見出し画像

「日本の経済成長率」no.18

  2022第1四半期以降、円ドル名目為替相場は上昇を開始した。その後、2024年に入っても、円安モメンタムは強く円ドル為替相場はさらなる円安の方向にアンダーシューティングし次第に水準を切り上げていく動きが、今日まで続いた。実質為替相場も内外インフレ率格差が拡大、金融政策スタンスの相違を生み出し、内外金利格差が拡大し、自国通貨安の方向に進んできて、歴史的な自国通貨安の水準を塗り替えたりした。
 今次円安トレンドは、名目為替相場の円安がリードしているので、欧米のインフレ率が沈静化し内外インフレ率格差が縮小し内外利子率格差が縮小するまで収まらないという終着点がかなり明確なので、オーバーシューティング・モデルよりアンダーシューティング・モデルの方がより妥当していた。
ところが、24年も後半に入り、アメリカのインフレの鎮静化と景気後退が次第に顕在化し、終着点に到達した感がある。
 今次円安は24年ぶりということであるが、つまり、1988年以来ということであるが、その比較をするなら、98年が日本経済にとってどういう年であるかを明確にすべきである。東アジア経済の通貨銀行危機からリセッションへそして大不況へと展開していったその出発点であり、日本の金融システム破綻と銀行システムを維持するための公的資金投入が始まった時期である。この時の円安と今次円安をどのように比較するのが妥当かは明白であるだろう。
 そこで今次円安の進行の真の問題は何かを問いたい。日本経済の目標は長期停滞とデフレの罠から抜け出し、経済成長率を引き上げ、日本経済を安定成長軌道に乗せることである。そのためには、実質為替相場の自国通貨高がよいのか自国通貨安が良いのかという基本的な問題に一応の解答を出さなければならない。
 

ここから先は

9,402字

¥ 1,000

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?