白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。…

白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。趣味は「夕日眺めながら山頂読書」「行き先・ルートを決めないウオーキング・旅行」、登山、書道、数学難問解法探求、clubhouse聴き専。座右の銘「人生の本舞台は常に将来に在り」(尾崎行雄)

最近の記事

「金融財政政策雑感」no.27

 利子率決定の分析装置として、古典的なLM曲線の代替ツールとして、「テイラー・ルール型金融政策」をマクロ経済モデルに接合して、政策利子率と貨幣供給の相互関係を明示的に定式化したトータルの金融政策の有効性を分析することが、近年、リアリティのある分析として評価されている。これは、いわゆる「政策テイラー・ルール」であるが、利子率政策によって誘導されるのは、市場利子率である。この操作がほぼ市場利子率をコントロールできるとすれば、テイラー・ルールによって市場利子率が決定されるとして、

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    • 「金融財政政策雑感」no.32

       デフレの時代は過ぎ去り、インフレの時代が到来したとの主張が確信をもって語られるようになった。平成時代の難渋を極めたデフレと円高の悪循環に思いを馳せると、今日、隔世の感がある。当時、円高がデフレの真因であると円高是正のための為替介入の必要性が声高に訴えられた。詰まりに詰まって2013年初頭、リフレ派の主張する2%のインフレ目標を掲げたアベノミクスの政策が打ち出された。今はその白熱した当時の議論も、新たな装いの下に語られるようになった。だが、2%のインフレ目標が政府・中央銀行の

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      • 「物価と名目賃金の循環構造」no.31

         中央銀行は、巷では物価の番人と言われているようである。マネタリストを信奉しようがしまいが、中央銀行の金融政策が物価に大きな影響を与えると信じており、中央銀行は物価目標(インフレ目標)を最重要政策目標として掲げていることは誰しも認める事実である。そして、その達成状況を国民に説明しなければならない義務を負い、それが今日実行されていることもまた、我々が今日見ている世界である。この圧倒的なリアリティを反映するような物価決定理論が求められてから随分と年月が経過しているように思えてなら

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        • 「金融財政政策雑感」no.30

           財政支出拡大政策が、財政赤字と結びつくのが、先進国経済の一般的なリアリティである。先進国では均衡財政拡張政策は稀でしかない。むしろ、拡張政策には、財源としての新規国債発行に制限をかけることにより制約を課すのが一般的である。今回は、財政支出のファイナンスを収支均等式の形式で表し、単純なマクロ経済モデルに接合し、国債残高が際限なく累積していくのか収束していくのかを問い、その条件を分析する。つまり、財政破綻、財政健全化がどのような条件の下で成立するかを分析する。

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        「金融財政政策雑感」no.27

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          「金融財政政策雑感」no.29

           名目利子率の決定のためのテイラー・ルールを単純なマクロ経済モデルに接合し、金融政策と財政政策の有効性について比較検討する。接合するためのインターフェースは何か。それは、テイラー・ルールによつて決定される名目利子率を実現するための内生的実質貨幣供給である。財政政策については、名目財政支出の増加率を政策変数とする。この名目伸び率を政策変数とするという仮定にはリアリティが存在すると考える。財政当局はインフレの進行とともに貨幣錯覚に陥る。これまでの伝統的モデルで政策変数であった、実

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          「金融財政政策雑感」no.29

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          「金融財政政策雑感」no.28

           前々回(no.26)解説した古典的な加速的インフレ・モデルでは、インフレ率の予想値が現実値に収束する長期均衡では、インフレをコントロールしているのは金融政策であり、財政政策ではない。財政拡張政策は短期では有効であるが、長期均衡では有効性を失う。だが、このマクロ的分析は、財政政策に関する限り、皮相な見解をもたらしている。古典的モデルでは、貨幣供給と財政支出の取り扱いとその経済主体の取り扱いについて非対称性が存在する。その非対称性が影響しているのであるから、その根拠が徹底的に

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          「金融財政政策雑感」no.28

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          「金融財政政策雑感」no.26

           これまで、「金融財政政策雑感」というタイトルをつけなから、ごく一部を除いて、短期マクロ財政政策の問題については、分析してこなかったように思う(「日本の経済成長率」「成長と分配」などの連載論考についてはは、マクロ財政政策の分析を行っている。それらはいずれも中長期的な問題を取り扱っている。参照)。それは、時間軸が同じでも、マクロ財政政策の問題は、実は、多面的であり複雑な問題であり、然るにクリアカットに理論的に分析するには、リアリティのある単純化を仮定し、論点を絞り込む必要性があ

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          「金融財政政策雑感」no.26

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          「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.16

           利子率決定のテイラー・ルールをマクロ経済モデルに接合したマクロ・ニューモデルが出現したのは2000年初頭の頃である。それから四半世紀到達が目前となっている。利子率決定のためのLM曲線のないケインジアン・モデルという触れ込みは、当初、マクロ経済モデルの大きな転換であると意識された。戦後の経済学の数少ないパラダイムの転換の一つであり、その整合性には十分な理論的検証が必要であった。筆者は、利子率決定の分析装置をLM曲線とするかどうかはともかく、ケインズ理論を源流としてヒックスに引

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          「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.16

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          「金融財政政策雑感」no.25

           日本銀行が政策金利(日銀当預の付利)をマイナスに決定した、2016年初頭のころ、ある研究会でその政策的是非が論争になった。その論争の詳細はともかく、こうした論争の時に、その前提となる仮説を、頭から否定して得意になる論者がいることである。その要諦は、こうである。マイナス政策金利を採用することにより、既に十分に低水準にある市中貸出金利の一層の低下を誘導する金融政策の有効性を問題にすること自体に意味がない。その理由は言い古されたものである。投資の利子率弾力性が極めて低いという実証

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          「金融財政政策雑感」no.25

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          「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

          付加価値生産高の総需要決定マクロ・モデルに基づいて、加速的インフレーションを分析した論考は古くから存在する。加速的インフレーションが定常インフレ率に収束するかどうかの安定性が、この分析の中でとりわけ重要な論点である。市場均衡が常に成立していても、長期の安定性は、一般的には保証されない。それを成立させる条件は、マクロ貨幣需要関数の性質(関数形)に依存している。  上記の初等経済学的分析では、現金・預金と証券の経済的関係は考慮されていない。この関係を考慮したモデルと分析が初等

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          「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.29

          実質賃金率と在庫ストックが生産と雇用の決定に影響する「加速的インフレマクロ経済モデル」を整合的に構築し、インフレ過程の短期的、安定性・不安定性を分析する。そのためには、財市場の不均衡調整変数が実質賃金率であるというケインズ的仮定を放棄しなければならない。財市場の不均衡を調整する変数は在庫ストックの変化である。実質賃金率と同様に在庫ストックの保有も、企業の生産にとってはコストであることは明白である。今日、海外生産と国内生産をフレキシブルに代替させているグローバル企業にとっ

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.29

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          「2024年4月桜」no.2 (吉野山)

           2024年4月4日、雨上がりの早朝、筆者は近鉄南大阪線で奈良県の吉野に向かった。近鉄南大阪線の出発点、大阪阿部野橋駅から、急行に揺られ揺られて、やっと吉野駅に到着した。もう、9時20分を過ぎていた。  吉野山に登る最初の山路は、商店街のような出店のオンパレードであった。元気な店員さんの呼び込みの声にうながされ、よもぎ饅頭やくずもちを食べながらの行程であった。  周知のように、吉野は、下千本、中千本、上千本、奥千本、を経て吉野山頂上に向かう。下千本から中千本辺りまで、にぎや

          「2024年4月桜」no.2 (吉野山)

          「2024年4月桜」no1.

           兵庫県西宮市、北山貯水池、北山緑化植物園、辺りに咲き誇るさくらを紹介し、夙川を下る。定点観察を続けているが、年ごとに、変貌をとげているように思う。さくらにも気候変動の影響が明らかに表れている。温暖化が進むと、同じ地点でも一気に開花しないそうだ。それでもやはり、美しいと感じる。         もう、葉桜のようだ。   少し、ピンクがかって、よく手入れが行き届いている。この貯水池の花は桜に限らず、とても綺麗で楽しませてくれる。  貯水池から、山路を通って、北山緑化植物園

          「2024年4月桜」no1.

          「物価と名目賃金の循環構造」no.27

           総需要が生産量を決定するというケインジアン・マクロ経済モデルで、労働分配率が定常値に収束するかどうかを分析してきた。ケインジアン・モデルは、この連載記事no.15で、短期新古典派モデルは、no.16で取り上げて分析してきた。いずれも条件付きであった。それが、安定条件でその経済的意味が重要である。二つのモデルとも、あくまで筆者のオリジナルな構成であり、一般にケインジアン、新古典派と認められたものではない。  総需要決定モデルは、容易に実質賃金率、労働生産性を内生変数として組み

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.27

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.28

           2024年3月19日、日本銀行はマイナス金利付き異次元量的金融緩和の新金融政策を転換した。YCCも廃止した。金融政策の正常化に向けて歩みだした。その理由は、2013年初頭の政府・日銀共同の政策目標である2%のインフレ目標を安定的かつ持続的に達成することへの確信を深めたことである。すなわち、政策転換の条件が整ったと判断したということであろう。特に、物価と名目賃金率の上昇の好循環の実現をその条件としていた(隠れた潜在的条件は、株式市場の安定的上昇であったと思う。その証拠にETF

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.28

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.26

           金融的要因を与えれば、総需要が実質所得(生産量)を決定するというマクロ経済モデルは、ケインズ経済学のテキスト・モデルの中心にある。ケインズの古典的モデルが総需要=総供給・モデルによる実質賃金率と雇用決定のモデルであったことを考えれば、この総需要決定モデルは、ケインズ・モデルの需要サイドだけでマクロ経済を分析しようとしているのか、それとも実質賃金率が硬直的であるモデルのいずれかである。そこで、この後者の実質賃金率の短期的硬直モデルはどのように発展させるべきなのか、という問題

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.26

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