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逆噴射小説大賞応募作品

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記事一覧

お絵かきをやめて

 寝て起きたら、俺は子供が描いたクレヨン絵みたいな世界にいた。
 助けて欲しい!
 ここはどこ、というか何なんだこれは!?
 誰か、俺が見えるか?
 この声が聞こえたら返事をしてくれ。
 誰かいないか?これはいつ終わる?

 断じて俺はドラッグなんて手を出してないし、心の病気も患っちゃいない。
 いや、ひょっとしたら俺の精神はもう壊れてしまったのか?今は自信がない。
 とにかく視界の全てがクレヨ

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夢のゾンビ生活

 俺は念願のゾンビになり、ムカつく奴らを噛みまくっている。
「うああああ!来んな来んな!あああ!!」
 ビビりまくってるコイツは竹村。
 前のバイト先で俺を散々コケにしていた奴だ。
 竹村を壁際に追い詰めた俺は、勝ち誇って叫ぶ。
「うおおおまえ!まえは苦しんで死ね!」
 生前とは比べ物にならないゾンビの怪力で竹村を掴むと、俺はそのままコイツの腕や肋骨を握り潰す。
「ああ!ぎゃあああ!!」
 恐怖と

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シャブと暴力の解禁

シャブと暴力の解禁

 この国でもやっと大麻が解禁されたが、シャブと暴力の自由化がやってくる日が来ると、お前らはマジで信じているのか。
 それもデモだ?
「ちゃんとぅ、合法化運動をやっれこなかったのがぁ、悪いんだよぅ〜」
 シャブ中の政が呂律の回らない口でそう言った。
「だろ!誰かがいい加減、人が生まれながらに持つ自由暴力の権利を訴えるべきだ!」
 聖也は捕まえたそこらの若者を踏みつけながら叫んだ。
「シャブや暴力が社

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アース・オブ・ザ・デッド

アース・オブ・ザ・デッド

 また友が襲われ、食われ、奴らと同化してしまった。
 恐怖で第4ヒレの変色が止まらない。
 この星の知的生命体(とは考えたくないおぞましい姿をした奴らではあるが)の思考はまるで理解できない。

「どこよ!人魚さ!」
「おらなんだ!」
「あの由井正雪ゆうもんに先越されてまう!」
「はよ捕まえて食うど!」
 どうやらこの鱗無しの二本脚……まるで悪趣味ホラー放送夢に出てくる様な連中は、我々を食う事で

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杉並区の武器屋さん

杉並区の武器屋さん

 俺みたいな奴は、就職は愚か、バイトも出来やしない。
 だから自分の店を始める事にした。
 俺はスイカが好きだ。
 自分の好きな物なら仕事にできるはずだ。
 早速、スーパーや八百屋でスイカを買ってきて、自分のアパートの前で売り始めた。
 全然売れない。
 もうだめだ。
 3日頑張ったが、俺はスイカ屋を廃業した。

 次に俺は武器屋を始める事にした。
「ここは武器の店だ」
「さっそく装備するかい

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糞ったれDJ!ぶっ殺し太郎さん

糞ったれDJ!ぶっ殺し太郎さん

 フロアは血塗れで、匂いも凄い。
 「つまんねえつまんねえ。次、早く次の曲。」
 男は、血に濡れた日本刀をDJに突きつけて言い放つ。
 股間を濡らしたDJが、ガタガタと震えながら、レコードバックを漁る。
 右のターンテーブルで回転するのは、4つ打ちハウスとジャズが合わさった北欧系の洒落た楽曲だ。
 左のターンテーブルで回転するのは、レコードではなく切断された人間の首だ。
 まだ若い、二十代半ばの青

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この世と俺らの境界線

この世と俺らの境界線

 奴らの領域が膨張し、包囲網は突破された。

 肥満児は、長い木の棒で警官の腹を易々と貫く。
「う……お?」
——馬鹿な?
 こんなせいぜい小学5年の子供が?
 防刃ジャケットをあんな木の棒で?
 銃弾は命中したのに平気なのか?
 警官の頭を、数々の疑問が一瞬で過ぎり、激痛が疑問を追い出した。
 だがその痛みもすぐに消えた。
 警官の身体は、見る見るうちに制服ごと小さくなり、茶色い塊へと変貌する

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