の崩壊の詳細を話していこう。



◆偉大なカリスマ的指導者の神話

👨‍🦳‍;早速だが、ビジョナリー・カンパニーの成功をもたらした最大の要因って何だと思う?

🧒‍;うーん、やっぱり、偉大なリーダーがいたからではないでしょうか?

👨‍🦳‍;そうだね。ウォルマートのウォルトンもそうだし、ビル・ヒューレット、デーブ・パッカードとかイメージあるよね。こうした経営者たちは、きわめてねばり強く、社員の心をひとつにまとめ、会社の歴史の岐路になった重要な時期に指導力を発揮した。確かにその通りだ。しかし、ここがきわめて重要な点だが、比較対象企業の経営者も同じだったのだ。彼らもきわめてねばり強く、社員の心をひとつにまとめた。会社の歴史の岐路になった重要な時期に、指導力を発揮しんだ。十八組を分析していった結果、比較対象企業は、ビジョナリー・カンパニーと同じ比率で、草創期に「指導力」がしっかりしていた。


🧒‍;確かに銅メダル級、銀メダル級の企業だって大成功に入りますよね。その時には指導者は必要ですもんね。つまり、ビジョナリー・カンパニーで、とくに指導者が優れていたとの仮説を裏づけるデータはなかったと。比較企業も同じであったと。


👨‍🦳‍;そうなんだ。このため、調査を進めていくにつれ、彼らは偉大な指導者の理論を否定しなければな なくなった。つまりさ、偉大な指導者ということだけでは、ビジョナリー・カンパニーと比較対象企業の違いを十分に説明できなかったんだ。

◆カリスマは必要ない

🧒‍;つまりカリスマ(偉大な指導者)は必要ないと。前回もその話がでていましたね。

👨‍🦳‍;そこをもう少し詳しく見ていこう。ビジョナリー・カンパニーと比較対象企業で、会社の基礎をつくった人々のどのような点が決定的に違っていたかを説明する前に、興味深い推論を紹介しよう。

🧒‍;はい。

👨‍🦳‍;世間の注目を集めるカリスマ的なスタイルは、ビジョナリー・カンパニーの基礎を固めるのに、まったく不必要だという推論があるんだ。

🧒‍;基礎を固めるのに全く不要?全くですか。

👨‍🦳‍;そうだ。ビジョナリー・カンパニーの歴代の経営者のうち、とくに重要な人物のなかには、世間の注目を集め、明確なビジョンを持つカリスマ的指導者の典型のようなタイプではなかった人もいるんだ。ウィリアム・マックナイトを例にあげてみよう。この名前を知っている?

🧒‍;いや、知らないです。そもそも、アメリカの企業家はあまり知らないですが。

👨‍🦳‍;いや、マッキンゼー出身の著者たちも知らなかったんだ。1993当時で、フォーチュン誌の「アメリカ経営者の殿堂」に入っていないし、記事になったこともほとんどない。しかし、マックナイトが総支配人として52年間率いてきた会社は、世界中のビジネス関係者の間で、高く評価され、称賛の的になったんだ。

🧒‍;それはどの企業ですか?

👨‍🦳‍;その会社とは、あのミネソタ・マイニング&マニュファクチャリング、通称3Mでだ。3Mは有名だが、マックナイトは有名ではない。これはマッ イトの望みどおりだったと思うんだ。

🧒‍;えー3Mですか、その功労者が有名じゃないって、不思議です。

👨‍🦳‍;だろ?マックナイトは、1907年、平の経理助手として入社し、原価会計担当、販売責任者を経て、総支配人に就任した。強いカリスマ性を持って指導力を発揮したことを示す事実を見つけることはできなかったんだ。3Mが編纂した社史には、マックナイトに関する記述は五十近くあったが、人となりに触れた部分はひとつだけで、「穏やかな口調の紳士」とある。マックナイトの伝記では、その人柄について、「聞き上手」、「謙虚」、「控え目」、「うつむきかげんに歩く」、「慎み深い」、「口調が穏やか」、「物静かで、思慮深く、真面目」と評されている。

🧒‍;え?全くイメージ合わないです・・。

👨‍🦳‍;ビジョナリー・カンパニーの歴代の重要な経営者のうち、ビジョンを持ったカリスマ的指導者という典型的なモデルに合わないのは、マックナイトだけではない。ソニーの井深大さんも、控え目で、思慮深く、内省的な人物だと言われている。

🧒‍;確かに伝記を読むとそんな感じで書いてありましたね。(とはいえ盛田さんがいたが。)

👨‍🦳‍;それとほかの経営者たちについては、下記のようにコメントされている。

わたしたちが会ったビル・ヒューレットは、気さくで、生真面目で、冷静で、地に足のついたアイオワの農夫をほうふつとさせた。プロクターとギャンブルは、融通がきかず、きちょうめんで、礼儀正しく、控え目で、無表情でさえあった。ボーイングの歴代のCEOでもっとも重要なビル・アレンは実務家の弁護士で、「かなり内気で、めったに笑わない、どちらかといえば温和な人物」だった。ジョージ・W・メルクは、『メルクの謙虚さ』が服を着たような人物」だった。

とね。それと、彼らが、コンサルタントとして接してきた経営者のうち、多くの人たちが、カリスマ的指導者に関する本や記事を読んで、自分のスタイルとの落差を感じて質問したそうだ。「世間の注目を集めるカリスマ的な指導力が自分のスタイルではないとすると、どうなるのか」。

🧒‍;そうなのですか?

👨‍🦳‍;そして、著者は、「そうしたスタイルを身につけようとするのは、無駄な努力かもしれない。ひとつには、心理学の調査によると、人の性格は、かなり早い段階に、遺伝と経験が積み重なって形成されるものであり、経営者の地位についてから、基本的な性格を大きく変えられるとはとても思えない。そして、それ以上に重要な点として、わたしたちの調査によれば、いずれにせよ、そうしたスタイルは必要ない。」と答えたという。

🧒‍;そうしたスタイルは必要ないですか。。

👨‍🦳‍;ただし、誤解してはだめだ。彼らは、こうしたビジョナリー・カンパニーの基礎を築いた人々が、すばらしい指導者ではなかったと主張しているわけではないんだ。世間の注目を集めるカリスマ的なスタイルが、ビジョナリー・カンパニーを築くのに不可欠だと言えないのは明らかだと指摘しているだけだ。

🧒‍;そうですね。そして、カリスマがいるかいないかは、比較企業と有意差がなかったということなんですよね。不可欠と言えないということですね。

👨‍🦳‍;そうだ。もちろんビジョナリー・カンパニーには、その歴史の岐路になった重大な局面に、優秀な指導者が組織のトップにいたことは間違いがない。あとで触れるけども、ビジョナリー・カンパニーはきわめて有能な経営者を育成し、社内で昇進させる点で、比較対象企業より優れており、このため、何代にもわたって優秀な経営者が続き、経営の継続性が保たれているんだ。

🧒‍;優秀な経営者が輩出されていくのは卓越した組織であるからなのでしょうね。それがいい連鎖になっていくんですね。

👨‍🦳‍;例を挙げよう。1980年代初めにゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOになったジャック・ウェルチだ。ウェルチがGEの再活性化に多大な役割を果たしたことや、活気と意欲に満ちあふれ、求心力のある経営者であることは否定できない。

🧒‍;ジャック・ウェルチって外部から来たんでしたっけ?

👨‍🦳‍:それが違うんだ。注意しなければいけない点は、彼は生え抜きであり、そのウェルチがGEを変えた。GEという組織には、ウェルチを引き寄せ、社内で育成し、訓練を積ませ、指導者として選び出す能力があったのだ。彼の果たした役割は小さくないが、ゼネラル・エレクトリックの長い歴史からみれば、ほんの断片にすぎない。ウェルチがCEOに選ばれたのは、組織がしっかりしていたからだ。

🧒‍;なるほど、つまり、その組織をつくったのは、チャールズ・コフィンらの歴代の経営者であるということですね。

◆建築家のような方法

👨‍🦳‍;そう。そこで彼らはそのような、築くに人たちを、建築家のような方法をとった人々というようになるんだ。

🧒‍;建築家のような方法?

👨‍🦳‍;これまで話してきたように、ビジョナリー・カンパニーの草創期の重要な経営者は、指導者としてのスタイルに関係なく、比較対象企業の経営者より組織志向が強かった。著者たちは、調査が進むにつれて、「指導者」という言葉がしだいにしっくりしなくなり、「建築家」や「時計をつくる人」という言葉を使うようになったんだ。
次に話す、対照的な組み合わせを見れば 建築家のような方法、つまり、時計をつくる方法という言葉の意味がさらにはっきりする。

🧒‍;なるほど。知りたいです。

ウォルマート対エームズ
サム・ウォルトンが、派手でカリスマ性を持った指導者であったことは疑いの余地がない。しかし、ウォルマートのような企業を築けなかったほかの何千という経営者もそうだった。むしろ、サム・ウェ ルトンとエームズの経営陣の重要な違いは、ウォルトンの方が時計をつくる傾向、つまり、建築家としての傾向がはるかに強かった点にある。

👨‍🦳‍:例えば、ウォルトンは、変化、実験、不断の改善を大切にした。しかし、こうした価値観を説いただけではなく、変化と改善を促す組織としての具体的な仕組みを整えたんだ。「店舗のなかの店舗」と呼ばれるコンセプトを打ち出し、部門責任者にそれぞれの部門を自分の会社であるかのように運営する権限と裁量を与えた。

🧒‍;権限と裁量を与えた・・。なるほど。

👨‍🦳‍;ほかの店舗でも使えそうな経費節減やサービス向上のアイデアを出した従業員には奨励金を出し、表彰した。「集中販売促進コンテスト」をはじめて、従業員が創造的な試みに取り組むことを奨励した。利益分配制度や従業員持ち株制度は、それ自体が、従業員が新しいアイデアを生み出そうとする刺激になり会社にもプラスになった。従業員が生み出した助言やアイデアは、ウォルマートの社内報で発表された。さらに、衛星通信システムにまで投資し、「会社に関するどんな小さな情報でも、できるかぎり早く広めるようにした」。

🧒‍;おお、時計を作っているイメージ解ります。

👨‍🦳‍:一方、エームズの経営陣は、どんな変更でもすべて上から命じ、店長の行動をマニュアルでことこまかに指図し、自主性を発揮する余地を残さなかった。ウォルトンは、自分がこの世を去ったのちに会社を引き継ぐ有能な後継者としてデービッド・グラスを育てたが、ギルマン兄弟にはそうした後継者がおらず、経営哲学がばらばらな部外者に会社をゆだねることになった。

🧒‍;なるほど。。

👨‍🦳‍;ウォルトンは、時計をつくる志向を後継者に伝えたが、創業者なきあとのエームズのCE0は、成長のために成長することだけを考えていた。ウォルトンはウォルマートが将来、成功するための重要な要素について述べるなかで、「ウォルマートの社員が道をひらいていくだろう」、「当社の社員は活気に満ちあふれている」と語ったんだしかし、同じ時期、エームズのCEOは「重要な問題は、市場シェアだ」と語っていた。

🧒‍:その結果どうなったかですね。

👨‍🦳‍:その結果、1990年、フォーブス誌のエームズに関する記事は、「共同創業者のハーバート・ギルマンは、自分がつくった会社が壊れるのを、なすすべなく眺めている」と悲劇を伝えている。それに比べて、サム・ウォルトンは幸せだった。自分がつくった会社が壊れることはなく、自分がいなくなったのちも、これまで以上に力強く、長く繁栄できると確信しながら、この世を去っていったんだ。ウォルトンは、自分が2000年までは生きられないと知りながら、1992年に亡くなる直前に、2000年までの大胆な目標を定め、
自分がいても、いなくても、会社はこの目標を達成できるとの強い自信を持っていた。

🧒‍:大きな差になってしまいましたね。でも、やっぱり短期的な利益であったり結果を求めると、仮にそれがうまくいったように見えても長期的にみて、それは悪い方向にしかいかないということですね。時計を作るっていうの長期的にみて本当に正しいことを積み上げていくということなのですね。現場管理でもこの言葉本当に当てはまります。短期的な改善での人員削減とか悪でしかないですよ。

◆メッセージ

👨‍🦳‍:そう。その長期的見てというところが重要だね。ビジョナリー・カンパニーを築くにあたって、とくに重要な方法は、行動ではなく、視点を変えることなんだ。次の章からは、行動に関する発見がたくさん出てくる。しかし、それを活かすには、正しい考え方を身につけなければならない。それが、この章のポイントだったんだ。

🧒‍;はい。ビジョナリー・カンパニーが成功したのは、基本的な過程、基礎になる考え方や行動指針が組織に深く根づいていることが一因になっているのですよね。

👨‍🦳‍;そう。会社を築き、経営する仕事に携わっているのであれば、製品についてすばらしいビジョンを考えたり、カリスマ的指導者になろうと考える時間を減らし、組織についてのビジョンを考え、ビジョナリー・カンパニーとしての性格を築こうと考える時間を増やすべきだ。君も課長になったならば何をすべきかということが少し見えたのではないかい?

🧒‍;はい。自分のチーム基本的な考え方、行動指針を構築することから始めるべきだと思ってきました。時計を作るって、さらにその上で実践でその行動を実施してみて経験を組織として溜めていくことなんじゃないかなって思いますね。

👨‍🦳‍:そう。それがわかっていれば、いいんじゃないか。これで、2章は終わりだ。ここの章で伝えたかったことは、時を告げる志向から時計をつくる志向へと発想を転換すれば、ビジョナリー・カンパニーを築くために必要な点の大部分は学ぶことができるってことだ。そして、すばらしいアイデアがひらめくまで、じっと待たなくてもよい。カリスマ的指導者もいらない。基本的な点を学べば、自分たちの会社をビジョナリー・カンパニーにする困難な作業に、だれでも、いますぐ、とりかかることができる。ってことだ。
 よし、次回は、挿話を少しいれて、第3章に入っていくぞ。

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 今回で、第二章“時を告げるのでなく、時計を作る”は終了です。やはり、深いし長いですね。次回は、第三章“利益を超えて”について記載したいと思います。新たな視点や実例が出てきます。これを気に細かく見てみたいという方は、ぜひ、フォロー、スキよろしくお願いします!

続きの投稿です。


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