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弁護士ばんぷうの離婚裁判百選

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記事一覧

離婚裁判百選番外編㉗不倫になりやすい職場がある?

離婚裁判百選番外編㉗不倫になりやすい職場がある?

 しかし、これには一定の条件があることも指摘されています。それは、職場に異性が多くても離婚になりにくい条件がある。それは、夫婦とも同一の職場で働いていること、だそうです。
 一方で、第3の波とでもいいましょうか。マッチングサイトを通じた出会いを考えてみると、離婚や不倫のリアルは変容しつつあるのではないかと考えています。
 マッチングアプリを通じて不倫を行うのであれば、職場の同僚や知人、同じ組織の異

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離婚裁判百選㉖番外編ーローマ法からの示唆

離婚裁判百選㉖番外編ーローマ法からの示唆

結論、できます。実際にこれを実現した事例を担当したことも多くあります。多くは、

 結論、浪費分は本来あるべき夫婦財産を算出する過程において考慮されますので、財産分与で考慮をすることができます。しかし、実際にどこに財産があるのか、本当に浪費はこれですべてなのか、など、不安は残ります。
 しかし、それにもまして旦那側の抗弁内容は、感情的にも受け入れられるものではありません。法律学の観点からも、実は根

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離婚裁判百選㉕婚姻費用の終期を短くする方法?

離婚裁判百選㉕婚姻費用の終期を短くする方法?

婚姻費用の終期? 下級審の裁判例には、1年間に限定して分担を命じる事例や、5年に限定して支払金額を決定した方法を採用したものがあります。いずれも、昭和時代のものではありますが、いっぽうで、「終期を定めないほうがむしろ現実の事態に適応するものであり、かつ制度の趣旨にもかなうものというべきである」と判示する事例も同じ時期に散見されています。しかし、これらの事例はいずれも、平成8年に夫婦関係の破綻が生じ

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離婚裁判百選㉔番外編ー生殖にとっての責任及び婚姻の承認を読んで

離婚裁判百選㉔番外編ー生殖にとっての責任及び婚姻の承認を読んで

Scott FitzGibbon【ボストン大学ロースクール教授】「生殖にとっての責任及び婚姻の承認〔訳:鈴木伸智〕という論文(『21世紀の家族と法小野幸二教授古稀記念論集』768頁以下(法学書院,2007)を読、んだ。
 著者は、一男一女の婚姻が、生殖にとって正当であるに違いないと結論を導いています。
 

 論者は、婚姻以外の形態を排斥する趣旨ではなく、生殖の関係に最も適切な関係は婚姻であると位

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離婚裁判百選㉓立証が足りないとはどんな場合なのか?

離婚裁判百選㉓立証が足りないとはどんな場合なのか?

0 はじめに
 証拠がなくて負けてしまう。しかし絶対に不倫をしている‥そんな悔しいことがあるのでしょうか。実際にあるので、敗因を分析してみましょう。証拠がすべてだとみる向きもあるかもしれませんが、証拠をどのように効果的に使うかは、分析次第なのではないでしょうか。早速やってみます。

1 事案の概要
 東京地方裁判所において平成27年7月23日に出された裁判例は、原告の主張に対し事細かな反論をし、請

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離婚裁判百選㉒不貞行為をしない合意を破るとどうなるのか

離婚裁判百選㉒不貞行為をしない合意を破るとどうなるのか

0 夫婦で不貞行為をしない約束? 夫婦間が不貞行為をすると離婚原因となります。しかし、不貞行為をしない約束をした場合、裏切られた場合の条件を定めた場合には、どんなことになるのか。法律では明確ではありません。

1 裁判例のご紹介 東京地方裁判所において令和3年3月25日に出された裁判例は、婚姻関係にあった原告と被告が、被告の不貞行為発覚後、被告が浮気と疑われる行動を取らないことなどを約束し、被告が

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離婚裁判百選㉑夫婦関係の破綻の判断方法?

離婚裁判百選㉑夫婦関係の破綻の判断方法?

離婚裁判百選⑳では、夫婦関係の破綻に関し、離婚調停申立てを一つ重要な要素として判断した事例を検討しました。今回は、不貞行為後離婚調停を申し立てられていたケースにおいて、離婚調停申し立ての有無は夫婦関係の破綻において認定されていないと判断している事例です。

1 事案の概要東京地方裁判所において令和3年5月21日出された裁判例は、原告が300万円の慰謝料を求めたのに対し、132万円の範囲で請求を認容

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離婚裁判百選⑲調停の歴史?と現代の調停

離婚裁判百選⑲調停の歴史?と現代の調停

 調停委員の有識者?から、❶こんな調停なんてどうせ成立しない❷どうせ調整できない、など、心ないことばを言われてきたことがあります(事実です)。なんとか粘り、ようやく次回成立見込みが立ちました。

 調停委員ではなく裁判官に入ってもらい、ようやく話ができた状況でした。※ちなみに、調停委員の方は、話を聞きながら記録を投げ、ペンを投げたりしていました(これも事実です)。『冷静にお話しいただけませんか』と

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離婚裁判百選⑱未婚化から考える

離婚裁判百選⑱未婚化から考える

 不倫を原因とする、被害者から自身の配偶者以外の第三者への慰謝料請求は、制限されるべきであると指摘するのが学説の趨勢である、これに対して裁判所は、制限をしていないことは指摘をしました。別の観点で、そもそも不貞行為を原因とする慰謝料請求そのものは、ともすると、どんどん事件としては減ってしまう余地があるのではないか?が、この記事の仮説です。

1 家族社会学から考える
 岩間ほか「問いからはじめる家族

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離婚裁判百選⑰不倫慰謝料を不貞相手に請求できないと主張すると?

離婚裁判百選⑰不倫慰謝料を不貞相手に請求できないと主張すると?

世界でもまれにみる、不貞慰謝料請求が認められる国が日本です。
不貞慰謝料請求は制限される方向にあることは、有力な学説のほとんどが承認している状態です。では、実際の裁判の現場で、不貞慰謝料を他方配偶者ではなく第三者(一緒に不貞行為をした不倫相手)に対して制限できない、と反論した場合、裁判所はどうはんだんするのか?

1 裁判例の検討
 東京地方裁判所において令和3年2月15日に出された裁判例は、原告

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離婚裁判百選⑯不倫をすると親権者になれないのか

離婚裁判百選⑯不倫をすると親権者になれないのか

0 はじめに
一度不倫をしてしまうと、一切親権者とはなれないのか。答えはNOです。ただし、不貞行為自体は適格性を疑わせうる事情であることは指摘しなければなりません。

1 親権者・監護者と不貞行為
道垣内 弘人 編 松原 正明 編『家事法の理論・実務・判例2』(勁草書房、2018年)187頁以下は、一般的には当然に適格性を欠くとはいえないが、これらの行為により子の監護に支障が生じたか、また、将来生

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離婚裁判百選⑮番外編アプリを通じて既婚を秘匿すると不法行為となるのか

離婚裁判百選⑮番外編アプリを通じて既婚を秘匿すると不法行為となるのか

0 はじめに不倫裁判百選(実際には112選くらい)では、不貞行為について主に、離婚裁判百選では、離婚にまつわる裁判例を検討しています。

今回は、既婚であることを秘匿され、偽わられた、しかし図らずも不貞行為をしてしまった、不貞行為に加担することになってしまった被害者(しかし配偶者に対しては図らずとも加害者)は、既婚であることを秘匿していた側に何か請求ができるのか。結論、できます。

1 106万円

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離婚裁判百選⑭番外編江戸時代の離婚Ⅱ

離婚裁判百選⑭番外編江戸時代の離婚Ⅱ

江戸時代の離婚は、離縁と呼ばれていました。三行半と呼ばれた離縁状を渡す必要があったことはご紹介しました(実は武士の場合には、両家の当主から双方熟談の上離縁となった届け出があればよかったそうです)。熟談、とは今でいう協議離婚が必要で、夫からの離縁状のような一方的な離婚は認められていなかったようです。庶民の場合には、離縁状が原則必要でした。

『縁切寺』は、全国に二か所しかなかった(鎌倉と群馬県太田市

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離婚裁判百選⑬番外編 不倫をすると首になるのか?それでいいのか。

離婚裁判百選⑬番外編 不倫をすると首になるのか?それでいいのか。

実は何度か、不倫裁判百選において扱ってきたテーマです。

不倫をすると、配偶者からの慰謝料請求をもって解決されるのが通常ですが、事象を細かくみていくと、それだけではない問題になってしまう現象が多いと指摘できるのです。

1 不倫相手の問題石嵜 信憲編『懲戒処分の基本と実務』(中央経済社、2019年)67頁は、『社内における不倫、社外でも同僚の配偶者、取引先の関係者等企業と関連性を有する人物との間の

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