見出し画像

「金融財政政策雑感」no.27

  利子率決定の分析装置として、古典的なLM曲線の代替ツールとして、「テイラー・ルール型金融政策」をマクロ経済モデルに接合して、政策利子率と貨幣供給の相互関係を明示的に定式化したトータルの金融政策の有効性を分析することが、近年、リアリティのある分析として評価されている。これは、いわゆる「政策テイラー・ルール」であるが、利子率政策によって誘導されるのは、市場利子率である。この操作がほぼ市場利子率をコントロールできるとすれば、テイラー・ルールによって市場利子率が決定されるとして、短期マクロ経済モデルを構成し、金融政策の有効性を分析するということが可能となる。勿論、現実には誤差はあるが、それが決定的なものでない限り、理論的には有効であろう。
 前者の政策テイラー・ルールを採用したモデルは、動学的金融政策モデルとなることは明らかである。量的変数である貨幣供給が動学的変数となるので、市場利子率を決定するLM曲線は必須である。ワルラス法則の制約のもと、代替的に証券市場の均衡条件が取って代わってもよい。後者のモデルでは、市場利子率そのものがテイラー・ルールを通じて直接決定されるので、政策利子率自体は明示的ではない。前者の動学的金融政策モデルの定常均衡が後者のモデルとなるというのが、筆者の見解である。実証的にも、政策テイラー・ルールが予想する利子率が実現市場利子率とどの程度誤差があるかによって金融政策の有効性が分析される。後者のモデルでは、明示的なマクロ内生変数の決定においてLM曲線は必須ではないが、これと証券市場の均衡条件との間で新たな整合性の問題が生じる。単純なモデルでも複雑に錯綜するこうした謎とも言うべき問題の筆者の解決案を提示する。

ここから先は

3,905字

¥ 700

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?