白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。…

白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。趣味は「夕日眺めながら山頂読書」「行き先・ルートを決めないウオーキング・旅行」、登山、書道、数学難問解法探求、clubhouse聴き専。座右の銘「人生の本舞台は常に将来に在り」(尾崎行雄)

記事一覧

「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.16

 利子率決定のテイラー・ルールをマクロ経済モデルに接合したマクロ・ニューモデルが出現したのは2000年初頭の頃である。それから四半世紀到達が目前となっている。利子率…

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白鳥修平
2日前
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「金融財政政策雑感」no.25

 日本銀行が政策金利(日銀当預の付利)をマイナスに決定した、2016年初頭のころ、ある研究会でその政策的是非が論争になった。その論争の詳細はともかく、こうした論争の時…

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白鳥修平
5日前
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「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

付加価値生産高の総需要決定マクロ・モデルに基づいて、加速的インフレーションを分析した論考は古くから存在する。加速的インフレーションが定常インフレ率に収束するか…

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白鳥修平
1か月前
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「物価と名目賃金の循環構造」no.29

実質賃金率と在庫ストックが生産と雇用の決定に影響する「加速的インフレマクロ経済モデル」を整合的に構築し、インフレ過程の短期的、安定性・不安定性を分析する。そ…

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白鳥修平
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「2024年4月桜」no.2 (吉野山)

 2024年4月4日、雨上がりの早朝、筆者は近鉄南大阪線で奈良県の吉野に向かった。近鉄南大阪線の出発点、大阪阿部野橋駅から、急行に揺られ揺られて、やっと吉野駅に到着し…

白鳥修平
1か月前
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「2024年4月桜」no1.

 兵庫県西宮市、北山貯水池、北山緑化植物園、辺りに咲き誇るさくらを紹介し、夙川を下る。定点観察を続けているが、年ごとに、変貌をとげているように思う。さくらにも気…

白鳥修平
1か月前
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「物価と名目賃金の循環構造」no.27

 総需要が生産量を決定するというケインジアン・マクロ経済モデルで、労働分配率が定常値に収束するかどうかを分析してきた。ケインジアン・モデルは、この連載記事no.15…

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白鳥修平
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「物価と名目賃金の循環構造」no.28

 2024年3月19日、日本銀行はマイナス金利付き異次元量的金融緩和の新金融政策を転換した。YCCも廃止した。金融政策の正常化に向けて歩みだした。その理由は、2013年初頭の…

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白鳥修平
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「物価と名目賃金の循環構造」no.26

 金融的要因を与えれば、総需要が実質所得(生産量)を決定するというマクロ経済モデルは、ケインズ経済学のテキスト・モデルの中心にある。ケインズの古典的モデルが総需…

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白鳥修平
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「物価と名目賃金の循環構造」no.25

物価上昇と名目賃金率上昇の好循環モデルを、総需要による生産量(=実質所得)決定モデルで分析できることを示すことは、この問題対する基本的な問題の中の一部にしか過…

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白鳥修平
3か月前
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「金融財政政策雑感」no.24

 マンデル=フレミング・モデル(以下、MF・モデル)が仮定するように、内外債券収益率が瞬時に均等化すると仮定する。自由な資本移動と内外債券の完全代替が仮定され…

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白鳥修平
3か月前
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「金融財政政策雑感」no.23

インフレ目標付き名目利子率誘導金融政策と財政政策の有効性を加速的インフレーションマクロ経済モデルで比較検討する。これまで、物価変動なしの最も単純なモデルで、…

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白鳥修平
3か月前
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「物価と名目賃金の循環構造」no.24

 筆者は、これまで、開放マクロ経済分析のキー変数である名目為替相場について、データ・ベースを反映した定式化を重要な構成要素として分析してきた。名目為替相場変化率…

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白鳥修平
3か月前
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「物価と名目賃金の循環構造」no.23

 数回に渡って需要決定マクロ経済モデルにおいて、インフレ率が定常値に収束する定常均衡の不安定性について分析してきた。定常均衡とは、実質為替相場が定常値に収束し…

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白鳥修平
3か月前
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「陋巷に立つ」歌集no.4

  筆者は陋巷と殷賑が混ざり合った街が好きだ。今回もそれにまつわる短歌八首を、その歌づくりのエピソードを交えて紹介することにする。考えひねくり回した歌は佳編とは…

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白鳥修平
3か月前
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「物価と名目賃金の循環構造」no.22

 マンデル=フレミング・モデル(以下、MF・モデル)も、実質生産量の総需要決定モデルであると、筆者は考えている。この規定自体が、大きな論争に晒されているが、筆者…

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白鳥修平
3か月前
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「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.16

「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.16

 利子率決定のテイラー・ルールをマクロ経済モデルに接合したマクロ・ニューモデルが出現したのは2000年初頭の頃である。それから四半世紀到達が目前となっている。利子率決定のためのLM曲線のないケインジアン・モデルという触れ込みは、当初、マクロ経済モデルの大きな転換であると意識された。戦後の経済学の数少ないパラダイムの転換の一つであり、その整合性には十分な理論的検証が必要であった。筆者は、利子率決定の

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「金融財政政策雑感」no.25

「金融財政政策雑感」no.25

 日本銀行が政策金利(日銀当預の付利)をマイナスに決定した、2016年初頭のころ、ある研究会でその政策的是非が論争になった。その論争の詳細はともかく、こうした論争の時に、その前提となる仮説を、頭から否定して得意になる論者がいることである。その要諦は、こうである。マイナス政策金利を採用することにより、既に十分に低水準にある市中貸出金利の一層の低下を誘導する金融政策の有効性を問題にすること自体に意味が

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「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

付加価値生産高の総需要決定マクロ・モデルに基づいて、加速的インフレーションを分析した論考は古くから存在する。加速的インフレーションが定常インフレ率に収束するかどうかの安定性が、この分析の中でとりわけ重要な論点である。市場均衡が常に成立していても、長期の安定性は、一般的には保証されない。それを成立させる条件は、マクロ貨幣需要関数の性質(関数形)に依存している。
 上記の初等経済学的分析では、現金

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「物価と名目賃金の循環構造」no.29

「物価と名目賃金の循環構造」no.29

実質賃金率と在庫ストックが生産と雇用の決定に影響する「加速的インフレマクロ経済モデル」を整合的に構築し、インフレ過程の短期的、安定性・不安定性を分析する。そのためには、財市場の不均衡調整変数が実質賃金率であるというケインズ的仮定を放棄しなければならない。財市場の不均衡を調整する変数は在庫ストックの変化である。実質賃金率と同様に在庫ストックの保有も、企業の生産にとってはコストであることは明白で

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「2024年4月桜」no.2 (吉野山)

「2024年4月桜」no.2 (吉野山)

 2024年4月4日、雨上がりの早朝、筆者は近鉄南大阪線で奈良県の吉野に向かった。近鉄南大阪線の出発点、大阪阿部野橋駅から、急行に揺られ揺られて、やっと吉野駅に到着した。もう、9時20分を過ぎていた。
 吉野山に登る最初の山路は、商店街のような出店のオンパレードであった。元気な店員さんの呼び込みの声にうながされ、よもぎ饅頭やくずもちを食べながらの行程であった。

 周知のように、吉野は、下千本、中

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「2024年4月桜」no1.

「2024年4月桜」no1.

 兵庫県西宮市、北山貯水池、北山緑化植物園、辺りに咲き誇るさくらを紹介し、夙川を下る。定点観察を続けているが、年ごとに、変貌をとげているように思う。さくらにも気候変動の影響が明らかに表れている。温暖化が進むと、同じ地点でも一気に開花しないそうだ。それでもやはり、美しいと感じる。

        もう、葉桜のようだ。

  少し、ピンクがかって、よく手入れが行き届いている。この貯水池の花は桜に限ら

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「物価と名目賃金の循環構造」no.27

「物価と名目賃金の循環構造」no.27

 総需要が生産量を決定するというケインジアン・マクロ経済モデルで、労働分配率が定常値に収束するかどうかを分析してきた。ケインジアン・モデルは、この連載記事no.15で、短期新古典派モデルは、no.16で取り上げて分析してきた。いずれも条件付きであった。それが、安定条件でその経済的意味が重要である。二つのモデルとも、あくまで筆者のオリジナルな構成であり、一般にケインジアン、新古典派と認められたもので

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「物価と名目賃金の循環構造」no.28

「物価と名目賃金の循環構造」no.28

 2024年3月19日、日本銀行はマイナス金利付き異次元量的金融緩和の新金融政策を転換した。YCCも廃止した。金融政策の正常化に向けて歩みだした。その理由は、2013年初頭の政府・日銀共同の政策目標である2%のインフレ目標を安定的かつ持続的に達成することへの確信を深めたことである。すなわち、政策転換の条件が整ったと判断したということであろう。特に、物価と名目賃金率の上昇の好循環の実現をその条件とし

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「物価と名目賃金の循環構造」no.26

「物価と名目賃金の循環構造」no.26

 金融的要因を与えれば、総需要が実質所得(生産量)を決定するというマクロ経済モデルは、ケインズ経済学のテキスト・モデルの中心にある。ケインズの古典的モデルが総需要=総供給・モデルによる実質賃金率と雇用決定のモデルであったことを考えれば、この総需要決定モデルは、ケインズ・モデルの需要サイドだけでマクロ経済を分析しようとしているのか、それとも実質賃金率が硬直的であるモデルのいずれかである。そこで、こ

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「物価と名目賃金の循環構造」no.25

「物価と名目賃金の循環構造」no.25

物価上昇と名目賃金率上昇の好循環モデルを、総需要による生産量(=実質所得)決定モデルで分析できることを示すことは、この問題対する基本的な問題の中の一部にしか過ぎない。総需要決定モデルは、同時に雇用決定モデルでもある。総需要・総供給モデルが模索されてから久しい。短期および中期の政策の面からは、インフレ抑制政策もデフレを阻止することを目的としたリフレ政策もいずれも、総需要サイドへの作用を通じて政

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「金融財政政策雑感」no.24

「金融財政政策雑感」no.24

 マンデル=フレミング・モデル(以下、MF・モデル)が仮定するように、内外債券収益率が瞬時に均等化すると仮定する。自由な資本移動と内外債券の完全代替が仮定される。この条件で、外国利子率が外生変数で、短期的に自国通貨建て予想名目為替相場が与えられれば、自国利子率が名目為替相場を決定する。MF・モデルは、この名目為替相場決定理論を、標準的なIS/LM・モデルに接合する。自国利子率を決定する分析装置は

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「金融財政政策雑感」no.23

「金融財政政策雑感」no.23

インフレ目標付き名目利子率誘導金融政策と財政政策の有効性を加速的インフレーションマクロ経済モデルで比較検討する。これまで、物価変動なしの最も単純なモデルで、この課題を分析して基本的な政策命題を提起したのは、マンデル=フレミングであった。その拡張、修正は歴史的に数多く試みられてきたけれども、依然として重要なことは、その淵源に潜む基本的な矛盾や非整合性であることは言うまでもない。単純なモデルだか

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「物価と名目賃金の循環構造」no.24

「物価と名目賃金の循環構造」no.24

 筆者は、これまで、開放マクロ経済分析のキー変数である名目為替相場について、データ・ベースを反映した定式化を重要な構成要素として分析してきた。名目為替相場変化率と内外金利(格)差との間には、相関があることは言うまでもないが、現実データ的には、タイムラグが存在する。それを無視し、同時決定の直接的影響を仮定してきた。その難点を回避し、理論的に興味ある論点は、内外金利差によって予想名目為替相場変化率が影

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「物価と名目賃金の循環構造」no.23

「物価と名目賃金の循環構造」no.23

 数回に渡って需要決定マクロ経済モデルにおいて、インフレ率が定常値に収束する定常均衡の不安定性について分析してきた。定常均衡とは、実質為替相場が定常値に収束し、予想インフレ率が実現インフレ率に収束する状態と定義される。不安定であれば、加速的インフレーションが際限なく進行する。それを止めるために、総需要抑制政策を金融財政政策手段による引き締め政策で実施することが必要となる。
 このようなモデルでは

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「陋巷に立つ」歌集no.4

「陋巷に立つ」歌集no.4

  筆者は陋巷と殷賑が混ざり合った街が好きだ。今回もそれにまつわる短歌八首を、その歌づくりのエピソードを交えて紹介することにする。考えひねくり回した歌は佳編とはなりえない。一気にリズミカルに出た歌が秀逸である。それは、J-Popと同じである。日本人には、どうも、五七五七七の31文字の韻律が深く刻み込まれているみたいだ。思いを率直に流れ出るような歌が良い。
 分かりやすい歌だねと、ある知り合いの俳人

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「物価と名目賃金の循環構造」no.22

「物価と名目賃金の循環構造」no.22

 マンデル=フレミング・モデル(以下、MF・モデル)も、実質生産量の総需要決定モデルであると、筆者は考えている。この規定自体が、大きな論争に晒されているが、筆者の捉え方は、後述するが、こうである。
 これまで、数回に渡って、総需要決定モデルで加速的インフレの不安定性について分析してきた。その最後を飾って、MF・モデルで、この課題を検討する。それは、いまだに、このモデルと分析結果が、政策論争の一方の

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