離婚裁判百選⑳では、夫婦関係の破綻に関し、離婚調停申立てを一つ重要な要素として判断した事例を検討しました。今回は、不貞行為後離婚調停を申し立てられていたケースにおいて、離婚調停申し立ての有無は夫婦関係の破綻において認定されていないと判断している事例です。
1 事案の概要
東京地方裁判所において令和3年5月21日出された裁判例は、原告が300万円の慰謝料を求めたのに対し、132万円の範囲で請求を認容しています。
2 争点及び争点に関する当事者の主張
(1) 婚姻関係の破たんの有無
被告は原告の元配偶者から夫婦関係がないと相談をされていたこと、離婚調停を申し立てたのは、不貞行為を問いただすより以前のこと、であることを論拠として夫婦関係の破綻は不貞行為が原因なのではなく、破綻は不貞行為前から生じていたと反論しています。
3 裁判所の判断
4 若干の検討
この裁判例では、離婚調停の成立・調停条項への不貞行為を認める事実の記載をもってしても、離婚調停を夫婦関係の破綻としては重視していないことが理解できます。夫婦関係破綻の事実に関しては、被告が交際者から夫婦関係がうまくいっていないと説明されたと主張しているものに対し、『不貞行為に及ぶ関係においてはよくあること』と説明されています。破綻の判断にあたっては離婚調停の事実は認定すらされていません。離婚調停の申立の有無が破綻において重視されるのではなく、離婚調停申し立ての『時期』が重要だと思われます。申立の時期、は、当事者にとっても揺れることが多いので、早ければよいというものでもないから、難しい。