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「物価と名目賃金の循環構造」no.31
中央銀行は、巷では物価の番人と言われているようである。マネタリストを信奉しようがしまいが、中央銀行の金融政策が物価に大きな影響を与えると信じており、中央銀行は物価目標(インフレ目標)を最重要政策目標として掲げていることは誰しも認める事実である。そして、その達成状況を国民に説明しなければならない義務を負い、それが今日実行されていることもまた、我々が今日見ている世界である。この圧倒的なリアリティを反映するような物価決定理論が求められてから随分と年月が経過しているように思えてならない。然るにそれが果たせていないとすれば、我々の思惟も皮相でしかないと言わざるをえない。
物価が個別財価格の集計であることもまた真理である。多くの個別価格が、生産コストに一定のマージン率をかけて決定されるとする事実をマクロの物価決定理論に反映させようとする考え方も、延々と持続している。自称ケインズ主義者を標榜している方々は、このフルコスト原理を念頭に物価論を語る。この原理以外にも、A.フィリップスによってはじめられたフィリップス曲線の修正版によるインフレ率の決定理論も幾多のリアリティか反映されて再修正され今日に至る。全く異なる立場から、財政政策や国債残高が物価に大きな影響を与えるという物価決定理論のアンチ・ヒーローが登場してからも久しい。
圧倒的データとその分析の報告に囲まれている中央銀行の物価動向や目標達成状況の説明も、大方、実証的にならざるを得ない。中央銀行が語る物価決定理論は様々な物価決定理論の複合理論であると思えるほどである。
物価はマクロ的な現象である。大方のマクロ経済モデルがマクロ内生変数の同時決定理論となっている。マクロ経済的枠組みの中で他のマクロ経済変数とともに物価も内生的に同時に決定されるという理論の構築を試みるべきではないだろうか。これはくしくも一般均衡モデル物価決定理論を指すのではないか。だが、ここで取り扱うモデルはたかだか2-3の内生変数による単純なモデルでしかない。しかし、本質はこれで指摘できる。
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