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「現金・預金と証券の経済的関係を考える」no.13

  付加価値生産高の総需要決定マクロ・モデルに基づいて、加速的インフレーションを分析した論考は古くから存在する。加速的インフレーションが定常インフレ率に収束するかどうかの安定性が、この分析の中でとりわけ重要な論点である。市場均衡が常に成立していても、長期の安定性は、一般的には保証されない。それを成立させる条件は、マクロ貨幣需要関数の性質(関数形)に依存している。
 上記の初等経済学的分析では、現金・預金と証券の経済的関係は考慮されていない。この関係を考慮したモデルと分析が初等経済学の範疇ではないとは思わないが、一般的には、何故か少ないように思う。単純なマクロ経済モデルに、この関係を考慮し、マクロ経済モデルのパラダイムの転換を図ったのは、彼の有名な、ベン・バーナンキ=A.S.ブラインダー、であり、それは、1988年のことであった。随分、以前の事のようであるが、その重要性はいささかも減じてはいない。この際、多少、複雑性は増すが、上記の基本的問題を、この関係を考慮した枠組みで解決しておきたい。

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