白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。…

白鳥修平

社会科学(広領域の、経済学、社会学、政治学)の独立研究者。書評者、読書家。経済学博士。趣味は「夕日眺めながら山頂読書」「行き先・ルートを決めないウオーキング・旅行」、登山、書道、数学難問解法探求、clubhouse聴き専。座右の銘「人生の本舞台は常に将来に在り」(尾崎行雄)

最近の記事

「経済雑感」no.10

 2024年9月14日、自民党総裁選の公開討論会のTV中継を拝聴した。9名の候補者が所信を表明し、各位他の候補1名と質疑応答し、その後、メディア側と質疑応答に入った。まず最初に、各候補に対する代表質問を、メディア側を代表して、読売新聞東京本社特別編集委員橋本五郎氏が行った。その後、メディア側出席者と各候補の整然とした質疑応答がなされた。気品が漂っていた。  差しさわりのない範囲内で、筆者の感想を述べたい。とりわけ、経済問題に的を絞って。各候補、この間、推薦者とも調整を行う中、

    • 「為替相場の不安定性理論」no3-2

       マクロ財政支出政策に関して、名目政府支出を政策変数とするモデルも考えられる。つまり、政府は支出政策を実施する過程で貨幣錯覚に陥る。これは、過去から、インフレ率の高低が実質財政支出乗数に影響を及ぼす問題としてよく知られている。この問題が、マクロ経済的枠組みの中で、為替相場の不安定性問題にどのような影響をもたらすのかを検討する。その際、金融政策変数は実質貨幣供給とし、通常と異なる逆アシンメトリーを仮定する。このようなモデルは詳しく検討されてはいない。  筆者は閉鎖経済モデルでこ

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      • 「為替相場の不安定性理論」no.3-1

        古典的な加速的インフレ―ションモデルを幾つか取り上げて、開放マクロ経済モデルに拡張して、為替相場の不安定性を分析することにしょう。周知のようにこのモデルの最終均衡は、閉鎖経済モデルであっても、一般的には安定とはならない。閉鎖経済モデルの安定条件の経済的意味はよく知られている。この安定条件が導出されることは、決定的に次の仮定に依存している。政府の財政支出政策は、実質政府支出を政策変数としているが、中央銀行は名目貨幣供給を政策変数としている。政府は政策を実質する過程で貨幣錯覚

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        • 「為替相場の不安定性理論」no.2

          為替相場には、名目為替相場と実質為替相場がある。 名目為替相場が部分モデルであれば、それを決定する実質所得や利子率は外生変数である場合が大方である。それらを決定して一般均衡モデルで為替相場の不安定性を分析するためには、上記2つのカテゴリーで分析する必要がある。  まず、最初に実質表示の古典的なIS/LMモデルに接合する。その実質表示のモデルで決定されるのは、実質所得と実質利子率である。それらにトータルな影響を及ぼすのは、実質為替相場である。名目為替相場は実質為替相場

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        「経済雑感」no.10

          「為替相場の不安定性理論」no.1

           筆者の新しいテーマによる論考の連載である。  (直物)名目為替相場は、第二次安倍政権が誕生した2013年以降、ラフに言えば、趨勢的な円安トレンドの軌道の近傍で不安定な変動を繰り返して現在に至る。現在は、巣性的な円高トレンドが新たな為替相場の軌道として現れているのか定かではない。趨勢的な円安トレンドを決定している要因は何であって、短期的な変動を決定している要因は何であるのかが、為替相場決定の核心的な問題である。前者が重要であって後者が重要でないということは決してありえない

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          「為替相場の不安定性理論」no.1

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          「経済雑感」no.9

           2024年7月末の金融政策決定会合後とその後の日本銀行の政策金利の引き上げのフォワードガイダンスについては、筆者は基本的に正しい路線を歩んでいると考えている。国債購入の減額と政策金利引き上げのセットは政策的整合性からして当然である。しかしながら、金融市場の受け止め方は、サプライズであったと言われる。市場との対話が欠けていたとの指摘があるが、そうではない。投機筋は売りのタイミングを見計らっていた。日経平均株価はこの間市場最高値を更新して、株価は、全体として未踏の高値水準にあっ

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          「経済雑感」no.9

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          「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.15

          複雑なマクロ経済の多様な現象のモデル分析を展開するためには、分析目的に応じて単純化せざるをえないことは自明である。今日の経済情勢をみるにつけ、複雑なモデルにも、部分的であるが共通要素となる整合的な最小モデルが存在するはずであり、新しい現象の推移の予測ではなく、クリアカットな分析の理論的要諦を提示するためには、その必要性が増大しているように見える。この論考では、その最小モデルが現状のテキストブックIS/LM・モデルではなく、本質的な要素で修正が必要であることを明確にして、

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          「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.15

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          「日本の経済成長率」no.18

          2022第1四半期以降、円ドル名目為替相場は上昇を開始した。その後、2024年に入っても、円安モメンタムは強く円ドル為替相場はさらなる円安の方向にアンダーシューティングし次第に水準を切り上げていく動きが、今日まで続いた。実質為替相場も内外インフレ率格差が拡大、金融政策スタンスの相違を生み出し、内外金利格差が拡大し、自国通貨安の方向に進んできて、歴史的な自国通貨安の水準を塗り替えたりした。  今次円安トレンドは、名目為替相場の円安がリードしているので、欧米のインフレ率が沈静

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          「日本の経済成長率」no.18

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          「経済雑感」no.8

          政策経費をどれだけ税収でファイナンスしているかを示す指標が基礎的財政収支(P.B.)である。この均衡化が、財政の健全さを示す。安倍政権以前から、政府は常に基礎的財政収支の黒字化目標を明らかにしてきたが、2020年以降、財政再建が棚上げする中で、この問題も当然のことながら曖昧模糊としてきた。最近でも、金融緩和政策の転換が相次いで打ち出されている中、基礎的財政収支の黒字化目標はどうなったのかと危惧を表明される方々も多かったと思う。ところが、突然、政府は基礎的財政収支が2025

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          「経済雑感」no.8

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          「時空を旅する」no.12

            白鳥が川面に迎え 川流し小舟が留まる白壁の街             詠み人 白鳥修平   鎮魂の街は悲しき ぬけがらが彷徨い歩く白壁の道              詠み人 白鳥修平  つながりがひとつひとつと消えてゆく 白壁道は 鎮魂通り              詠み人 白鳥修平                  2024年4月下旬、随分遅くまで残った桜も散りすっかり春らしくなった。つかの間の春が過ぎ去ろうとしていた。ひさかたぶりに岡山県倉敷を訪ねた。筆者にとっ

          「時空を旅する」no.12

          「経済雑感」no.6.

            Pass the torch ! バイデン大統領が次期大統領選挙の民主党候補を辞退された。客観的な情勢がもたらす帰結であり、枝葉末節な政治的談義や交渉の結果ではない。それらは、この際、どうでもよいではないか。バイデン大統領に拍手を送りたい。世界は、リーディングカントリーの新しい指導者を求めていると思う。「もしトラ」から「確トラ」と言われてきた米国の政治情勢であったが、劇的なターニングポイントを迎えたようだ。いずれにしても、米国民主主義にふさわしい激戦になることは、

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          「経済雑感」no.6.

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          「経済雑感」no.5

          ・ 2023年4~6月期の決算で、米IT5社が増益・黒字であった。その主因は、  ポストコロナ禍で巣籠需要は減少したが、人員削減が増益につながったようである。今後の成長への鍵は生成AIで、AIへの投資額 25年までに2000億ドルの予想。IT企業の成長は、AI投資の成否が決定的である。  ところで、米IT5社、Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoft、が二桁の成長を遂げるのは至難の業である。これらの巨大企業も、そのことを理解しているので、MSに見ら

          「経済雑感」no.5

          「物価と名目賃金の循環構造」no.32

           2013年に政府・日銀で共同して設定した2%の目標インフレ率が安定的に持続することが緩和的金融政策の転換には必須であることが、2023年に入り、中央銀行から度々、主張されている。そのためには、物価と名目賃金率の上昇好循環が生じなければならないとされる。緩和的金融政策の転換に、この慎重姿勢は、筆者には、持続的インフレが生じている経済情勢の中で、安易な金融引き締めへの政策転換は、物価上昇は続くが、景気後退が生じ不況に突入することを恐れているように見える。つまり、スタグフレーショ

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.32

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          「金融財政政策雑感」no.27

           利子率決定の分析装置として、古典的なLM曲線の代替ツールとして、「テイラー・ルール型金融政策」をマクロ経済モデルに接合して、政策利子率と貨幣供給の相互関係を明示的に定式化したトータルの金融政策の有効性を分析することが、近年、リアリティのある分析として評価されている。これは、いわゆる「政策テイラー・ルール」であるが、利子率政策によって誘導されるのは、市場利子率である。この操作がほぼ市場利子率をコントロールできるとすれば、テイラー・ルールによって市場利子率が決定されるとして、

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          「金融財政政策雑感」no.27

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          「金融財政政策雑感」no.32

           デフレの時代は過ぎ去り、インフレの時代が到来したとの主張が確信をもって語られるようになった。平成時代の難渋を極めたデフレと円高の悪循環に思いを馳せると、今日、隔世の感がある。当時、円高がデフレの真因であると円高是正のための為替介入の必要性が声高に訴えられた。詰まりに詰まって2013年初頭、リフレ派の主張する2%のインフレ目標を掲げたアベノミクスの政策が打ち出された。今はその白熱した当時の議論も、新たな装いの下に語られるようになった。だが、2%のインフレ目標が政府・中央銀行の

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          「金融財政政策雑感」no.32

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          「物価と名目賃金の循環構造」no.31

           中央銀行は、巷では物価の番人と言われているようである。マネタリストを信奉しようがしまいが、中央銀行の金融政策が物価に大きな影響を与えると信じており、中央銀行は物価目標(インフレ目標)を最重要政策目標として掲げていることは誰しも認める事実である。そして、その達成状況を国民に説明しなければならない義務を負い、それが今日実行されていることもまた、我々が今日見ている世界である。この圧倒的なリアリティを反映するような物価決定理論が求められてから随分と年月が経過しているように思えてなら

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