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「物価と名目賃金の循環構造」no.26

  金融的要因を与えれば、総需要が実質所得(生産量)を決定するというマクロ経済モデルは、ケインズ経済学のテキスト・モデルの中心にある。ケインズの古典的モデルが総需要=総供給・モデルによる実質賃金率と雇用決定のモデルであったことを考えれば、この総需要決定モデルは、ケインズ・モデルの需要サイドだけでマクロ経済を分析しようとしているのか、それとも実質賃金率が硬直的であるモデルのいずれかである。そこで、この後者の実質賃金率の短期的硬直モデルはどのように発展させるべきなのか、という問題を取り上げてきた。この単純なモデルを動学的実質賃金率モデルに発展させ、シンプルな結論を導いておくことは、今後の複雑な議論にとって有益である。表題のタイトルそのものが今日問われているのは、究極的には実質賃金率の動向であることが、それを物語っている。日本経済は、30数年にわたる長いデフレと低成長を経験し、物価も名目賃金もその水準はデフレの中に沈んだ。今、その流れが根本的に変わろうとしている。

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